▽研究室の概要


日本では毎年30万人を超える方々が癌によって生命を失っています。そして、私たちの2人に1人が癌に罹患し、3人に1人が癌で亡くなる時代になろうとしています。一方、これまでに癌研究は着実に進歩を遂げ、実に様々なことが明らかとされてきました。さらに、ヒトゲノムの解読完了はマイクロアレイ、マススペクトロメトリー、次世代シーケンサーなどの網羅的解析技術の進歩と相まって、癌研究を大きく変容させつつあります。
 このような癌研究を取り巻く状況の中で、私達の分子腫瘍学分野は、日本を始めとする先進諸国で最も多くの生命を奪っている肺癌を中心とする、いわゆる難治癌の分子病態について多角的に研究を進めています。その研究プロジェクトの内容は、癌化メカニズムに関わる基礎的な研究から、革新的な診断・治療へのトランスレーションを目指した応用研究まで多岐に渡ります。しかし、いずれの研究プロジェクトにおいても常に私たちが意識していることは、難治癌の分子病態を一つの疾患として統合的に理解し、それによって得られた成果を多くの人の生命を奪い続けている難治癌の克服につなげていくことです。もう一つ私たちの研究室を特徴づけているのは、これまで自分達に全く馴染みの無い新しい研究分野やアプローチにも、難治癌を本当に理解する上で大事だと思えば、臆せず積極果敢に取り組む攻めの姿勢です。現在、平成22年度から採択された新学術領域の計画研究では、ヒトゲノムの解読完了と“ウェット” “ドライ”双方の解析手段・手法の革新を追い風に、癌の分子病態を“システム”の異常として捉えることを目指しています。一方、平成23年度に立ち上げられた次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムの指定研究では、臨床へのトランスレーションを直接狙い最先端の網羅的解析技術を駆使して、がんの早期診断や予後・治療効果の予測を可能とするバイオマーカーの探索・同定を進めています。