移植外科ナウ

当科の学会発表などをホームページで公開することで、現在の名古屋大学 移植外科のトピックを紹介します。



20223 生体肝移植患者における下肢筋肉への電気刺激リハビリの影響について


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Effects of Neuromuscular Electrical Stimulation on Lower Limb Muscle Strength After Living-Donor Liver Transplantation: A Case-Control Study


生体肝移植を行う患者さんの多くは全身状態の悪化から筋力低下となっている方が多いです。そのため、周術期にリハビリを行いながら回復を目指していきますが、床上でもできる電気刺激での筋力増強の試みの報告です。結果としては、期待通りの効果とまではいきましたが、今後も患者さんの改善促進のため様々な工夫を行っていきたいと思います。
リハビリチームとの共同の報告となります。




202111 肝移植患者におけるアルコール性肝疾患と非アルコール性肝疾患での心理社会的特徴に関する報告


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Psychosocial characteristics of alcoholic and non-alcoholic liver disease recipient candidates in liver transplantation: a prospective observational study


アルコール性肝疾患と非アルコール性肝疾患での心理社会的特徴を肝移植患者にて比較検討してみたが、現在の日本のアルコール性肝疾患での肝移植適応患者でみると、既報とはやや異なり大きな差異がないことが示されました。
精神科リエゾンチームとの共同の報告です。




20219 小児肝移植後におけるEBウィルスの慢性的な持続感染のグラフト肝に対する影響


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The impact of chronic Epstein–Barr virus infection on the liver graft of pediatric liver transplant recipients: A retrospective observational study


小児肝移植後のレシピエントに慢性的なEBウィルスの持続感染がみられることがあり、そのグラフト肝への影響を調べた研究報告です。それぞれの症例で免疫抑制剤の減量などを行いながら長期管理を行っていますが、2012年から2020年の28例のEBウィルス持続感染小児患者において、グラフト肝などへの影響が軽微であったことが報告されました。




20211 成人生体肝移植ドナーにおけるこれまで未報告の肝内胆管走行の報告


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A novel anatomic variation of the intrahepatic biliary tree in live liverdonor surgery: A case report


肝臓の血管や胆管走行には個体差がみられることがあり、安全な手術のためには、術前の詳細な検討が必要となります。今回、これまでに報告がされたことがない新規の胆管走行の症例を経験し、安全に手術を施行することができましたので、症例報告として報告いたしました。




20208 成人生体肝移植後の門脈狭窄に対する4D-flow MRIによる血行動態評価についての報告


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Portal Vein Stenosis Following Liver Transplantation Hemodynamically Assessed with 4D-flow MRI before and after Portal Vein Stenting.


門脈狭窄は肝移植後に発症する合併症のひとつで、CT検査による数値流体力学(CFD)に基づく血流評価の報告を、2019年に当科より行っております。
今回、MRI検査を利用した、より直接的な血流評価を、合併症治療前後で比較検討しました。本研究は、放射線科の兵藤良太先生を中心に進めていただき、症例報告としてまとめていただきました。




20205 急性肝不全に対する生体肝移植の役割についてまとめました


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The role of living donor liver transplantation for acute liver failure


突然病気が発症する重症肝炎は急激に生命に関わる状態に進行する疾患で、救命のための肝移植は一刻を争います。
今回、その病気や将来の治療の見通し、脳死肝移植と比較しての生体肝移植の役割などについてまとめて報告しました。




20201 生体肝移植ドナーの術後フォローにおける精神心理学的な評価の重要性についての報告


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Clinical Features and Long-Term Outcomes of Living Donors of Liver Transplantation Who Developed Psychiatric Disorders


生体肝移植ドナーの術後に問題が起こっていないことを継続的に外来にてフォローしています。ただ、日常生活のなかでは、さまざまなストレスなどから、精神心理的なサポートが必要となられる方がおられることが我々の検討で分かってきました。
当院での肝移植では、術前後の経過において、精神科リエゾンチームと情報を共有しています。その積極的な取り組みが、問題解決に重要であることが示されました。




20201 成人生体肝移植における胆管合併症が継続した場合の長期生存への影響についての報告


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Decreased long-term graft survival in persistent biliary complications after right-lobe living-donor liver transplantation.


成人生体肝移植後の頻度の高い合併症として胆管のトラブルがあります。今回の我々の検討では、さまざまな治療にも関わらず胆管合併症が完治できずに合併症が継続した場合には、長期生存率が低下することが分かりました。合併症を避ける手術方法、合併症の管理方法の重要性が、再認識されました。




201911 地方会で発表した「好酸球増多症候群によるBudd-Chiari症候群への脳死肝移植」を論文化


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Budd-Chiari Syndrome Associated With Hypereosinophilic Syndrome
Treated by Deceased-Donor Liver Transplantation: A Case Report


非常にまれな血液疾患(好酸球増多症)から肝移植が必要となった症例で、世界で最初の報告です。
さまざまな疾患で、肝移植治療が救命のために役に立つ可能性があります。




20199 肝移植後門脈狭窄に対する数値流体力学に基づいた非侵襲的門脈血流評価についての報告


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Computational Fluid Dynamics-Based Blood Flow Assessment Facilitates Optimal Management of Portal Vein Stenosis After Liver Transplantation.


門脈狭窄は小児肝移植後に発症する合併症のひとつで、放置すればグラフト不全へつながりうる重大な合併症です。これまで門脈血流を評価する手段は限られ、狭窄診断はCTにおける形態変化や超音波によるジェット流の確認といった間接所見に基づかざるを得ませんでしたが、今回、我々は、小児肝移植後の門脈狭窄に対して数値流体力学(CFD)に基づく血流評価を行いました。




20198 生体肝移植における脾臓摘出術のリスクについての報告


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Splenectomy in living donor liver transplantation and risk factors of portal vein thrombosis.


成人生体肝移植の成績向上のため、移植術後の門脈圧が重要であることが分かっています。ただ、門脈圧を調整するための我々のコンセプトとその手段のひとつとしての脾臓摘出術のリスクについて、我々の経験の報告を行いました。




20195 142回名古屋肝疾患研究会、名古屋


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好酸球増多症候群によるBudd-Chiari症候群への脳死肝移植


様々な病態で肝移植が必要となる場合がありますが、今回、非常にまれな血液疾患から肝移植が必要となった症例を経験しましたので、この地域の内科、外科の先生方にその経験を共有いたしました。
見事、雫先生は優秀演題賞を受賞です。



20185 C型肝炎で肝移植実施後の肝繊維化について評価方法についての研究報告


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Diagnostic Usefulness of APRI and FIB-4 for the Prediction of Liver Fibrosis After Liver Transplantation in Patients Infected with Hepatitis C Virus


C型肝炎の治療薬が進歩し、C型肝炎患者の肝移植適応は減少傾向にありますが、術後の繊維化が大きな問題となっていました。APRIとFIB-4という評価方法の有用性を報告しました。




20184 小児肝移植後のEBウィルス持続感染の影響などについての研究報告


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Risk factors and long‐term outcomes of pediatric liver transplant recipients with chronic high Epstein‐Barr virus loads


肝移植後に服用が必要となる免疫抑制剤は、身体にさまざまな影響を及ぼすことがあります。一部の患者さんで、EBウィルスという非常に弱いウィルスが持続的に検出されることがありますが、本研究で長期的な結果に差がなかったことが示されました。引き続き、注意深く研究を継続していく予定としております。




20184 脳死臓器提供者の基礎疾患による予期せぬ肝疾患についての症例報告


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Brain death organ donor supported by a left ventricular assist device showing unexpected congestive liver fibrosis: A case report


近年、増加傾向にある脳死臓器提供ですが、さまざまな原因の結果、脳死状態に至っています。今回、われわれは、検査段階では移植可能臓器と判断した肝臓が、原疾患の影響で移植不可であった、珍しいケースを経験しましたので、その報告を行いました。




20184 2回東海北陸HLA研究会、名古屋


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4月14日、名古屋大学医学部附属病院 中央診療棟3階 講堂にて、「第2回東海北陸HLA研究会」を開催いたしました。

一般演題は、「血液領域」と「臓器移植」の2部構成。特別講演には、
広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 消化器・移植外科学 大段 秀樹 教授に、『臓器移植におけるPrecision Medicine』のご講演をたまわりました。





20174 2017 ANNUAL SCIENTIFIC MEETING AND ANNUAL GENERAL MEETING、香港


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Pediatric liver transplantation.
Preformed DSA in liver transplantation.


香港移植学会で、上記二つのテーマで講演を行ってきました。
午前は、小児肝移植について。グラフトサイズに関するこれまでの歴史、日本の小児分割肝移植についてのまとめ、一部の疾患における肝細胞移植などの治療将来像などについて。
午後は、最近、当院で積極的に取り組んでいる抗ドナー抗体陽性患者に対する肝移植の取り組みについてです。



20173 29回日本小腸移植研究会、名古屋


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第29回日本小腸移植研究会を開催しました。


3月4日、名古屋大学医学部附属病院 中央診療棟3階 講堂にて、「腸管不全に対する治療の展望」をメインテーマに、約80名の参加者をお迎えして開催いたしました。
教育講演 2演題、ランチョン・シンポジウム 2演題、一般演題 24演題と、非常に充実した研究会となりました。
多くの参加された方々と、小腸移植・腸管不全の課題と研究成果について、大いにディスカッションする機会となりました。
次回、第30回日本小腸移植研究会は、東北大学の当番で仙台です。




201612 当院における生体肝移植前後のリハビリについての報告


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Changes in Muscle Strength and Six-Minute Walk Distance Before and After Living Donor Liver Transplantation.


肝移植の必要な患者さんの多くは全身状態不良のため、筋力の低下が顕著となっています。当院ではリハビリテーション部のスタッフが中心となり、移植前後のリハビリにあたっています。




201610 25回日本組織適合性学会大会、札幌


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抗ドナー抗体陽性肝移植の経験とその対策


肝移植の拒絶反応の中でドナーに対する既存抗体(DSA)を原因とする抗体関連拒絶があります。名古屋大学では、術前にDSAが確認された3例に対して、rituximabという薬剤を術前投与することで、抗体関連拒絶の発症を抑制し、術後1年以上の良好な結果が得られました。また、3例に追加して、まだフォロー期間が短いですが、さらに2例についても簡単な報告をさせて頂きました。
新しい治療戦略として、更に発展させることができればと考えております。



201610 25回日本移植学会総会、東京


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心理社会的視点からみたアルコール性肝不全に対する肝移植治療


名古屋大学では、従来確立されていなかったアルコール性肝不全に対する肝移植の心理社会的適応基準を設けて、肝移植の適応評価を行っています。肝移植7例中1例に再飲酒がみられましたが、精神科の介入により、その後の再飲酒を防止でき、その他の6例も心理教育などで再飲酒を防止できています。


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持続性高EBウイルス血症を示す小児生体肝移植症例についての検討


小児肝移植症例では肝移植後、高Epstein-Barrウイルス(EBV)血症が長期間持続する症例が少なくないことが報告されております。高EBV-DNA血症が長期間持続する危険因子として移植時年齢、体重、EBVドナー既感染・レシピエント未感染などが挙げられることを発表いたしました。今回、これらの症例の予後や経過は決して悪くないことも発表いたしましたが、さらなる解析と研究をすすめて参ります。


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生体肝移植における脾摘後の門脈血栓症例の検討


名古屋大学の生体肝移植ではC型肝硬変と脾動脈瘤の症例に対して脾摘を行ってきましたが、脾摘には門脈血栓という重大な術後合併症があり、これまでに5例経験しています。C型肝炎の治療法は近年劇的に変化しており、C型肝硬変に対する脾摘は再検討が必要と考えています。



20166 免疫抑制剤 タクロリムスの服用方法の早期変更についての報告


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Early Conversion From Twice-Daily Tacrolimus to Prolonged-Release Tacrolimus in Liver Transplantation: A Single-Center Experience.


肝移植後の免疫抑制剤としてのタクロリムスの服用方法を、移植後早期に1日1回製剤に変更する報告です。その安全性とメリットについて検討しました。




20167 34回日本肝移植研究会、旭川


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ビデオシンポジウム: 肝移植におけるPearls and Pitfalls(私にしかできない手術、および、経験したくない合併症)
経験したくない術中合併症: 巨大多発肝嚢胞に対する生体肝移植術中の心停止


肝移植においては様々な合併症の可能性があります。術中のトラブルについて、研究会で我々の経験を他の移植外科医と共有することは、移植医療の発展に極めて重要であり、今回の発表を行いました。極めて大変な術後経過でしたが、この患者さんはお元気に回復されております。



20165 ILTS 22nd Annual Congress、ソウル、韓国


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Precise Thrombophilia Screening Tests in Living Liver Donor Evaluation Are Useful to Reduce Donor's Risk of Venous Thromboembolic Events


当科では術前より血栓性素因の有無に関する検査を全生体ドナー候補者に行い、その結果をもとにドナー選択や術後血栓予防療法を行う方針としています。このことにより術後深部静脈血栓症や致死的合併症となりうる肺塞栓は10年以上生体肝移植ドナーの方で認めておりません。
生体ドナーの術前検査を慎重に行い、少しでもリスクを下げる努力をしています。



20165 ILTS 2016 Live Demonstration、ソウル、韓国


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Session 3:
How to Overcome Small-for-Size Graft: The Never Ending Challenge?
How to make and manage hemi-portocaval shunt for portal inflow modulation


今回は、主催者より発表テーマを指定された講演であったため、過小グラフト症候群(SFSS)という問題を乗りきるために成人生体肝移植の術式として最近はほとんど行われなくなった、Hemi-potocaval shuntについてのまとめと問題点についての講演となりました。



20164 Transplantation Science Symposium (TSS) Asian Regional Meeting 2016、東京


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RITUXIMAB DESENSITIZATION FOR LIVING DONOR LIVER TRANSPLANTAITON WITH PREFORMED CLASS-II DONOR SPECIFIC ANTIBODIES


肝移植の拒絶反応の中でドナーに対する既存抗体(DSA)を原因とする抗体関連拒絶があります。名古屋大学では、術前にDSAが確認された3例に対して、rituximabという薬剤を術前投与することで、抗体関連拒絶の発症を抑制し、良好な結果が得られました。


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Selection criterion with avoiding small-for-size grafts does not require intentional modulation of graft inflow during living-donor liver transplantation.


名古屋大学の生体肝移植のグラフトは、やや大きなグラフトを選択しています。小さいグラフトを使用することに伴う合併症(SFSS)を避けるのに、大きなグラフトを選択することが最も直接的な解決方法と考えており、小さいグラフトを使用した際に必要となる付加的な処置(脾臓摘出術など)を行わずに、より良好な成績が得られています。