新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2018年11月20日(火)

訪問者:産業医科大学 足立弘明

【研修報告】Neuroscience 2018

《研修報告》
平成30年11月3日から11月7日までの5日間、米国・サンディエゴで開催されたNeuroscience 2018に参加しました。この学会は、多くの研究者がご存知のように神経領域の基礎から臨床までの多くの領域の研究者が一堂に会するマンモス学会です。神経変性疾患の演題も自分の研究に関連するものや他のものも数多く聞いたり見たりことができ、また学会が夕方に終了してからも他の参加者と交流する機会があることがさらに有意義でした。今回は日本からもALS、FTD、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、ポリグルタミン病などの様々な神経変性疾患に関する演題の最新データの発表があり、近年研究が活発に進められているiPS細胞モデルからの治療効果のデータなど、基礎から臨床まで、幅広い分野のデータが提示され、大変有意義なものになりました。普段、あまり見る機会のない基礎研究者の発表を数多く見られるのも、この学会へ参加することの意義の一つと考えられます。私は4日目にポスター発表を行い、Dynactin1によるオートファゴソームとリソソームの融合のメカニズムと神経変性への関与について発表しました。多くの研究者が訪れてくださり、一部は企業で研究を行っている方にも興味を持っていただきました。いただいた貴重なコメントや批判を検討して、今後さらにデータの更新を行って、神経変性疾患の発症メカニズムの研究の発展のために努力したいと存じます。
この学会は規模が大きいために、いつも同じ都市をぐるぐると回って開催されていますので、あまり観光には適さない学会ですが、この中のサンディエゴは気候が温暖で過ごしやすく、街も綺麗で食事も美味しく、快適に過ごすことができます。来年のこの学会は10月にシカゴで行われる予定で、神経変性疾患の研究者の方々には是非参加していただき、学会の時間内や時間外でのdiscussionをさせていただければ大変幸いです。最後になりますが、今回はこの学会に派遣していただきましたことを、この場をお借りして感謝申し上げます。

(2)新学術領域研究への貢献
この新学術領域研究では、タウオパチーを初めとする神経変性疾患の発症メカニズムの解明が重要なテーマであり、さらに治療に結びつくメカニズムを解明することも重要と考えている。神経変性疾患では、病因となる蛋白質が神経細胞内で異常な凝集体を形成して蓄積する過程で細胞毒性を起こして神経細胞死に至り、オートファジーなどの蛋白質分解機構は、細胞内でこれらの異常な蛋白を分解するシステムとしての役割を果たしており、この機能を効率よく利用することで副作用の少ない有効な神経変性疾患の治療を開発することができると考えられる。私達は、オートファジー活性化作用のある化合物を見い出し、異常蛋白質の分解効果の分子機構を分子レベルから明らかにすることで、薬剤などによる異常蛋白の蓄積を減少させる方法に結びつけたいと考えている。今回の学会参加、発表に際しまして、新学術領域からのご支援を賜りましたことに深謝いたします。

産業医科大学
神経内科学講座
足立 弘明