腫瘍外科学について

教授あいさつ

メスの限界を極める!腫瘍外科学教室

梛野 正人(名古屋大学大学院腫瘍外科学 教授)

梛野 正人 われわれの教室(講座)は、2002年4月の大学院重点化により『第一外科』から『器官調節外科』へと名称が変更され、さらに2006年5月『腫瘍外科』と再度名称の変更がなされ今日に至っています。医学部附属病院での診療は『消化器外科I』として、消化器外科全般(消化管および肝胆膵外科)を担当しています。当教室からは、これまで約1500名にもおよぶ外科医が輩出しており、現在も大学および42の関連病院で多数の同門の先生方が診療・教育・研究に携わっております。

 私は初代 齋藤 真教授(在任1919~1950年)から数えて7代目になります。先代の二村雄次名誉教授は、肝胆膵外科、特に肝門部胆管癌を中心とする胆道癌外科治療のパイオニアであり、手術を中心とした外科治療・研究を精力的に進められました。私も一貫して肝胆膵の外科臨床を行い、特に高難度手術である胆道癌に対する肝切除術の安全性向上に取り組んできました。最近では、門脈+肝動脈の切除再建、肝膵同時切除など他施設ではほとんど行われないような超高難度手術にも積極的に取り組んでいます。胆道癌には放射線療法や化学療法で科学的に有効性が証明されたものはなく、外科的切除が唯一治癒の可能性がある治療法です。したがって、更なる術式の改良や術前・術後管理の工夫により、“メスの限界を極める”ことがわれわれ外科医の使命と考えます。しかし、メスの力にも限界があるのは明らかで、予後を改善するにはTranslational researchに基づいた新しい診断・治療法の開発が必要です。われわれはsiRNAを用いた胆道癌・膵癌治療の研究を精力的に行っており、癌性腹膜炎患者に対する臨床応用の目処が立ちつつあります。

 胆道癌以外にも、食道癌・胃癌、大腸癌の外科治療も積極的に進めています。胸部食道癌には3領域リンパ節郭清を伴う切除を標準術式とし、他臓器浸潤を伴った高度進行食道癌に対する術前化学放射線療法後の根治切除やStage I症例に対する胸腔鏡下食道切除術、腹腔鏡補助下胃管作成術も積極的に行っています。早期結腸癌に対しては既に腹腔鏡下手術を導入しており、進行結腸癌や早期直腸癌にも適応を拡げる予定です。侵襲の大きな手術のため一般施設ではあまり行われませんが、骨盤内局所再発や進行多発肝転移に対しても積極的な外科治療を行い、この領域でも“メスの限界を極める”努力をしています。

 胆道癌の外科治療は多くのMan Powerが必要な領域であり、腫瘍外科の総力をあげてその実績を積み上げてきました。当科の胆道癌肝切除症例数、手術の難易度、手術成績は他施設を圧倒しており、今や間違いなく世界一のHigh volume centerになったと思われます。また、その優れた治療成績を多数の一流英文誌に報告しており、“胆道癌外科治療の名大”として拡く世界に知られています。IT時代となり、医療情報が世界を駆け巡り、良質な医療を求めて患者が世界を動き回る時代に入っています。名実ともに胆道癌では世界一のHigh volume centerとしての責任を果たし、更に名古屋大学病院の名を世界中に広めていきたいと考えています。

医学生・研修医の先生方へ

 最近、外科を希望する学生の減少が問題となっています。“人間、安易な道に進むと堕落する”と言います。確かに外科医の生活は不規則で大変ですが、人の体にメスを入れると言う行為は厳粛なもので、やりがいは極めて大なるものがあります。私はもう一度生まれ変わっても外科医になりたいと思っています。“気概のある諸君、来たれ腫瘍外科へ!”

略歴

略歴
 1979年3月 名古屋大学医学部卒業
 1986年5月 名古屋大学医学部第一外科医員
 1988年4月 国家公務員共済組合連合会東海病院外科医長
 1991年1月 名古屋大学医学部第一外科 助手
 (1993年6月~1994年4月、文部省在外研究員:Lahey Clinic)
 1996年4月 名古屋大学医学部第一外科 講師
 2003年9月 名古屋大学大学院医学系研究科器官調節外科 助教授
 2006年5月 名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍外科学 助教授
 2007年5月 名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍外科学 教授

学会
 日本外科学会
 日本臨床外科学会
 日本消化器外科学会
 日本消化器病学会
 日本肝胆膵外科学会
 日本胆道学会
 日本膵臓学会、他

委員
 胆道癌取扱い規約 委員
 膵癌取扱い規約 委員
 胆道癌診療ガイドライン 委員
 膵癌診療ガイドライン 委員
 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 委員
 肝胆膵画像 編集委員

Editorial Board
 Asian Journal of Surgery,
 Journal of Hepatobiliary Pancreatic Surgery
 World Journal of Gastroenterology,
 Journal of Gastroenterology,
 Surgery Today
 Japanese Journal of Clinical Oncology