新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2018年11月21日(水)

訪問者:名古屋大学 藤岡祐介

【研修報告】Society for Neuroscience 2018 annual meeting, Washington大学 浦野教授とdiscussion

《研修報告》
H30.11.3-11.7にサンディエゴにて開催された米国神経科学会に参加して参りました。今年の米国神経科学会の参加人数は約3万人におよび、Tau蛋白に関係した発表だけでも800題以上の報告があることから、国内の学会では体験できない、”研究のシャワー”を浴びることとなりました。日本以上のタウ研究の熱量に圧倒される面もありましたが、新たな世界のトレンドを実感することができ、今後の研究への参考となるとともに、motivationの賦活につながりました。私自身は11.4午後のポスターセッションにおいて「Aberrant interaction between FUS and SFPQ in the nucleus of neurons in sporadic FTLD/ALS and PSP brains.」という演題名で発表を行い、多くの研究者に発表を聞いていただき、有益なdiscussionを行うことができました。実は、我々の着目しているSFPQという分子は、これまでの独自の研究からたどり着き注目するに至った分子ではありますが、この巨大な学会においても関連演題が自らの発表を含めわずか2題(もう一つの演題も本邦からの報告でした)でありました。我々は核内FUS-SFPQ複合体異常が孤発例を含めたALS/FTLDやタウオパチーの病態にとって非常に重要である可能性があることを今回報告しましたが、来訪研究者の多くはSFPQについてご存知ではありませんでした。現在に至る背景とともに説明し、SFPQの重要性は容易に理解頂くことができたのですが、ある意味この状況はチャンスであると確信することができました。なるべく早い段階で論文化できるよう今回の議論や指摘を参考に質の高い論文となるよう努力して参ります。また会期終了後にワシントン大学浦野教授と個別に同内容につき議論する時間を頂き、現在の研究の問題点、今後の方針につきアドバイスを頂くことができました。最後になりましたが、今回の学会参加、発表に際しまして、新学術領域からのご支援を賜りましたことに深謝いたします。。

(2)新学術領域研究への貢献
本研究はA02-1高島グループのメイン研究ターゲット「タウ蛋白」のisoform(3リピート型タウ、4リピート型タウ)を規定する選択的スプライシングの新たな制御機構としてFUS-SFPQ核内複合体のヒト病理における横断的解析を主に行いました。FUSおよびタウはいずれも認知症の一病型であるFTLDの原因遺伝子として知られており、FTLDや4リピートタウオパチーに分類される認知症の発症の原因となるタウタンパク質老化にFUS-SFPQ核内複合体の解離が広く関係している可能性が示唆されたことを中心に発表し、参加者との有益な議論を深め合うことができました。本研究は脳タンパク質老化の初期メカニズムに切り込むものであり、当該領域への貢献度は高いものと考えております。

名古屋大学
神経内科
藤岡 祐介