新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2018年12月3日(月)

訪問者:京都大学 奥田真也

【研修報告】16TH Asia Oceanian Congress of Neurology (AOCN 2018)

《研修報告》
2018年11月8日から11月10日までの3日間、韓国・ソウルで開催された16TH Asia Oceanian Congress of Neurology(AOCN)に参加させて頂きました。今回はPoster Sessionにて、パーキンソン病動物モデル作成の一環としておこなってきた、当科オリジナルマウスであるαシヌクレインBACトランスジェニックマウスへのαシヌクレインフィブリルの脳内接種実験について発表致しました。トランスジェニックマウスの種類(ヒト野生型、A53T変異型)や接種するフィブリルによってリン酸化αシヌクレイン陽性の凝集体形成のスピードが異なること、A53T変異型αシヌクレイン BACトランスジェニックマウスにおいては短期間でαシヌクレイン病理による黒質ドパミン神経細胞脱落を認め、表現型も確認できる点が非常に興味深く、パーキンソン病モデルとして利用価値が高いのではないかと各国の研究者よりコメントを頂きました。今後研究を発展させていく上で大変励みなったと感じております。発表はツアー形式でなく自由討論形式でしたので、他国のパーキンソン病研究者のポスターについてもディスカッションする機会をもてたことも大変勉強になりました。
また、Parallel Session“Advances in Neuroscience and its Application to Therapies”では、我が国の服部信孝先生や辻省次先生を始めとする先生方が講演をされており、パーキンソン病とそれ以外の神経変性疾患についても最新の知見や知識を深めることが出来ました。特にフィブリル接種実験や蛋白伝播についての話題もあり、この領域が依然ホットな分野であると感じることが出来ました。
今回、個人的には初めての韓国渡航であり、また政治的に我が国との関係性が不安定な時期でやや不安もありましたが、学会会場では韓国人の研究者とも互いの研究内容につき親密に意見を交わすことができ、サイエンスをしていく上で政治的な国境は関係ないことを実感できました。今後もこのような機会があればどんどん海外の研究者との交流を深めていきたいと思います。
最後になりましたが、新学術・短期海外渡航プログラムにて今回の渡航をご支援いただきましたことに感謝を申し上げます。

(2)新学術領域研究への貢献
αシヌクレインは老化に関連する重要なタンパク質であり、オリゴマー形成や細胞内凝集により毒性を発揮すると考えられています。我々は変異型αシヌクレインBACトランスジェニックマウスにフィブリル脳内接種を組み合わせることで、αシヌクレイン病理を伴い早期にドパミン神経脱落を起こすモデルを作成しました。このモデルを利用して薬剤候補化合物の効果判定を短期間でおこない、疾患修飾薬の開発に繋げられるものと考えております。

京都大学
臨床神経学
奥田 真也