名古屋大学医学部医学科推薦入試

MESSAGE 研究を目指す全ての学生へ

「名大はなぜ研究者の育成に力を入れるのか」

社会背景と名大医学部の想い

(監修:名古屋大学医学部 医学部長 門松 健治)

今の医学・医療の課題

たとえばこれまでの医学・医療は、ガンを治療することを目的としていました。依然としてガンの中でも治らない患者さんはたくさんいますが、半分以上の患者さんはガンと共存していける時代でもあります。私たちはさらにガン研究を進めるとともに、ガン患者のQOLを考えていく必要があるのです。そして希少疾患という製薬会社が対応できない領域も広く残っています。その領域に踏み込む新薬を見つけるためにも、アカデミアでの研究が重要になると考えています。
また、日本は超高齢化社会となり100歳まで生きる人生100年時代へ突入しました。テロメアの細胞レベルで死を迎えるのが120歳になるとも言われるように、今後も高齢者率は高くなると予測されています。一般的に老化の症状として認知症やフレイルなど挙げられますが、その原因や成り立ちを考えたとき、そもそも健康な老化(健康老化と呼ばれている)とは何か、病的な老化とは何かを知っていなければ、治療などの介入はできません。研究とは解明されていない領域を開拓していくことです。時代の動きとともに変化する社会ニーズを捉え、人々に還元する重要な使命を担っていると言えるのです。

課題解決に必要な研究とは

まず、医学・医療の進展にとって「基礎医学研究」は非常に重要です。現在の医学知識および医療技術は過去の基礎医学研究の成果の上に成立しており、近年ノーベル賞を受賞したiPSも、オートファジーも、免疫療法も、研究の面白さや美しさに魅せられた基礎研究者の発見です。この惚れ惚れするような基礎医学研究こそが科学を変え、社会を変えていくのです。名大が基礎の立場から目指しているのは、まさにここです。名大の環境下なら研究の面白さや美しさに気づいてもらえると思います。
次に、社会へメッセージを発信する「社会医学研究」です。社会医学研究があったからこそ社会全体で禁煙への意識が高まり肺がん患者が少なくなり、あるいは、食塩の食べすぎはよくないと社会へメッセージを発信することで胃がんの早期発見が多くなりました。特にこれからは、“個別化医療”から“個別化予防”にシフトしてくとされています。たとえば遺伝子の配列にどんな特徴があるとこういう病気になりやすいか、またどんなことに気をつけるべきか、ということが分かるようになり、同じ予防でも食べ物に気を付けるのか、トレーニングに気をつけるのかなど、遺伝子の情報から判断できる時代がもうすぐ訪れます。そのため、社会へ正確なメッセージを発信できる研究者を教育する必要があります。
そして、世界レベルの大規模な「臨床医学研究」も今以上に重要になっていきます。いまや世界レベルで挑戦しなければ、エポックメイキングなことはできません。治療法であっても、生活習慣でも、大規模スタディで、いろんな国の、いろんな医療機関と組んでやって初めてわかることがたくさんあります。世界レベルの経験を積むことで、初めてきちんとした論文ができ、その影響力はすごくあると思います。

研究者に求められる素質と素養

影響力のある論文がグローバルスタンダードになり、名大を含め、すべての病院がそのスタンダードをフォローしていく。これはある意味で、当たり前のことです。名大はプレスティージャスなレベルにあり、日本の医学をリードする存在です。グローバルスタンダードをつくるという強い意識を持ち、未開の医学・医療領域を開拓していく、そんな学生を私たちは求めています。
研究する学生は、ここまで話したどこに興味を持ってもらってもかまいません。私たちは基礎研究医だけを育てたいわけではなく、研究医と臨床医というように二つに分ける必要もないと考えています。でも根底には、研究大好きとか、情報発信とか、エンタープライジングというか、フロンティア精神というものを持って欲しいですし、こういう気持ちがないと、研究者として生き残れないと思います。
そして世界中のあらゆる医療機関と組んで研究を行うための英語力と、情報学のリテラシーを高めてもらいたい。今後、さらにAI医療が中心になってくるのは間違いありません。病理診断や画像診断などAIが医療の手伝いをする時代に、AIを含む様々な情報システムを上手く活用し、また開発できる医療者が重視されます。また、研究はチームなので、国際連携に限らず工学や情報学の人と連携を組むチームワークも求められます。

名大医学部の魅力・強み

名大医学部は神経精神疾患や腫瘍の分野で世界をリードする研究を推進しています。
良い研究者になるには、良い研究成果を出すには、何が必要でしょうか。実に様々な要素はありますが、絶対に欠かせないと感じるのは、魅力的な指導者の存在です。目の前の事実について、どこに着目するか、どう捉えるか、そこからどう進んでいくか。その着眼点と発想力は、すべての研究者にとって養うべきことであり、それを養えるのが名大だと思います。
名大の研究室には、100名以上の学生が出入りしています。これだけ研究熱心な学生が揃っているのも名大の特徴の一つ。同世代からの圧倒的な刺激、名大の医学や理学、工学の領域にいる数多くの有能な研究者からの刺激は、自身の意欲を高める役割を果たします。一人ではなしえない研究成果を得られる、研究者にとって幸せな場所だと言えます。自身の研究が進むことも幸せですが、名大全体としての研究成果を高めることも、また研究者にとって幸せなことなのです。学生は研究スタッフではなく研究者仲間です。夢と野望を持って飛び込んできてください。ともに研究を推進し世界の人々に貢献しましょう。