新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

ホーム > INFORMATION > 国際活動支援報告 > 訪問者:東京大学 中村真理

国際活動支援報告

2017年7月14日(金)

訪問者:東京大学 中村真理

【派遣報告】ISSCR 2017 Annual Meeting

発表演題名:In vitro disease modeling of the MAPT R406W mutation using patient-derived iPSCs
(1)学会報告
  平成29年6月13日から6月17日までの5日間、米国・ボストンで開催されたInternational Society for Stem Cell Research (ISSCR; 国際幹細胞学会)に参加しました。ISSCRは幹細胞最大の国際学会で、本年度は世界中から4000人以上の研究者が集まりました。

13日はpre-meeting workshop “Clinical Advances in Stem Cell Research”が行われ、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患に対する臨床治験の最先端に関する発表がありました。14日からは、多数のセッションが同時に行われ、中でも疾患iPS細胞を用いた病態解析や薬剤スクリーニングによる治療法開発に関する報告が数多く見られました。特に、生体内組織の構造を3次元的に模倣するオルガノイドは非常に注目されており、オルガノイドを用いた病態モデルの構築や3Dスクリーニングアッセイに関わる研究が著しく進展しているように感じました。iPS細胞を用いた研究成果が次々と臨床応用へと展開していく様子を知ることができたのは非常に刺激になりました。また、一番多くの人が集まるPlenary sessionでは、Hans Clevers教授、Rudolf Jaenisch博士、Jürgen Knoblich教授などの著名な先生方が口演されていた他、日本からも山中伸弥教授、高橋政代教授も最新の成果を発表されており、会場を大いに沸かせました。

自身のポスター発表では、変異型タウ患者から樹立したiPS細胞を用いた病態解析について発表させていただきました。同じく幹細胞を用いて認知症やタウの研究をされている研究者が訪れてくださり、貴重なコメントや見解を頂きました。他研究者とのディスカッション、そして多数の口演や発表から得られたアイデアを用いて、最先端技術を駆使したタウオパチーモデルの構築、そして治療法開発をさらに精力的に進めていきたいと思います。

今回学会が開催されたボストンは、アメリカで最も古い街の一つであり、ヨーロッパ調の建物が印象的でした。学問・文化の街とも呼ばれているだけあって、名門ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、美術館、音楽大学やコンサートホールなど見どころ満載であり、学会から離れている時間は十分に観光を満喫できました。また、ボストンは湾と面していることから、海鮮類が豊富であり、ラボメンバーとシーフードレストランでお食事会を楽しみました。
非常に充実した5日間を過ごすことができました。このような機会を頂けたことを心より感謝いたします。

(2)新学術領域研究への貢献
  私たちの班は、タウオパチーに対する治療法開発を目的とし、in vitroモデルを用いた病態解析を行っています。今回は、その基盤となるモデルの作製方法及び改良点、そして様々な解析手法に関する知見を得ることができたため、自身の研究に生かすことでよりタウオパチー病態を再現できるモデル構築に貢献していきたいと思います。

東京大学大学院医学系研究科
国際保健学専攻 生物医化学教室
中村真理