新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2018年5月7日(月)

訪問者:首都大学東京 真野 叶子

【研修報告】The 59th Annual Drosophila Research Conference

《研修報告》
アメリカ・フィラデルフィアで平成30年4月11日~15日に開催されたThe 59th Annual Drosophila Research Conferenceに参加しました。この学会は世界のショウジョウバエの研究者が集まり、発生や加齢研究だけでなく技術についてなど様々な分野のセッションがありました。海外の学会には初めての参加でしたので、世界で行われている研究を知ることができ、とても刺激的な時間となりました。
私は3日目に行われた”Models of Human Disease: Neurodegeneration and Neurological Disorders”で神経細胞軸索末端でミトコンドリアを減少させた際に起こる神経変性におけるCaMKIIの役割について口頭発表を行いました。このセッションでは神経変性や神経細胞の維持について7名発表しました。このセッションの参加者は非常に多く、私の発表に対しても質問を受けました。また、このセッションだけでなく、オートファジーなどのセッションでも神経変性についての発表があり、ポスターでも多くの発表がありました。神経変性疾患関連の発表が多く、たくさんのことを学ぶことができました。また、発表数などからショウジョウバエ研究者の中でも神経変性疾患は注目度の高い分野であることを感じました。
同日夕方にはTechniques and Technology Platform Sessionに参加しました。ここでは、遺伝子操作から行動測定まで様々なスキルについての発表がありました。ショウジョウバエの学会であるからこそこのような細かい分野の発表が行われ、すぐに使えるような技術の情報を手に入れることができ大変勉強になりました。
海外の学会に参加することで世界の研究者からお話しを伺う機会が多くありました。伺った方それぞれのバックグラウンドがあり、自分自身のこれからの研究への考え方などを考える機会となりました。
 最後になりましたが、このような機会を可能にしてくださった新学術領域研究国際活動支援・短期派遣プログラムに心より感謝申し上げます。

(2)新学術領域研究への貢献
ミトコンドリアの機能低下やシナプスからの減少はアルツハイマー病を含む様々な神経変性疾患でみられ、軸索ミトコンドリアの減少は加齢依存的な神経変性を引き起こします。私たちは、この過程に関わる因子をショウジョウバエモデルを用いて探索し、ミトコンドリアの軸索からの欠乏は軸索でのタンパク質分解の異常を引き起こすことを見出しました。ミトコンドリアが欠乏した神経終末ではオートファジー小胞が蓄積し、またこれらの神経の軸索はタウなどの異常タンパク質の毒性に対して脆弱でした。今回の発表ではミトコンドリアの欠乏によるシナプスや軸索の変性にCalcium/calmodulin-dependent protein kinase II (CaMKII)が関与していることを発表しました。これらの成果は、老化による神経細胞内での局所的なタンパク質恒常性破綻について新たな知見を加えることで、当該領域“脳タンパク質老化と認知症”の目的に貢献すると考えています。

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首都大学東京
理学研究科生命科学専攻
真野 叶子