市中の教育病院勤務 ~ 社会人大学院に所属(山田徹先生)

千葉県の病院で働きながら名大総診へ。社会人大学院生の目線から

山田 徹 先生

みなさん、初めまして。総合診療医学講座大学院博士課程後期の山田徹と申します。私は現在千葉県の東京ベイ・浦安市川医療センターという市中の教育病院に勤務しながら、社会人大学院生として名古屋大学の総合診療医学講座大学院に所属しています。ここでは当講座の大学院について、入学動機や入学後の実際など、働きながら通学する社会人大学院生の目線からご紹介させていただきます。

筆者略歴

  • 2003年 富山医科薬科大学(現:富山大学)医学部医学科卒
  • 大学院入学時期:2015年4月~(2018年4月次、博士課程後期4年)
  • 主な研修施設:富山医科薬科大学付属病院(現:富山大学付属病院)、沼津市立病院、(株)麻生飯塚病院総合診療科・消化器内視鏡コース、東京ベイ・浦安市川医療センター総合内科・消化器内科、University of Hawaii John A. Burns school of medicine SimTiki simulation center

取得資格・その他

  • 日本内科学会総合内科専門医・指導医
  • 日本消化器病学会消化器内科専門医
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医
  • プライマリケア連合学会認定医・指導医
  • 病院総合診療医学会認定医
  • JHN Point-of-Care Ultrasound Director
  • 当講座大学院で臨床教育に関わる研究を行いながら、東京ベイ・浦安市川医療センター総合内科のプログラムディレクターとして研修医教育・研修プログラム運営に従事し、また消化器内科医長として臨床・教育・臨床研究に携わる。

入学を決めた動機

医師10年目までは大学院を考えたことは無かった

私が大学院に入学したのは2015年4月、医師13年目の時です。他の大学院生の方と比べると結構遅い方だと思います。大学院への進学を考え始めたのは確か2013年の秋ごろ、医師11年目の時でした。

10年目まで福岡県の麻生飯塚病院という病院に勤務していたのですが、当時は臨床が楽しくて仕方なく、研修医の先生方と一緒にベッドサイドに張り付く生活を送っていました。一般的に医師には、臨床・教育・研究・マネジメントの4つのスキルが必要と言われますが、7~8年目くらいまではほぼ臨床と教育のトレーニングだけをしてきました。

ちょうどその頃から飯塚病院がUniversity of Pittsburgh medical center(UPMC)と提携を始め、米国の指導医陣から直接faculty development(FD)や教育手法についての指導を受けるようになったことをきっかけに、マネジメントのトレーニングを始めました。8-10年目の頃はUPMCのFDプログラムへの参加、全国の研修病院見学や、米国の大学病院・VA hospital等に教育・評価方法やプログラム運営の勉強に行くなど様々な経験をしました。

臨床の合間を縫っての勉強だったため結構大変でしたが、理解ある素晴らしい上司・同僚の先生方に恵まれたおかげで、何とか並行してやってこられたと思います。当時は、よりよい臨床教育を提供できる研修プログラムを構築するために臨床・教育・マネジメントのスキルを磨きたいと考えており、研究や大学院進学を考えたことはほとんどありませんでした。

研修医を指導する若手指導医から、若手指導医を指導する指導医へ

2013年4月から現在の東京ベイ・浦安市川医療センターに総合内科と消化器内科兼任として赴任しました。私が大学院入学を考え始めたのはこの年からですが、その理由は2つあります。1つは研究が楽しそうだと思ったこと、もう1つは後期研修を修了した若手指導医を指導するためには、研究・論文執筆についての指導スキルが必須だと感じたためです。

東京ベイ・浦安市川医療センターはもともと臨床研究に積極的な病院であったこともあり、部長の平岡栄治先生のご指導の下、総合内科でも様々な臨床研究が行われています。私も当時から臨床研究や論文執筆についてご指導いただきましたが、平岡先生のご指導は非常に明解で面白く、また平岡先生ご自身も大変楽しそうに研究のことを話されるのが印象的でした。その時まで見向きもしてこなかった研究分野ですが、結構面白いかも…と思ったのが大学院を考えるようになった最初のきっかけです。

臨床研究を始めると、日々研究やケースレポートのネタを探すようになり、日常臨床をより深く、追及して考えるようになりました。それまで臨床と研究は別物と考えていましたが、臨床研究を始めてからは、自身の診療の質をより意識するようになる等、明らかによい影響があったと思います。先輩方から「研究をすることで臨床にも深みが出る」という言葉は昔からよく耳にしていましたが、こういうことなんだと実感しました。

また前赴任地の飯塚病院では私は科内でちょうど中堅くらいで、臨床と研修医指導が主な仕事でした。しかし東京ベイ・浦安市川医療センターは若手医師が非常に多いこともあり、期せずして私は研修医指導から若手指導医を指導する立場に移行してきました。若手指導医を指導するとなると、臨床・教育だけでなくマネジメント手法や研究・論文執筆の指導の必要性に迫られました。

しかし私は他人の研究を指導するどころか自分の研究すらおぼつかない状況であったため、まずは自分がきちんと勉強しなければと思ったのが大学院を考えた2つ目の理由です。研究テーマについては、上記のような背景から医学教育、特に教育手法や評価方法に興味があったため、当講座を選びました。

働きながらどのように大学院生として研究をしているか

私は当時から仕事を辞めて大学院に入学するという選択肢は考えておらず、社会人大学院生一本でした。入学前には周囲の経験者の方々から、市中病院で仕事をしながら大学院に通うことがいかに大変かについてお聞きしてはいましたが、実際にやってみてその言葉を痛感しました。大学院に通うといっても普段の仕事が減るわけでは全くないため、大学院の勉強には基本的には余暇を使うことになります。それぞれ個別の事情があるためあまり参考にならないかもしれませんが、私なりに大切だと思うポイントを以下に整理してみました。

リサーチミーティングや指導教官への相談時間の有効活用

当講座では各大学院生に担当指導教官が就いてくださり、定期的にリサーチミーティングに参加して自身の研究の進行状況を発表します。本来は毎日指導教官と顔を合わせられる環境がベストですが、私の場合は直接相談できる機会が限られています。そのため研究計画書や論文の書き方など、一般論は参考書で出来るだけ自己学習して疑問点や不明な点をまとめ、研究にまつわる様々な書類も不格好ながらも自分なりに精一杯仕上げておきます。その後メールでご相談してさらに修正をすすめ、直接お会いしてご指導いただくときには細かいことは修正済で、本質的な議論だけに時間を割けるよう意識しています。こういったことができるのも、ひとえに指導教官の佐藤寿一先生を始めとした名大総診の先生方の社会人大学院生に対するご理解があってのことで、本当に感謝しております。

大学外での時間で何ができるか

社会人大学院生はどうしても大学外での時間の方が多くなります。自己学習だけでは限界がありますが、幸い私は平岡部長を始めとした院内の先生方、研究指導に来て下さる他院の先生方、交流のある米国の大学の先生方からも多くのアドバイスを頂くことが出来ました。統計については都内在住の医学教育系の統計に詳しい統計専門家の先生をご紹介いただき、仕事終わりに夜な夜な都内のカフェで深夜までマンツーマン指導をしていただきました。このように職場周辺の指導医陣に恵まれたのも非常に大きかったと思います。

土曜日や平日夜の授業の活用

名古屋大学では名城大学との連携による土曜日の授業や、平日夜18時頃からの授業など、社会人大学院生でも比較的参加しやすい時間帯の授業があります。金曜の夜仕事が終わってから東京を出発して名古屋に宿泊、土曜日は丸一日授業を受けることができる等、かなり助かりました。

職場の上司や家族の理解

基本的に大学院の勉強には余暇を使い授業は土曜日や夜を活用するといっても、平日の授業では有休を取らざるを得ず、どうしても職場に影響が出てしまいます。今までもかなりご迷惑をお掛けしてきたと思いますが、今後の成長のために頑張ってきなさい、といってくださる上司や同僚の先生方に恵まれたからこそ、仕事と大学院の両立が出来ています。また休日丸一日潰しても文句も言わず、名古屋から深夜に東京に戻ってきたら駅まで迎えに来てくれるなど、献身的にサポートしてくれている家族には感謝の言葉しかありません。

本当に様々な方々に支えられてなんとかここまでやってくることができましたが、お陰で当初の研究テーマであった論文もacceptされ、次の研究テーマの論文も投稿でき、現在は3つ目・4つ目の研究に取り掛かっています。また東京ベイ・浦安市川医療センターと所属母体である地域医療振興協会のご配慮もあり、University of Hawaii John A. Burns school of medicine SimTiki simulation centerに医学教育研究のために留学させていただくことも出来ました。

本学のメリット

私が経験した限りの範囲ですが、大まかに以下のメリットが挙げられます。

社会人大学院生への理解

指導教官の佐藤先生を始めとした教員の先生方や同期の大学院生など、大変親身に接してくださいます。当初は社会人大学院生が私一人、また入学時の学年が13年目ということでやや気後れ感もあり不安でしたが、全く疎外感を感じることはありませんでした。大変ながらもなんとかやってこられたのは、当講座の雰囲気・居心地の良さというのも非常に大きかったです。

一流の講師陣とサポート体制

当講座のみならず、授業では各分野の一流の講師陣が揃っています。また産官学連携の授業では製薬会社で創薬をされている研究員の方から開発~治験に至る流れを直接聞くことができたりなど、病院勤務だけでは触れられない世界を知ることが出来ました。学務課や生命倫理委員会のサポート、取得可能な論文の充実度や統計ソフトの利用など研究環境も素晴らしく、学外からの利用でも不自由しません。

立地・交通の便の良さ

名古屋駅から最寄りの鶴舞駅まで7分、駅の目の前が大学という好立地です。私の場合は職場から東京駅まで約20分、東京-名古屋間が1時間40分、そこから大学まで約10分で、乗り換えが良ければDoor to Doorで2時間半くらいと非常に便利でした。

後輩へのメッセージ

市中病院で働きながらの大学院通学は決して楽ではありませんが、本当にとても楽しいです。今も職場を離れて大学に来ている間は、学生として勉強する楽しさを改めて実感しています。将来に役に立つから、指導医として研究のスキルも必要だから、というのももちろんですが、何よりもまず研究する楽しさを味わってみてください。入学前は私も食わず嫌いでしたが、あのまま研究の楽しさを知らずに過ごしていたかもしれないと思うとぞっとします。

研究が全てと考えているわけではありません。私自身は臨床も研究も両方経験した上で、自分の将来を考えていきたいと思っています。臨床がメインだけど研究にも少し興味がある、いずれは研究も経験してみたいなど、もし少しでも興味を持ちでしたら是非当講座にご相談ください。

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