運営委員長よりご挨拶

運営委員長

2015年12月に設立された「クリニカルアナトミーラボ名古屋」(Clinical Anatomy Lab NAGOYA: CALNA(カルナ)は、名古屋大学大学院医学系研究科において、本学に献体されたご遺体を医学生の解剖実習のみならず、医師の教育・研究に利用するための施設です。医療の進歩に伴い高度化する手術手技の修練をはじめ、新しい手術アプローチの研究を目的にしています。脳神経外科医として多くの患者さんを診察していますが、脳の形は人それぞれであり、困難な手術を間違いなく完遂するためには一つでも多くの経験を積む必要があると強く感じています。

複雑な手術手技を短期間で修得し、疾患に対する新しい知見やアプローチを最新の視点で確認したいと考えるのは医師として当然です。それは手術を受ける患者さんの安全性に直結します。

海外では献体を用いて高度な臨床解剖を学び、手術・検査技術を修練し、新たな手術手技を研究開発できる教育施設の存在が一般的ですが、日本ではほとんどありません。そのため、これまで多くの日本の医師は海外へ渡り、自ら機会を得る努力をしてきました。本学でそのような教育施設の立ち上げを求める声があがったのは若手の医師からでした。それは彼らに医師としての「次の一歩を行く」使命感があるがゆえです。

2014年4月30日に第1回準備委員会を開催。その後、医学系研究科長、病院長、解剖学3教室教授の強力なバックアップを受け、設立に向けての環境整備を開始。設立当初の脳神経外科学、整形外科学、手の外科学、形成外科学、耳鼻咽喉科学の臨床5科のほか、総計20数科が賛同し、CALNA設立の道が開かれました。本学の臨床系講座と解剖学講座を中心とし、篤志献体組織「不老会」の多くの方のご理解を得て、医学の発展と医療の安全のために、今まさに一歩を歩み出そうとしているところです。本学の取り組みが、医師のスキルアップ、医学のさらなる発展へとつながることを期待します。

クリニカルアナトミーラボ名古屋
運営委員長
齋藤竜太

研究科長よりご挨拶

名古屋大学院医学系研究科長

解剖とは、医学教育の発展を願ってご献体いただいた方々の尊い意志を受けて行われるものです。医学生にとって解剖学実習は生命の神秘ともいえる人体の解剖を目の当たりにしてその詳細な構造を学ぶだけではなく、生命倫理や死生観など医師となるためには必須の教育を受けることができる大変貴重な機会です。ご献体頂いた方への感謝とともに、将来医師となる志をあらためて認識します。このように解剖は従来、医学生教育の根幹を成してきました。

一方、近年の目覚ましい医療技術の発展に対応するため、医学部を卒業した医師よるご遺体を使用した手術手技トレーニング(教育)や新規手術法や医療機器開発(研究)の需要が高まってきています。これは、より安全で質の高い医療を提供したいという医師の高い志の表れとも言えます。

CALNAの設立は医師の需要に応えるべく、不老会会員様の尊い意志と解剖学教室の支援により実現しました。CALNAは「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」に準拠し倫理的側面も十分に配慮されたものとなっています。当然ながら、参加した医師には医学生と同様に貴重なご献体に対する尊厳を守ることを厳しく義務づけています。

CALNAにおいては、医師がご遺体を使用して手術前の詳細なシミュレーションを行い、医学生教育と同様に解剖構造の理解をより深めるための講義も行われます。さらに、新たな手術法の検討や医療機器開発などの研究も行われます。 このCALNAで生み出された安全で質の高い医療技術が日本全国、そして世界へと発信され、より多くの患者さんに恩恵をもたらすことを心より願っています。

名古屋大学医学部長
名古屋大学院医学系研究科長
門松健治

病院長よりご挨拶

病院長のご挨拶

今日、医療現場では新しい機器や技術が著しく発展を続けています。特に外科系領域においては、大きな切開で手術を行う時代から、内視鏡手術に代表されるような小さな切開や低侵襲性が重要視される時代へとパラダイムシフトを遂げました。その一方で、痛ましい医療事故の報告が相次いで報告されます。これは、機器や技術が進化する反面、医療従事者にはより高度な知識と技量が要求されるようになったということに他なりません。

もちろん、3Dプリンターやバーチャルシミュレーションといった擬似的な教育や訓練も発展し、それによる技術経験は必要不可欠ですが、細微な人体構造を再現するところまではまだ至っておりません。それを補完するのがご遺体を用いたサージカルトレーニングです。医師がご遺体を用いた教育やトレーニングを受けることにより、擬似的なトレーニングでは得られない経験が可能となり、医療の質や安全性の更なる向上が期待できます。

名古屋大学においてはご遺体を使用した医師のサージカルトレーニングや研究における倫理的側面に配慮し「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」を遵守したCALNAが2015年12月に組織されました。この組織設立には名古屋大学生命倫理審査委員会の承認も得られています。

新しい時代に高い水準の医療を提供できる医師を育むことが、ご献体下さいました不老会会員様の尊い意志を最大限に生かすことにつながり、またそれが我々の使命であると考えております。CALNAでの活動は、ガイドラインに示されているように、このホームページにて公開してまいります。どうか私たちの活動へのご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

名古屋大学医学部附属病院長
小寺泰弘