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尿排出障害 | ||
高齢者における尿排出障害の原因は大きく2つに分けられ、一つは前立腺肥大症に代表される尿道の通過障害であり、女性においても膀胱頸部狭窄による尿排出障害がみられる。 | ||
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自覚症状の評価 | ||
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自覚症状としては、排尿困難に関する症状のみならず、膀胱刺激症状がみられることがある。 |
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国際前立腺症状スコア(13)は、本来は前立腺肥大症の男性での自覚症状重症度を評価するものであるが、おおまかな目安としては前立腺肥大症以外の排尿困難や女性の排尿困難の評価に用いてもよい。理解力がある例については、このスコアを参考にして重症度を判定する。 |
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ただし、自覚症状と実際の尿排出障害の程度とは必ずしも比例しないので、自覚症状が軽度でも高度の尿排出障害があり、尿路感染、膀胱結石、水腎症、腎機能障害などの合併症を起こすことがある。 |
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痴呆の高度な例では、自覚症状による重症度の評価は困難であるので、排尿記録にもとづく排尿回数、尿失禁の合併の有無、残尿量から重症度を判断する。 |
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残尿測定 | ||
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残尿測定は、導尿(10〜12Fのカテーテル)あるいは経腹的超音波検査により行う。 |
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残尿量が50ml以下であれば溢流性尿失禁ではない。 |
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経腹的超音波検査による残尿測定方法 環状断での縦径(a)と横径(b)、および矢状断での前後径(c)を計測 | |
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尿検査(尿路感染のチェック) | ||
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溢流性尿失禁では残尿や膀胱過拡張状態のため、尿路感染が起こりやすいので、尿沈渣や尿培養などの尿検査を施行する。 |
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尿路感染が認められれば、適切な抗菌剤により尿路感染の治療を行う。 |
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腎機能のチェック | ||
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合併症としての腎機能障害のチェックのため、血液検査により血清クレアチニンのチェックを行う。 |
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薬物治療(8) 参照 | ||
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自覚症状が軽度(国際前立腺症状スコア≦7点)、残尿量<50ml、夜間排尿回数<3回といった軽症例では、無治療経過観察あるいは薬物治療による経過観察でよい。 |
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下部尿路閉塞、膀胱収縮不全にかかわらず交感神経α1ブロッカーが適応となり、男性での前立腺肥大症ではハルナール、フリバス、アビショット、ミニプレス、エブランチル、デタントール、ハイトラシンなどのα1遮断薬が適用となるが、女性における尿排出障害や神経因性膀胱における膀胱収縮不全に対してはエブランチルのみが保険適用となっている。 |
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膀胱収縮障害に対するコリン作動性薬(ベサコリン、ウブレチド)は明らかな効果は示されておらず、また膀胱平滑筋の緊張を増大するのみならず、尿道抵抗を同時に増大させ、排尿障害を悪化させることもあり、その有用性は明らかではない。 |
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清潔間欠導尿 詳細は(5)参照 | ||
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尿閉例や残尿が100ml以上みられる例では清潔間欠導尿を指導した上で、泌尿器科専門医へ紹介する。 |
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尿道カテーテル留置 詳細は(3)参照 | ||
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尿閉例でも、泌尿器科専門医紹介までの一時的なカテーテル留置はともかく、長期カテーテル留置は指示すべきではない。 |
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泌尿器科医への紹介 | ||
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尿道通過障害による排出障害と、膀胱収縮障害による排出障害では、治療法が大きく異なるが、自覚症状のみでは区別は困難であること、また下部尿路閉塞による尿排出障害は専門治療により治療できることから、残尿の多い場合(>50ml)や中等度以上の症状がある場合は、泌尿器科専門医へ紹介する。 |