新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2016年11月10日(木)

訪問者:首都大学東京 岡 未来子

【派遣報告】Society for Neuroscience 2016 / Satellite event

発表演題名:Reduction in ATP levels in the axon during aging and the role of mitochondrial distribution

(1)学会報告
平成28年11月11日~17日に、アメリカ・サンディエゴで開催されたSociety for Neuroscinece 2016に参加した。11日に、ワークショップ「Neurobiology of Disease Workshop: From Pediatric Encephalopathy to Alzheimer’s: Linking Mitochondria to Neurological Diseases」に参加した。ここでは、神経疾患を引き起こす原因の一つであるmtDNA変異からミトコンドリアのダイナミクス異常に関する研究を6名の研究者が紹介した。このワークショップへの参加者は非常に多く、神経疾患とミトコンドリアとの関連に対する注目度の高さを感じた。Lunch Breakでは、外国のポスドクや企業研究者と交流することができた。昼食後は、興味のあるテーマに分かれて研究者と議論するBreakout sessionに参加し、ほかの研究者が何に興味を持っているのか、今後の研究の方向性を知ることができた。SfNへの参加者は3万人を超え、シンポジウム・ポスター数も非常に多く、毎日朝から夕方まで忙しくも充実した時間を過ごせた。13日には、「Energy Metabolism and Mitochondria Function in Health, Disease, and Aging」というセッションで、口頭発表を行った。朝早いセッションだったが、立ち見が出るほど多くの研究者が聴きに来ていた。質疑応答の時間には著名な研究者から、発表後もほかの研究者から質問を受けた。私の研究に興味を持つ研究者が多いことに驚きつつも、非常に嬉しかった。また、ここで頂いた質問を論文に反映していきたいと考えている。17日にはSatellite eventの「Scientific Knowledge Discovery Over Big Data」に参加した。ビッグデータを自身の研究にどのように活用すればよいか、PCを使ってデータの活用手順を教えてもらった。普段学ぶ機会のない分野だったので、非常に有意義な講義となった。

(2)新学術領域研究への貢献
私たちは、加齢によりなぜ神経変性疾患のリスクが増加するのか、特にタウたんぱく質の異常がアルツハイマー病などの加齢依存的疾患でどのように引き起こされるかについて研究しています。私たちのこれまでの研究で、ATP産生を担う細胞内小器官ミトコンドリアの軸索での異常が疾患関連分子タウの毒性を増加させることを明らかにしてきました。今回のSfNでは、老化に伴う神経細胞内のATP分布変化やミトコンドリア分布変化についての研究成果を発表しました。この研究を発展させることで、老化による脳タンパク質の変化と神経毒性獲得のメカニズムに関して新たな知見が得られると考えています。

首都大学東京
理工学研究科生命科学 神経分子機能研究室
大学院生 岡未来子