新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

ホーム > INFORMATION > 国際活動支援報告 > 研究者の研究成果発表のための短期海外派遣 > 訪問者:東京都医学総合研究所 細川雅人

国際活動支援報告

2018年12月3日(月)

訪問者:東京都医学総合研究所 細川雅人

【研修報告】11th International Conference on Frontotemporal Dementias

《研修報告》
平成30年11月11日から14日の間、オーストラリア・シドニーで開催された、11th International Conference on Frontotemporal Dementia (ICFTD) 2018 [前頭側頭型認知症国際会議]に参加し、研究成果の発表をおこないました。 11日はシドニー大学Brain and Mind CentreにてPre-Conference Workshopsが実施され、12日-14日はInternational Convention Centre, Sydneyに場所を移し、ICFTD 2018の本会が開催されました。Geneticsのセッションでは欧米でゲノム解析のコンソーシアムを形成して、FTDの大規模遺伝子解析(患者2,000人 vs 健常者8,000人)をおこなっていることが報告されました。Biomarkersのセッションでは、これまでのFTDに関するバイオマーカーのレビューと、今後注目すべき分子の紹介がありました。しかし現時点ではFTDに特異的な診断マーカーが見つかっておらず、有用なバイオマーカーの開発が急務であると思われました。
 今回は前回(第10回)に比べると、イメージングの技術が進み、FTDの遺伝子変異(MAPT, GRN, C9orf72)ごとに脳のどの部分が影響を受けるかを比較する研究が多い印象でした。また、C9orf72に関する演題が減り、PGRN・GRNに関する演題が増えたと感じました。特にGRN遺伝子変異とミクログリア、あるいはPGRNとlysosomal storage diseaseに関する話題が豊富でした。このようなタイミングでPGRNに関する発表をする機会が得られたことは幸運でした。次回は2020年の10月に米国・ミネアポリスで開催されます。私の発表に関して、「メカニズムの解明は次回までの宿題だよ」とコメントをくれた質問者がいました。これを励みに研究を進め、次回も発表できるようにしたいと考えています。
この度は新学術領域研究・短期海外派遣プログラムにより、研究発表の機会を与えて頂いたことに感謝申し上げます。

(2)新学術領域研究への貢献
今回、” Progranulin Haploinsufficiency Reduces Amyloid Beta Deposition In Alzheimer’s Disease Mouse Model”に関する発表をおこないました。既報ではプログラニュリン(PGRN)の減少はアミロイドβの蓄積量を増やすということでしたが、我々の結果は既報と全く逆であり、PGRNのハプロ不全はAβの蓄積を減少させることを示しました。PGRNに興味のある研究者達から反響があり、引き続きメカニズムの解明に取り組む予定です。PGRNハプロ不全と認知症に関連する異常蓄積タンパクとの関係を明らかにして、「脳タンパク質老化と認知症制御」に貢献したいと考えています。

東京都医学総合研究所
認知症プロジェクト
細川 雅人