新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2017年11月29日(水)

訪問者:京都大学 高村理沙

【派遣報告】Society for Neuroscience 2017 annual meeting Molecular and Cellular Cognition Society

発表演題名:Functional breakdown processes of neural circuits in hippocampal CA1 region of Alzheimer’s disease model mice
(1)学会報告
 平成29年11月11日から11月15日までの5日間、米国ワシントンD.C.で開催されたSociety for Neuroscience (SfN) に参加しました。神経科学界で世界最大規模ということもあり、全世界から3万人を超える人々が参加し、5日間で900程のsessionが実施されたようです。私自身、今回が初めての国際学会でしたが、活気あふれる雰囲気は想像以上で圧倒されました。また、会場内で出会う日本人の大多数が男性であるのに対し、全体的には男女比率が半々程度であることにも驚かされました。
全体を通して、アルツハイマー病 (AD) だけでも様々なテーマのシンポジウムが同時刻に開催することもあり、様々な要因が複雑に関わっていることを再認識しました。あるシンポジウムでは部屋に人が入りきらず、外に列ができて順番を待つこともあり、いかにAD研究が全世界で注目されているかが伺えました。
自身のポスター発表では、ADモデルマウスの海馬CA1領域における機能的神経回路の破綻過程というテーマで発表し、細胞の活動の変化やそのAβへの影響に関して報告させて頂きました。同じくAD研究や、研究で使用しているカルシウムイメージングに興味を持つ研究者が多数訪れ、貴重なご意見を頂くことができました。今回 ”Cognition: Navigating Through Space: Grid and Place Cells” のsessionでポスター発表を行いましたが、”Alzheimer’s Disease”に関連したposter sessionはいつも会場のほぼ反対側にあったため歩くと結構な距離になり、閲覧に偏りが出てしまう可能性があると感じました。そのため、4日目の発表までにポスター発表を通じて知り合った人々に宣伝し、実際に訪れてもらえたことも嬉しかったです。
9日には、pre-meetingのMolecular and Cellular Cognition Society (MCCS) にてSfNと同様の内容でポスター発表をさせて頂きました。MCCSは分子・細胞認知学の研究を中心とした内容で、初日の夜はお酒を飲みながらの自由なポスター発表が行われ、気さくに意見交換をすることができました。また、2日目のシンポジウムでは世界各国から招聘された先生方が口演され、白熱した議論が交わされました。
 今回の学会開催地であるワシントンD.C.は、ホワイトハウスが位置する政治の中心地ということもありビジネスマンで溢れていましたが、実際に接した人々はとてもフランクで話しやすく、快適な都市だと感じました。また、入場無料にも関わらず面白い展示物の数々が収集された博物館が多く存在し、文化的な一面もあります。この1週間、非常に充実した日々を過ごすことができました。このような機会を与えて下さったこと、この場をお借りして感謝申し上げます。
(2)新学術領域研究への貢献
 私たちの班は、海馬CA1領域における神経回路破綻過程を細胞レベルで数か月に亘って可視化し、活動する細胞や場所細胞の数が減少する中、過活動な細胞は増え、場所細胞の特徴も変化していくこと、更にはこれらへのAβの関わりについて報告させて頂きました。今回ポスター発表を行ったことで各分野の研究者から貴重なご意見を頂くことができたため、今後の細かな細胞の解析に活かしていきたいと思います。それにより、ADの神経回路破綻過程をより詳細に描写できるようになり、新学術領域研究に貢献できると考えます。

京都大学
大学院生
高村 理沙