新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

ホーム > INFORMATION > 国際活動支援報告 > 研究者の研究成果発表のための短期海外派遣 > 訪問者:理化学研究所 濱田耕造

国際活動支援報告

2017年7月14日(金)

訪問者:理化学研究所 濱田耕造

【派遣報告】Gordon Research Conference on Calcium Signalling

発表演題名:Gating Mechanism of IP3 Receptors Revealed by Mutagenesis and X-Ray Crystallography
(1)学会報告
 イタリアのトスカーナ州ルッカ(Lucca)で開催されたゴードン会議(Gordon Research Conference: GRC)に参加しポスター発表と口頭発表を行いました。遠くにテラコッタの赤い屋根の街が見える山の頂の会場に、Calcium Signallingの研究に携わる研究者や学生そしてノーベル賞受賞者まで約170人(日本人5名)が一堂に会しました。
今回参加したGRCのテーマは”Intracellular Calcium Signals: Generation, Function and Therapeutic Intervention”で、初日はディスカッションリーダーPozzan先生のセッションから始まりました。会場は初日から最終日まで終始熱気に包まれ、基礎から創薬に至る様々な研究について、未公表データも発表し熱く議論する研究者たちの姿には目を見張るものがありました(プログラムはこちら、https://www.grc.org/programs.aspx?id=12389)。
6月19-20日はポスター発表を行いました。私たちの発表内容は17年前から挑戦し続けた「IP3受容体のX結晶構造解析」の成果です。2015年NatureにIP3受容体のクライオ電顕構造が発表され先を越されたのですが、我々はこのNature論文では不明だった「IP3による構造変化」をX線結晶構造解析と機能解析により明らかにしました。高名な先生方や若者たち、そしてIP3受容体の専門家からも親切で建設的なコメントを頂き、大きな励みとなりました。
私たちの研究がLate-Breaking Topicsに選ばれたので、6月22日の最終日は口頭発表を行いました。巨大な舞台・スクリーンそして170人の世界的研究者の前での発表なので、やはり緊張して発表用PC画面のスライドが汗でスワイプできないほどでした。しかし、いざ話を始めると冷静になり、IP3受容体のX結晶構造解析と機能解析の結果を落ち着いて説明することができました。更にクライオ電顕との相違点を述べ今後の展望となるモデルを提案して、会場の研究者に我々の研究成果を力強く伝えることが出来ました。終了後、Yule先生に”Good job!”と肩をポンと叩かれ、感慨もひとしおでした。基調講演も終わり最後のディナーでは、様々な国の偉大な先生方や某有名雑誌のエディターが“Kozo, Congratulations!”と握手してくださいました。またGRCで発表できるような良い研究ができるよう頑張ろうと心に決め、トスカーナ州Luccaを後にしました。

(2)新学術領域研究への貢献
  今回参加したGRCでは、本領域班でテーマとしている小胞体カルシウムチャネル(IP3受容体)の動作原理について、世界的に著名な研究者たちに強くアピールし議論することが出来ました。
また、今回のGRCはカルシウムシグナルと神経変性疾患に関する最新の興味深い研究発表も含まれ世界の新しい動向を知ることが出来ました。本領域研究の中心的なテーマである脳タンパク質老化と神経変性疾患の分子機構については未だ不明な点が多く新しい切り口が必要とされます。今回GRCで盛況であったミトコンドリア/小胞体接着部位や細胞質膜/小胞体接着部位の分子メカニズムの新知見は将来的に本研究領域に役立つものと期待できます。

理化学研究所・脳科学総合研究センター
発生神経生物研究チーム 
濱田 耕造