<研究課題 概要>

研究課題: 小児の脳梗塞の原因、診断、治療についての研究

研究の趣旨:

小児の脳梗塞は、成人と異なり稀で、海外では、新生児期発症の脳梗塞は1/2,500~1/4,000出生、生後1ヶ月以降の小児期発症は1~3/100,000人/年と報告されています。人種差があると考えられますので、日本での調査が必要です。発生機序も、アテローム血栓性梗塞や、心房細動などによる心原性塞栓症が多い成人と異なると予想されますので、小児ならではの原因検索や治療法を確立する必要があります。そのため、私たちは、小児の脳梗塞の原因、診断、治療について、研究する計画を立てました。小児脳梗塞の症例を集積し、それらの問題点について、明らかにします。

研究の目的:

小児の脳梗塞症例を集積し、解析することにより、原因、診断、治療について、明らかにします。それを、実際の臨床の現場に、フィードバックすることを目指しています。

研究の方法:

各施設に対し郵送でアンケートを行います。アンケートは2回方式で行い、初回アンケートでは症例の経験の有無と年齢、性別、原因疾患などを調査します。
初回アンケートで「症例あり」の施設については、2次調査への協力を依頼し、匿名可された疫学情報、画像データを収集します。画像データにいては、セントラルビューを行う予定としています。それらデータを用いて、小児の脳梗塞の解析をおこないます。対象とするデータは、既存の臨床データと予後に関するデータであり、新たな検査等は不要です。

結果の概要:

愛知県内の医療機関への調査で、2010年から2014年に動脈性脳梗塞と診断された生後29日から15歳11か月の小児が40例確認された。最も多い初発症状は麻痺で27例(71%)に認められた。14例では脳梗塞を起こした基礎疾患や誘因は明らかでなかった。発症から診断までの時間経過が確認できた23例では、発症から医師の診療を受けるまでの時間の中央値は2.8時間、発症から脳梗塞の診断までの中央値は24時間だった。発症から6時間以内に脳梗塞の診断がされた患者は30%だった。小児では発症から脳梗塞の診断までに時間を要する症例が多く、早期治療のためには医療関係者の小児脳梗塞の認知を広げる必要があると考えられた。

【論文】
Hori I, Tsuji T, Miyake M, Ueda K, Kataoka E, Suzuki M, Kobayashi S, Kurahashi H, Takahashi Y, Okumura A, Yoshikawa T, Saitoh S, Natsume J. Delayed Recognition of Childhood Arterial Ischemic Stroke. Pediatr Int. 2019;61(9):895-903.

研究機関:

名古屋大学、名古屋市立大学、藤田保健衛生大学、愛知医科大学とその関連病院

連絡先:

研究代表者
名古屋大学大学院医学系研究科小児科学 夏目淳
〒466-0065 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
Tel: (052) 741-2111 (大代表)
Fax: (052) 744-2974 (小児科)

各大学研究担当者
愛知医科大学:倉橋宏和
名古屋市立大学:堀いくみ
名古屋大学:辻健史、夏目淳
藤田保健衛生大学:松本祐嗣