名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学
教室全体の研究テーマ
  • がん発生要因の検討を中心としたコーホート研究
    当教室は1988年に開始したわが国の代表的ながんコーホート研究であるJACC studyの事務局を担当してきた。この多施設共同コーホート研究は多くの成果が集積されており、参加研究グループの協力で現在論文化されてきている。頻度の高いがん(肺がん、胃がん、乳がん、大腸がん、前立腺がんなど)と生活習慣との関連を検証すると共に、参加時の血清を用いてIGF1、IGF2、IGFBP3などの生体指標との関連を検討している。

    更に、平成17年度から文部科学省の研究費による遺伝子型検討を含めた第2次の多施設共同がん大規模コーホート研究(J-MICC Study)が開始され、研究の中央事務局を担当している。
    http://www.jmicc.com/
  • 遺伝子多型と疾病発生リスクに関する症例対照研究
    疾病発生リスクに関与する遺伝子型を探索し、環境要因(生活習慣)との交互作用を症例対照研究の手法を用いて検討する。

    1. ピロリ菌血清抗体陽性およびペプシノゲン値から見た胃粘膜萎縮に関連する遺伝子多型(IL-1B, IL-2, IL-4, IL-8, IL-10, TNF-A, TNF-B, NF-KB2, CD14など)と生活習慣 の検討。
    2. 喫煙習慣に関与する遺伝子型の探索(DRD2, MAO-A, MAO-B, IL-1Bなど)。
    3. 血清成分濃度に関連する遺伝子多型の検索など。これまでおよそ100の遺伝子多型についてPCRを用いた遺伝子型決定条件を確立した。
  • 職域における疾病発生関連要因の検討
    働き盛りに起きる健康障害は本人はもちろん、職場、家庭などへさまざまな影響を及ぼす。当教室では、数10年にわたり、ある職域の健康管理に関わってきた。産業医として職場環境の改善に努めるのみならず、高血圧、高脂血症などの循環器系疾患やがんのリスク要因の検討も行っている。最近は、メンタルヘルスの重要性が認識され、精神科医師と協力し、より適切な職場対策を検討している。
  • 禁煙誘導方法の確立に関する研究
    喫煙者を禁煙させることは必ずしも容易ではない。無関心期の「禁煙指導」は全くといってよいほど効果がなく、「禁煙支援」は準備期にある人が中心である。「禁煙誘導」は、医療提供者が短時間安価に行いうる方法で、喫煙者を禁煙に誘導するための技術をさす。米国で提唱された5A(Ask, Advice, Assess, Assist, Arange)、呼気中CO濃度や尿中コチニン濃度検査など曝露量を示す生体指標検査結果の通知、喫煙有害作用感受性に関する遺伝子型の検査結果通知などが考案された。当教室では、5A、呼気CO濃度の測定、遺伝子多型(L-myc, NQO1, GSTM1, GSTT1)の通知を用いて、禁煙誘導方法の効果測定を患者、住民、職員を対象者に対して行っている。
  • 予防診療
    疾病予防を目的とした診療を自由診療として2004年7月より大幸医療センターにて開始した。

    内容は以下の5種類である。
    • ピロリ菌除菌
    • 禁煙支援外来
    • アルコール代謝体質検査
    • 葉酸代謝体質検査
    • CA19-9代謝酵素遺伝子検査

    本受診者を対象として遺伝子多型に関する研究を実施し、個別化医療の確立を探求している。
  • 疫学研究における倫理問題に関する検討
    疫学研究は大勢の人を対象に行われるものである。対象には研究目的である疾患の患者だけでなく、一般の健康な方も含まれることが多く、また長期にわたって観察を続けたり、ある要因の負担(介入)をお願いすることもある。したがって、実施にあたっては、その研究の意義や方法などの説明を行い理解を求めること、センシティブな情報である個人の健康関連情報を守ること、日頃から疫学研究の方法や成果を周知広報し研究への理解を深めることなどが重要である。当教室では、過去6年にわたり厚生科学研究費を受け、疫学研究と社会との関わり方について検討を進めている。
    http://www.jichi.ac.jp/ethics/