<研究課題>

小児薬物過敏症診療の実態調査および診断プロトコールの検討

研究の趣旨:

小児薬剤過敏症(Drug Hypersensitivity:DH)は、自己報告による既往歴が約10%とされているが、皮膚テストや血液検査で陽性となる症例はわずか数%に過ぎない。小児においては、ウイルス性発疹症の罹患率が高いため、抗菌薬投与後の小児DHの大半は過剰診断されている可能性が指摘されている。DHの疑いを持たれることで、その後の健康的および経済的な転帰に悪影響を及ぼすことが知られている。 近年、DH診療に対して国際的な協調の下で症例集積やポジションペーパーが発表されている。日本でも2022年に日本アレルギー学会から発刊されたガイドラインにDHの項目が新設されたが、これらは主に成人のデータを基にしている。小児医療の現場では、DH診療を目的にアレルギー専門施設へ紹介されることは稀であり、多くのケースで疑いが残ったまま被疑薬の使用が制限されている可能性がある。本研究の目的は、小児におけるDH診療の現状を明らかにし、汎用的な診療プロトコールを導入することで、現状の改善を図ることである。

研究の目的:

研究①:東海地域の二次・三次医療機関におけるDH診療の現状を把握する。
研究②:DH診療プロトコールの導入に伴い、被疑薬剤のデラベリング(誤診断されたDHの解除)の割合を評価し、プロトコールの汎用化における課題を検討する。

研究の方法:

研究①
愛知県内四大学の関連施設および東海地区の小児アレルギー関係者のメールリストを通じて、参加希望施設に対して小児DH診断に関する質問紙を送付し、結果を集積する。質問紙には、DH診療の件数、被疑薬の種類、被疑薬に対する補助検査(皮膚テスト、血液検査)の実施状況、薬剤投与試験の実施状況、代替薬の種類などを含める。
研究②
国内外のガイドラインおよびポジションペーパーを基に、小児DH診療のためのプロトコールを作成する。共同研究の対象は治療薬のみとし、造影剤や周術期アナフィラキシーに関しては、当院で発生した症例に限り副次的に解析する。DHを即時型および非即時型に分類し、それぞれに対して原則保険適応内での評価方法を用いた診療を行う。必要とされる症例に対しては薬剤投与試験を行い、DHの臨床病型ごとに被疑薬のデラベリング割合を評価する。また、プロトコールの安全性および汎用化に向けた問題点を検討する。 診断は藤田医科大学本院、藤田医科大学ばんたね病院、日本赤十字愛知医療センター名古屋第一病院で実施する。本研究を通じて、愛知県内の病院小児科に協力を呼びかけ、共同研究施設への症例の集約を推進する。

研究機関:

研究① 研究責任者:あいち小児保健医療総合センター 高里良宏
研究②
研究責任者:あいち小児保健医療総合センター 高里良宏
共同研究者:藤田医科大学医学部 小児科学 中島陽一
共同研究者:藤田医科大学ばんたね病院 小児科学 近藤康人、森雄司
共同研究者:日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第一病院 小児科 牧野篤司


連絡先:

研究代表者
あいち小児保健医療総合センター
アレルギー科 医長 高里良宏
〒474-8710 愛知県大府市森岡町7-426
TEL 0562-43-0500(代表)
FAX 0562-43-0513
Email: yoshihiro_takasato@sk00106.achmc.pref.aichi.jp(@を半角@に変えて送信してください)

各大学研究担当者
名古屋大学小児科:
名古屋市立大学小児科:
愛知医大小児科:
藤田医科大学小児科: