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新着情報

2023.08. 1

名大呼外便りNo.36:ウィーン留学記2・名古屋大学_仲西慶太

Page 2: 隣国スロベニアでのExplantation

                                          

Guten Tag, an alle

                                                      

    私の勤務開始日はちょうど土日が重なっていたため73日の筈であった。ただ肺移植医療には土日も祝日も関係ない。その前の週に病院を訪れお世話になる教授先生方に挨拶に行き、その後なすがままに登録されたメーリングリストにドナー情報が流れたのは72()のことであった。右も左も分からない私であったが、すぐさま「I want to join.」と返信するとパスポートのコピーを送れと来た。ドナー情報もドイツ語で書いてあるため全く分からなかったがどうやら他国で出たドナーの様だ。集合時間に病院に行くと、救急車で空港へ。用意されていたのはプライベートジェットだった。早速こんなのに乗れるとは!(Figure 1)。筆者には当然初めてのことであったため、VIP気分で意気揚々と隣国スロベニアの首都リュブリャナへ約30分のフライト(Figure 2: ○ 颯爽と肺移植に向かうサージャン、× 悠々とドバイに向かうオジサン)。同伴のコーディネーターが行く先を教えてくれたが、当時はリュブリャナと言われてもスロベニアと言われてもどちらも全くピンと来なかった。

                                                 

    さて息巻いて乗り込んだExplantationの結果は惨憺たるものであった。ドナーの状態が不安定であり、同伴のレジデントもかなり神経質になっており、終始ピリついた雰囲気での肺摘出となった。当然一通りの勉強をして臨んだのだが、この日は心臓外科医がおらず各血管の確保や心摘出なども二人でやらないといけなかったため大変苦戦した。私よりも一回りも若いレジデントに罵倒されながら何とか初めてのExplantationを終えたのであった。見ず知らずの日本人だか中国人だか分からない人間といきなり二人でやらなければいけないため、レジデントもかなりプレッシャーを感じながら執刀していたことは良く分かる。ただ心停止後、アイスクラッシュを胸腔内に入れて保存液を灌流している間、胸腔内から溢れた保存液などによって術野周りや手術室がひどく濡れてしまったことに対して、それはお前が吸引しないからだ!と言われた時は「それはいくら何でも」と少しイラっとした。こちらは足元は勿論、股間近くまでビショビショだと言うのに。。。海外では遠慮や忖度など一切無い、年齢や役職など上下関係もほぼ無い、ただ安定した手技が出来るかどうかだ。そういうシビアな世界に来てしまったことを再認識し、より自分の知識や技術を高めたいと思う良い機会になった。傷心にくれる帰路となったが、帰りのプライベートジェットからの景色(Figure 3)に癒され、翌日からいよいよ始まる研修を全力で楽しもうとまた心に誓うのであった。

      

それでは皆さん、Tschüss

 

Figure 1.jpgFigure 2.jpgFigure 3.jpg