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新着情報

2020.11.16

名大呼外便りNo.9:名大での手術手技トレーニングー坪内秀樹

名大での手術手技トレーニング:CALNA (Clinical Anatomy Laboratory NAGOYA)

-患者さんのために安全かつ確実な準備をする-

 これまで、献体を用いた教育は医学部学生に対する教育としての役割が第一でした。しかし、手術が高度になるほどその根底として解剖学的知識が不可欠となります。また、高度な手術では若手外科医にとって執刀機会は限られてくるため、手術のトレーニングを受けることも難しくなります。日本では2012年に日本外科学会と日本解剖学会のガイドラインが発表され、献体を用いた外科手術修練CST(Cadaver Surgical Training)が可能となりました。CSTでは献体を用いて実際の手術を行うことができます。若手外科医にとっては、日頃の手術で生じる解剖学的な疑問点をゆっくり指導を受けながら解消できることや、初めて執刀する術式があれば、そのシミュレーションを手術さながらの状況で行うことができ、非常に有益と考えられます。名古屋大学ではClinical Anatomy Laboratory Nagoya(CALNA)というプログラムでCSTを行うことが出来るので、今回はそのご紹介と私の体験談を載せさせて頂きます。

図1:CALNA本部と解剖室

 CALNAでは各個人の状況に応じたトレーニングを行うことができます。呼吸器外科医になりたての方にむけた開胸での肺葉切除など標準的な術式から、心嚢内の解剖の確認や気管支や大血管の形成、TMA(Transmanubrial osteomuscular sparing approach)など稀なアプローチなど実際行うことができます。さらには心臓外科の協力を得て、肺移植のトレーニングも行うことが可能です。献体の固定方法も私が学生実習を受けた10年以上前とは異なっており、少しずつ生体に近い状況に出来るようになりました。呼吸器外科としては2018年9月に第1回トレーニングを中村講師のマネジメントの下、これまでに3回開催され、名古屋大学及び関連施設の先生方の延べ42名が参加してきました。

私はこれまで2回参加し、1回目はTMAや心嚢内血管処理などの拡大手術のトレーニングを行いました。臨床ではこれまで学会やセミナーで見たことがあるだけで一度も経験したことのない術式や手技でしたが、いつか実臨床で出会うであろう日に備えて経験をしてみたいと思い参加しました。非常に有意義な経験が出来たと思っています。

2回目は胸腔鏡下肺葉切除 (VATS Lobectomy)を初めて行うに際して、その直前にVATSのトレーニングを行うことが出来ました。トレーニングでは胸腔鏡鉗子、電気メス、超音波凝固切開装置、自動縫合器などすべて実際の手術で使用する器械を用いてVATS Lobectomyを行いました。過去に全身麻酔をかけた大動物を用いたトレーニングも経験しましたが、解剖の違いや胸郭の大きさの違いなど違和感がありました。CSTでは実際の手術と同じ状況で、指導医の助言を貰いながら一つずつ手術の手順をゆっくり確認しながら行うことができ、その効果があってか安心して手術当日に臨むことができ、VATS Lobectomyを無事完遂することができました。

昨今のコロナ禍のため、しばらくCALNAを開催することが出来ませんでしたが、今後は状況を見て少しずつ再開していきたいと思っております。若手代表として私も「献体を用いた呼吸器外科手術トレーニング」事務局として芳川教授、中村講師とともにみなさんのトレーニングを微力ながらお手伝いさせて頂きます。身近なところでこのようなトレーニングを受けられることも名古屋大学呼吸器外科の魅力の一つではないかと思い、今回CALNAの活動をご紹介させて頂きました。

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図2:トレーニング風景

お問い合わせ:献体を用いた呼吸器外科手術手技トレーニング事務局

中村 彰太、坪内 秀樹

名古屋大学 呼吸器外科

E-mail: 中村 shota197065@med.nagoya-u.ac.jp

坪内 htsubouchi@med.nagoya-u.ac.jp