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脳磁計による脳磁場計測
脳の神経細胞の活動そのものを非侵襲的に記録するには、神経細胞が生じる電気的活動を脳波計(Electroencephalography, EEG)によって記録する方法と、 その電気的活動によって生じた磁場(脳磁場)を脳磁計(Magnetoencephalography, MEG)によって測定する方法とがあります。いずれも増幅器を介してミリ秒単位で活動の時間経過を観察することができるものですが、 EEGによる記録は、神経細胞によって生じる電気的活動が電導率の異なる髄液や骨、皮膚を通して伝播する必要があるため、その過程で脳波信号は複雑に変化してしまいます。 また、記録電極を電極糊で頭皮に接着する必要があります。
一方、神経活動によって生じた磁場は神経細胞から磁場記録コイルまでの距離に依存して強度は減衰するものの、磁場の通りやすさ(透磁率)は脳、髄液、骨、皮膚および空気でほぼ一定のため、 測定コイルを皮膚組織に非接触のまま、神経細胞が生じた磁場を直接記録することができます。MEGは、頭皮上に配置した多数の測定コイルで記録された脳の磁場分布(脳磁場)から、脳の神経細胞が いつ・どこで活動したか、を高い精度で計算すること(電流源推定)を可能とする脳機能測定機器です。
設置機器の概要
【MEG】
本センターの有するMEGは頭皮上の160箇所に測定コイル(軸型gradiometer)を配置する全頭型MEGです。被験者に負担の少ない仰臥位姿勢で脳磁場の記録を行うことができます。 連続記録のほか、視覚、聴覚および体性感覚など各種の誘発脳磁場記録が可能です。脳磁場解析により、単一および複数の神経活動源推定を行うことができ、結果を脳MR画像上に投影することができます。 また、脳磁場は直接記録された生体信号として各研究領域における信号解析に用いることができます。
- 全頭型160チャンネル、軸型グラディオメーター
- 最大サンプリング周波数:4 KHz・160チャンネル(20分間の連続記録まで1ファイルとして可能)
- トリガーなどの外部入力:32チャンネル
- 視覚、聴覚および体性感覚刺激装置
- 付属解析ソフトウェア
- 連続記録、トリガー加算記録
- 連続記録中の発作波の検出と電流源推定(単一・複数)
- 磁場マッピング(2次元・3次元、MRI上への投影)
- 各種周波数分析
- 各種波形処理(記録信号、センサー情報はテキストファイルにて書き出しが可能) など
MRI画像上での電流源推定 (左半球の手の感覚野・左3つ) |
磁場マッピング |
【測定例】
- 連続記録
- てんかん症例の焦点同定、臨床発作型-脳波-焦点部位との対応
- 脳活動分布の解析
- 脳各領域との同期・非同期の解析 など
- 脳活動の信号としての抽出(Brain-machine interface, Brain-computer interfaceへの使用)
- 誘発記録(エポック記録)
- 各種誘発脳磁場記録と電流源推定による大脳情報処理過程の解析
- 各種刺激による弁別、認知、記憶、学習プロセスの生理的および病態での解析
など
右正中神経刺激による 体性感覚誘発脳磁場の記録 |
SEFの高周波振動 (HFOs、記録周波数帯域:400~600Hz) |
【使用上の注意】
- MEGは磁気シールドルーム内に設置され、金属製の機器や電気機器を持ち込むことはできません。
- 測定対象の被験者は金属(磁性体)を装着することができません(金属、金属繊維を含む衣服のほか、入れ歯、ペースメーカー、インプラント、体内固定釘、金属粒子を含む化粧など)。
- 測定中には頭部を固定するため、頭部や体幹の運動はできません。