名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学
田村高志の研究テーマ
講師 田村高志

  • がんをはじめとする生活習慣病に関するゲノムコホート研究
     日本ではじめての大規模分子疫学コホート研究である日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study:Japan-Multi Institutional Collaborative Cohort Study)に参画し、がんをはじめとする生活習慣病と遺伝要因、生活環境要因、血中バイオマーカーとの関連を評価しています。 J-MICC Study 全体の研究では、受動喫煙と高血圧症との関連、血中ホモシステイン値および代謝関連ビタミン値と高血圧症との関連などを評価し、学術論文として報告しています。またJ-MICC Studyの一地区である大幸研究の研究責任者を務め、本研究の運営や参加者の皆さまの追跡調査の実務にも携わっています。 大幸研究における独自の研究では、名古屋市住民のピロリ菌感染率や脂質異常症に関わる新規候補遺伝子、主観的健康感と血中炎症マーカーとの関連などを報告しています。 大幸研究の詳細については、こちらの【大幸研究公式ホームページ】をあわせてご覧ください。
     日本人約10万人の大規模ゲノム疫学データにもとづくさまざまな関連解析を通じて、疾病のリスク評価に取り組んでいます。日本人の疾病予防に役立つ確かな知見を創出し、広く発信できるように努めています。
  • がん疫学研究のメタアナリシス、プール解析
     科学的な結論が得られていなかったコーヒー摂取と肝がん罹患リスクとの関連について、メタアナリシスの手法を用いて日本人コホート研究の分析結果を統合し、コーヒー摂取による肝がん予防効果を報告しています。 また日本を代表する大規模コホート研究の分析結果を統合するプール解析によって、飲酒による胃がん罹患リスクの増加を報告しています(約25万人の日本人での関連解析)。 このような統合解析の手法を用いることによって、がん罹患リスクの関連評価における統計学的な検出力を高め、研究者間や社会で議論されている知見の結論を探っています。
  • 分子栄養疫学研究
     食事やおやつを食べる前、「今日は何を食べようかな」と考えることがあるかと思います。食べ物に対しては人それぞれ好き嫌いがあり、甘党の人や辛党の人、お酒が好きな人やお肉が好きな人などがいることは日常生活でも感じられます。 このような食習慣の好みの多くは幼少期の家庭環境において長い時間をかけて醸成され、大人になってからもそのまま引き継がれることが知られています。最近の研究では、このような人の食習慣が遺伝的な要因でも規定されている可能性が示されており、注目を集めています(お菓子好き、コーヒー好きを規定する遺伝要因などが報告されています)。
     これまでの知見にもとづいて、典型的な食事嗜好性だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミンなどの栄養素摂取量を規定する遺伝要因が存在するのではないかと考えており、J-MICC Studyの大規模ゲノム疫学データを用いて、人の栄養素摂取に関わる遺伝的な背景を調べています。
  • これからの研究展望と抱負
     がんをはじめとするさまざまな病気の発症には、喫煙や飲酒、食習慣をはじめとした生活環境要因だけでなく、遺伝的な背景や社会的な要因が複雑に絡み合って影響を与えています。このような複雑な関係やメカニズムを少しでもひも解いて、疾病予防につながる確かなエビデンスとメッセージを社会に伝えていきたいと考えています。 予防医学を実践して、健やかで心豊かな人生が送れるように心がけています。
     田村高志の略歴などは以下のリンクをご参照ください。
     ― 名古屋大学研究者総覧
     ― researchmap
     ― KAKEN