医療関係者向けの情報
疾患概要
1.概要
拘束性皮膚障害(Restrictive dermopathy;RD)は、1983年にはじめて報告された新しい遺伝性疾患である。胎生後期からの皮膚の分化異常による皮膚硬化を本態とし、緊張性を伴った脆弱な皮膚のほかに、皮膚硬化による多発性関節拘縮、呼吸様運動障害による肺低形成を示し、子宮内胎児死亡例も見られ、出生しても呼吸不全のためにほとんどは1週間以内に死に至る非常に重篤な疾患である。
2.疫学
本疾患は本邦でこれまで11例、世界でも約60例ほどの報告しかない稀な疾患であり、胎生後期の死産、出生しても1週間以内にほとんどの患者が死亡することから疾患の全体像がなかなか明らかになっていない。診療上も臨床症状のみで本症であると確定診断をすることが困難な場合があり、実際の患者は報告よりもかなり多いと思われる。
3.原因
本症は一部を除いて常染色体劣性遺伝を示し、2004年に本疾患の原因遺伝子がZMPSTE24もしくはLMNA遺伝子であることが明らかになった。
4.症状
本 疾患の本態は皮膚の先天的な分化異常にあり、胎生後期に全身の皮膚が非常に硬くなることにある。皮膚は堅く薄い半透明である。そして、光沢があり、緊張し た感じがある。ときに表面にびらんがある。特徴的顔貌「眼間離開、小さい鼻、小さく開いたままの口、小顎」を認める。皮膚が硬いための可動性の不良から関 節拘縮、さらに呼吸様運動障害による肺の低形成、嚥下運動の障害による羊水過多をそれぞれ引き起こす。通常は早期産や子宮内胎児死亡例も多いが、出産した 場合は呼吸不全のためほとんどは1週間以内に死に至る。
5.合併症
早期に死亡するため、合併症は明らかでない。
6.治療法
現在までのところ、有効な治療法はない。
7.研究班
拘束性皮膚障害の本邦における診療実態の把握、全患者データベース構築と診断指針の作成研究班
研究班の活動
- 全国規模の疫学調査を行い、本疾患の患者数、診療実態と臨床経過と予後を充分に把握する。
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新規獲得症例および本疫学調査で明らかになった過去の症例について遺伝子診断を行い、できる限り原因となる遺伝子変異を同定する。それにより、診断の確認と表現型-遺伝子型の関連を調べ、さらに挙児希望の両親に対しての出生前診断を可能にする。
- (1)と(2)で得られたデータをまとめて、本疾患の症例データベースを構築する。
- データベースに集積した情報を元に本疾患の実践的な診断指針の作成を目指す。
- 研究期間内に着床前診断の施行準備を進める。
遺伝子診断・遺伝カウンセリングについて
名古屋大学医学部附属病院皮膚科では、同院倫理委員会の承認を受けて、拘束性皮膚障害の遺伝子診断および出生前診断を行っております。詳細につきましては主治医の先生からお問い合わせいただければ幸いです。