新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

ホーム > INFORMATION > 国際活動支援報告 > 研究者の研究成果発表のための短期海外派遣 > 訪問者:学習院大学 金谷美沙

国際活動支援報告

2018年12月7日(金)

訪問者:学習院大学 金谷美沙

【研修報告】NeuroScience2018
(1)研修報告
平成30年11月3日から11月7日までの5日間、米国・サンディエゴで開催されたNeuroscience 2018に参加しました。今回が、私にとって最初の国際学会だったのですが、延べ2万8千人もの人数が参加し、活気あふれる討論がそこここで交わされる様子に初日から圧倒され続けていました。また、神経、という大きな枠で開催される学会ということもあり、領域を超えた最先端の研究に触れることができる貴重な機会であると感じました。何もかもが新鮮で、刺激的な日々でしたが、その中でも特に印象的だったことは、一番大きなホールで行われたレクチャーで、量子ドットを用いた膜上タンパク質の一分子観察がテーマになっていたことです。内容も非常に興味深かったのですが、私自身も全く同じシステムで膜上の分子観察を行う研究を行なっているため、自分の研究が世界的に注目された分野であることを改めて実感しました。私は、最終日の朝にオーラル発表を行い、樹状突起上のタウタンパク質が、AMPAレセプターダイナミクスに及ぼす役割について発表を行いました。初めての口述発表を英語で行うということで大いに緊張していたのですが、無事に発表内容を伝えることができ、その場ではうまく答えられなかったものの、別の分野の方から重要な質問をしていただくこともできました。今後、質問いただいた部分も含めてさらにタウ蛋白質の生理的役割について解明していきたいと存じます。

(2)新学術領域研究への貢献
私の研究対象は、樹状突起上にあるタウタンパク質です。タウは、名前の通り、軸索上に多く存在することが判明しているタンパク質です。しかし、先行研究により、タウノックアウトを行うと神経可塑性の一種、long term depression(長期抑圧)が生じなくなる。すなわち、神経興奮にタウタンパク質が関与する可能性が示されています。生理的なタウの持つ、神経興奮へ及ぼす役割を解き明かすことは、タウを標的とした薬物を作成するにあたり重要な意義を持ちます。
今回、生理的なタウがAMPAレセプターへ及ぼす影響について口述発表を行い、海外の研究者から意見をいただけたことは、今後の研究を進める上での有意義な機会となりました。学会参加並びに発表に際し、新学術領域からご支援いただきましたこと、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

学習院大学
自然学研究科 生命科学専攻
金谷 美沙