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新着情報

2023.03.18

第122回日本外科学会定期学術集会において、当科の福本紘一先生が発表された内容が日本外科学会のビデオライブラリーに選出、門松由佳先生が発表された報告が優秀演題に選ばれました。

122回日本外科学会定期学術集会において、当科の福本紘一先生が発表された内容が日本外科学会のビデオライブラリーに選出、門松由佳先生が発表された報告が優秀演題に選ばれました。

以下にお二人の先生方からのコメントを掲載いたします。                                     
                

★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★

 第122回日本外科学会定期学術集会(於:熊本)で私が発表した内容が、日本外科学会のビデオライブラリーに選ばれました。タイトルは「胸膜播種IVa期胸腺腫に対する導入化学療法後の胸膜肺全摘術」でして、パネルディスカッション「浸潤性縦隔腫瘍に対する手術Video」にて発表した内容です。誠に光栄なことだと感じております。

https://jp.jssoc.or.jp/modules/research/index.php?content_id=15

 胸腺腫は緩徐に増大する悪性腫瘍ですが、播種(主に胸膜播種)をきたした病態は比較的稀で治療方針に迷うことも多いと思います。名古屋大学は以前から多くの胸腺上皮性腫瘍の症例を診療しており、IVa期の治療経験も豊富です。胸腺腫の胸膜播種に対する外科治療としては、可及的な播種巣切除が一般的ですが、名大では先代の横井香平教授の時代より耐術可能と判断した方には、胸腺摘出+胸膜肺全摘術(extra-pleural pneumonectomy: EPP)を施行しておりました。今までに10例のIVa期胸腺腫症例に対してEPPの経験があり、90日以内死亡はなく5年生存率83%と良好な成績です。播種切除症例を含めた名大での成績は中村彰太先生がまとめておられますので、是非ご一読ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30725276/

 病態としては胸膜の疾患ですので、可能であれば肺実質を温存できれば、なおよいかなと考えています。悪性胸膜中皮腫(MPM)がそうであったように、EPPではなく胸膜切除・肺剥皮術(pleurectomy/decortication: P/D)で肉眼的に切除できる症例は、P/Dbetterかなと思います。

 

 なお、この発表の手術ビデオは小生ではなく、福井高幸先生(現:愛知医科大学呼吸器外科教授)が執刀されたものを提供いただいたものです。ビデオライブラリーへの登録は福井先生にもご許可を頂いていることを追記いたします。(私も1例だけですが過去に執刀経験はありますよ)。たまたま私が発表した内容ですが、先代の横井先生をはじめ、多くの諸先輩方のご経験が評価されたものだと考えております。この場を借りてお礼申し上げます。

名古屋大学 呼吸器外科 福本紘一

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 第122回日本外科学会定期学術集会(於:熊本)のサージカルフォーラムで発表した報告『日本から世界へ提案する「気胸手術の人工物による被覆法」 』が優秀演題として選ばれました。この演題はPATCH Study Most Preventable surgical option to reduce primary spontaneous pneumothorax patients' postoperative recurrence: A prospective cohort study)という自然気胸を対象疾患とした多施設前向き観察研究の取り組みを発表した報告です。

 自然気胸は若者を中心に発生する疾患で、突然の呼吸苦や背部痛を伴う呼吸器疾患です。良性疾患ですが、何度も再発することがあります。保存的治療で治らない場合や、保存的治療で再発を繰り返す場合に手術の対象となります。気胸の責任病変であるブラ(嚢胞部)を切除することで再発率を低下させる効果が期待できますが、手術をしても再発することがあります。我々呼吸器外科医は再発予防効果の上乗せを期待して、ブラ切除に加えて臓側胸膜や壁側胸膜へ追加処置を加える手法を編み出してきました。しかし、この追加処置の方法は施設間でまちまちであり、日本と世界でも追加処置のトレンドがかなり異なるということがわかっています。

 本研究は、日本で行われている自然気胸手術のリアルな状況を検討・分析することを目的に開始された研究で、術後再発率を主要評価項目としています。20233月現在、目標症例450例の登録は終了しており、フォローアップ期間にはいっております。主要評価項目の術後2年目まで全例が達成するのが20243月の予定です。この試験を通じて、自然気胸の術後再発率に関する最新の知見や最も予防効果があると考えられる術式への理解が深まり、人生における重大なライフイベントを気胸によって損なう若者が一人でも少なくなることを祈って日々研究を続けております。

 最後になりましたが、本試験は全国で24施設の協力を得て遂行しております。試験を始めるにあたって参加ご施設様への声掛けに奔走していただいた名古屋大学 呼吸器外科教授の芳川豊史先生、愛知医科大学病院 呼吸器外科教授の福井高幸先生、データマネジメント業務を担っていただている予防医学 久保陽子様、日々の忙しい診療の中、本試験に賛同しご協力いただいている各施設の先生方・CRC様・ならびに患者様とそのご家族に厚く御礼申し上げます。

 名古屋大学 呼吸器外科 門松由佳

2023年3月福本先生呼吸器外科便り写真.JPG