脳とこころの研究センター概要

脳とこころの研究センター概要

 脳(認知症、パーキンソン病、脳卒中、てんかん、脳腫瘍など)とこころ(うつ病、統合失調症、発達障害など)の疾患克服や、健常者における脳とこころの発達や老化の機序を明らかにしていくことは21世紀の最重要かつ最も難しい課題であります。しかし、近年の画像診断法、ゲノム、iPS細胞などの発達は、脳とこころの働きや病態の可視化や病態の解明をもたらし、本領域における大きな進歩をもたらすことが期待されています。
 また、脳とこころを対象とする学問分野と最先端の画像研究を活かした研究は医学に止まらず、教育、環境、創薬、工学分野など広範に及んでいますが、これらの領域の方々が参画可能で、多分野が協力して大規模コホートを形成し、多領域の研究者がコンソーシアムを組みながら、学際的、融合的に研究展開していく中核的な研究センターは国内に存在しませんでした。
 一方、大脳皮質の神経細胞のみをとっても140億を数えるビックデータを多元的に扱い、意義のあるものとするには、医学、工学、統計学、情報学をはじめとした異分野が融合して革新的研究を推進することが脳とこころの研究分野においては必須となっています。
 このような背景をもとに、脳とこころの研究センターは、疾患と健常者を対象として、3.0 T MRIやMEGなどを用いた形態・機能イメージングを軸に、ゲノム、血液、髄液、iPS細胞、死後脳などのデータを包含する小児期から老年期にわたる疾患・発達・加齢コホートと、地域連携学際的(得意領域融合型)コンソーシアム型研究体制を構築し、脳科学研究を全学的に推進する目的で、平成23年10月1日付けで医学系研究科に設置され、平成25年12月1日付けで全学施設へ移行しました。

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脳とこころの研究センターのミッション

 本センターは、前述のコンソーシアムと2000例規模の脳とこころの疾患・発達・加齢コホートを構築しつつ、1) 脳とこころの疾患の病態解明と次世代創薬開発研究、2) 脳とこころの発達・加齢の機序解明と、それに基づく次世代創薬開発研究、3) 最先端脳医療・脳科学に基づくQOL向上方策の開発研究という3つの研究の柱が立てられています。これら3つの柱を有機的に機能させ、異分野融合型研究を推進するために、脳とこころに係わる部署が、倫理的配慮を重んじつつも利便性の高い学内共同教育研究施設へと発展していくことが目標となっています。

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 また、一部では既に運用されていますが、国立長寿医療研究センター、自然科学研究機構生理学研究所、愛知県医療療育総合センター中央病院、愛知医科大学学際的痛みセンター、名城大学、中部大学、豊田中央研究所、愛知県医療療育総合センター、名古屋市立大学、藤田医科大学、静岡てんかん・神経医療センターをはじめとした当地区の各種研究所、関連大学、関連企業などと地域連携型研究コンソーシアム形成を推進していきます。これらにより脳とこころに関する基礎及び橋渡し研究を活性化し、脳とこころの世界的な研究教育センター構築も目指しています。
 以上の事業は、これまで実現しなかったコンソーシアム型の融合領域研究の推進や、文理横断型プログラムの開発を生み出す可能性を秘めています。また、それぞれの強みや特性を活かして、専門分野の枠を超えた新しい発想による体系的な博士課程を構築することで、新規人材の育成と新規分野の開拓も期待されます。さらに、コホートとコンソーシアムの相乗効果により、脳とこころの働きが明らかとなり、これまで前臨床段階に留まっていた治療シーズを一気に次世代創薬開発へと展開出来れば、大きな社会貢献となり得ます。そして、研究コンソーシアムの活性化、全学的な共同研究体制や産官学の連携の推進、海外からの人材登用や国際交流の推進は、イノベーションの創出、国際的に活躍出来る若手人材育成、融合的学術分野の創出へとつながり、国際的イニシアチブを発揮、加速できる可能性も有しています。

脳とこころの研究センターの構成

 当センターの学内関連部局は、医学系研究科、医学部附属病院(先進医療・臨床研究支援センター)、教育発達科学研究科、情報学研究科、創薬科学研究科、環境医学研究所と多岐に渡ります。
 センター長は、医学系研究科 総合医学専攻(精神医学・親と子どもの心療学)尾崎紀夫教授が務めています。
 また統合研究推進室ディレクターは、祖父江元特任教授が務めています。
 戦略会議のメンバーは、センター長とディレクターをはじめ、専任教員として礒田治夫教授、寳珠山稔教授、小山修司准教授、 特任教員として前澤聡特任教授・バガリナオ・エピファニオ・ジュニア・チラ特任准教授、森大輔特任准教授を擁し、また兼任教員として医学系研究科から、若林俊彦教授、夏目淳特任教授、情報学研究科から大平英樹教授、環境医学研究所から山中章弘教授、山中宏二教授、心の発達支援研究実践センターから金子一史教授、倫理面のオブザーバーとして飯島祥彦特任准教授で構成されています。
 部門は、基盤整備部門と研究開発部門にわかれ、基盤整備部門は共通基盤コホートデータ管理、機器の保守・管理、アップデート、新しい撮像法の開発、研究開発部門は創薬、脳機能解明・改善、コホート作成推進、コンソーシアム作成推進、知財戦略などが主なミッションとなっています。

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