尿排出障害

症状

自覚症状としては、排尿困難の症状(尿が出るまでに時間がかかる、残尿感がある、尿が出始めてから終わるまでに時間がかかる、尿の勢いがない、尿が途中で途切れる)と刺激症状(頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感:急に尿がしたくなってもれそうになる、切迫性尿失禁)がみられる。

自覚症状と実際の尿排出障害の程度とは必ずしも比例しないので、自覚症状が軽度でも高度の尿排出障害があり、尿路感染、膀胱結石、水腎症、腎機能障害などの合併症を起こすことがある。逆に、排出障害が軽度でも自覚症状の強いこともある。

尿道通過障害による尿排出障害では膀胱が過活動となり、切迫性尿失禁が起こることがある。

尿道通過障害、膀胱収縮障害いずれの原因による場合でも、尿排出障害が高度で、残尿が多くなると溢流性尿失禁を起こすことがある。

原因

高齢者における尿排出障害の原因は大きく2つに分けられる。

一つは前立腺肥大症に代表される尿道の通過障害であり、女性においても膀胱頸部狭窄による尿排出障害がみられることがある。

他の一つは、膀胱(平滑筋)の収縮障害による尿排出障害で、高齢者によくみられる原因としては、糖尿病ニューロパチー、子宮癌・直腸癌の手術など骨盤内臓器手術、椎間板ヘルニアや腰部脊椎管狭窄などによる末梢神経障害がある。

対策

尿道通過障害による排出障害と、膀胱収縮障害による排出障害では、治療法が大きく異なるが、自覚症状のみでは区別は困難である。
既往歴や合併疾患により推測し、泌尿器科専門医による尿流動態検査により正確に区別ができる。

残尿が少なく(50ml以下)、自覚症状も軽度で、合併症のない場合には経過観察でよいが、自覚症状が中等度〜高度の場合には薬物治療を試みる価値があるので、一般内科医あるいは泌尿器科専門医を受診する。
残尿が多い場合や、合併症のある場合、また特に尿閉例では専門医による精査、治療が必要であり、泌尿器科医を受診する。

尿閉を含め、排尿障害に対する安易な尿道留置カテーテル留置は行うべきではない。((3)の尿道留置カテーテルの項参照)
泌尿器科専門医の診断にもとづいて、外科的治療を含めた治療の可能性を探るべきである。
外科的治療が不可能な例、薬物治療の効果が不良な例では、
清潔間欠導尿((5)参照)を導入するが、寝たきりの例、痴呆の高度な例、また介護者やその他のマンパワーの問題で導尿による排尿管理が不可能な場合は、専門医、看護・介護者で尿道カテーテル留置も含めた排尿管理法を検討する。