新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2016年12月3日(土)

訪問者:名古屋大学 横井 大知

【派遣報告】The 27th International Symposium on ALS/MND

発表演題名:Age of onset differentially influences the progression of regional dysfunction in sporadic amyotrophic lateral sclerosis

(1)学会報告
 12月7日-9日の3日間ダブリンで行われたALS/MNDの国際学会に参加しました。12月7日のポスター発表に先駆けて、6日の夜にポスターを張りに行きました。7日から学会に参加しています。まず口演やポスター発表で目についたのは、日本と異なる各国でのALSの臨床背景の特徴についてです。欧米では下肢筋力低下で発症する群が多く、球症状で発症する群は独立して予後が悪いことが報告されていました。さらにアジア各国でも球麻痺型で発症する割合が異なることもわかりました。人種間による初発症状や病型による予後が異なることは興味深い臨床結果であり、今後は遺伝的背景も含めてさらなる研究が必要であると考えました。特に日本人のALSの特徴を明確にすることは研究課題と考えています。 

 次に勉強させていただいたこととしては、ALS-FTDの認知機能障害についてです。ドイツでの研究においてALS-FTDとFTDとコントロールを比較した場合、ALS-FTD群は有意に文章構成能力が悪く、FTDは行動障害の割合が有意に多いという結果でした。同じ病理像の疾患において異なる臨床像がみられることは興味深い結果でした。さらにC9orf72のリピート数とALS、認知障害、精神症状についての研究があり、C9orf72と統合失調様の精神症状との関連について解析する等遺伝的背景と臨床的背景双方を検討した研究が数多くみられ今後の研究について参考となる発表も数多くみられました。12月7日にポスター発表をおこない、孤発性ALSにおける発症年齢の影響について提示しましたが、年齢によって部位にあたえる影響が異なることは興味深く受け止めれ、既に出版されている学会誌を紹介させていただきました。今後の反省点としては情報量が多く、もう少し明確・簡素化した発表ができるように心がけたいと思います。またポスターの縮小版コピーを何部か横に置いている発表も多く、今後の参考にしたい所存です。世界に発信することの重要さを実感させていただいき、大切な経験であったと考えております。


(2)新学術領域研究への貢献

 ALS-FTDとALSにおける認知機能や精神症状が異なることや人種間でALSの臨床像が異なることは興味深い事実であり、C9orf72も含めた遺伝背景と臨床像をマッチさせた研究を今後は検討していく予定である。脳たんぱく質と老化という研究においてALSの認知機能やALS-FTDの臨床像、認知機能を解明することは重要な課題であり、今回の学会はALSの新たな研究テーマについて考察する手がかりとなったことを報告させていただきます。

名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻
脳神経病態制御学講座 神経内科学分野
大学院生 横井 大知