新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2016年11月10日(木)

訪問者:首都大学東京 安藤 香奈絵

【派遣報告】Society for Neuroscience/北米神経科学学会2016 Annual meeting とsatellite events

(1)学会報告
北米神経科学会年会は、毎年多くの研究者が集うことで知られ、米国だけでなく各国から多くの研究者が参加し、最新のデータを発表します。今年も例外ではなく、3万人近くが参加しました。この学会には私は2年ぶりに参加し、いつもながら演題の多さに圧倒されながらも研究者たちのエネルギーを強く感じる学会でした。

今回、私は学会二日目日曜午後に行われたNanosymposium ”Tau:Biochemistry”で口頭発表を行い、CaMKIIの過剰な活性化がタウの毒性を増加させることを報告し討論させていただきました。同じセッションでは、Balajiらによるtauのdendriteへのmissortingに関する研究、DeVosらのタウの凝集体をモニターする新たな手法に関する報告があり、どの演題も興味深いものでした。

SfNの年会では教育やキャリア・ディベロプメントに関するワークショップも行われます。今回私が参加した、”Professional Development Workshops – It’s a Win-Win: Effectively Engaging Undergraduates in Research”では、効果的な研究指導法について、様々な大学からの教員の話を聞くことができ、日本の科学を担う若い人たちと大学で日々研究させていただいている私には、非常に勉強になりました。

また、今回はサテライトイベントとして学会の前に行われたNeurobiology Disease Workshopと、学会の後に行われた”Scientific Knowledge Discovery Over Big Data”にも参加しました。”Scientific Knowledge Discovery Over Big Data”では、ワークフロー・プロセッシングアプリケーションや、そのイメージ解析、また表現系と遺伝子型の統合PheWAS解析への応用が紹介され、貴重な情報を得ることができました。

今回の北米神経科学会への参加では、タウたんぱく質の毒性について最新の情報を得て、何よりこの分野をリードする研究者らと直接討論することが大きな収穫でした。この機会を可能にしてくださった新学術領域派遣プログラムにこの場を借りて感謝申し上げます。

(2)新学術領域研究への貢献
私たちは、当該領域の公募班のメンバーとして、疾患関連脳たんぱく質タウの異常が発症過程でどのように引き起こされるかについて研究しています。今回の学会では、その成果として、タウ毒性の増加にCa2+/calmodulin-dependent protein kinase II (CaMKII)の異常な活性化があることを報告しました。申請者らの演題はナノシンポジウムでの口頭発表に採択され、シンポジウム参加者らと直接討論するまたとない機会でした。また、多くの神経変性疾患に関する最新の研究成果を知ることに加え、現在タウに関してどのようなトピックが注目されているかを感じることができました。これらにより本研究をさらに発展させることで、新学術領域研究に貢献できると考えます。

首都大学東京
理工学研究科生命科学専攻 神経分子機能研究室
准教授 安藤香奈絵