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新着情報

2020.09.14

名大呼外便りNo.7:基礎研究者としてのキャリア-細野祥之

初めまして、愛知県がんセンター研究所・がん標的治療TR分野でユニット長を務めさせていただいております細野祥之と申します。卒後4年ほど臨床医をした後、呼吸器外科に入局させていただくと同時に基礎の教室で学位研究を始め、そのまま基礎研究者に転身しました。その後は完全に基礎研究者としてのキャリアを積んでまいりましたが、呼吸器外科医であった縁もあり現在でも医局と交流させていただいており、また呼吸器外科の医局員である伊藤俊成先生の学位研究にも携わらせて頂いております。この様な異質なキャリアであるにもかかわらず、未だに医局に関わらせていただけていることに感謝させていただくとともに、芳川教授をはじめ、医局員の先生方が作り出してこられた寛大で多様性を良しとする呼吸器外科の医局にこの場をお借りして御礼申し上げます。

私自身はヒトの細胞株をはじめ、マウス、そしてゼブラフィッシュ等の実験動物を用いた種横断的な手法と、次世代シークエンスの技術を組み合わせながら、肺がんをはじめとした悪性腫瘍全般の研究を行っています。「なぜがんになるのか」という腫瘍生物学の本質に迫りながら、その過程でがん治療や予防につながるような治療法の開発に携わることが出来ればと考えています。ゼブラフィッシュは私が留学中に出会い大変感銘を受けた実験動物ですが、化合物のフェノタイプスクリーニングなどの臨床寄りの研究はもちろん、その細胞数の少なさや腫瘍形成の早さを、現代の研究に必要不可欠な次世代シークエンス技術と組み合わせることで、より本質的ながん研究が出来るのではないかと日々浅慮しております。研究内容の詳細はここでは省きますが、興味のある先生方は私の留学中の論文をご一読いただければ幸いです(ref.1)。

今回の呼外便りは若手の先生向けとのことで、最後に1点だけぜひ留学についてお話しさせて下さい。この先もし留学する機会がありそうでしたら、ぜひ長期間の留学をしてみてください。留学中は日本では遭遇しない経験を多く味わえますが、私が留学してよかったと思える最たることは留学先のボスを知れたことです。アメリカの有名なボスは皆、「人の上に立つのはこういう人なのだ。こういう人が一流というのだ」と実感させてくれるような人物でした。研究においてはもちろん、人の面倒見においても、人柄も、家族も、すべてにおいてそう思わせてくれます。今でも、いい事があったとき、悪いことがあった時には、では次に彼ら彼女らならどうするのか?とつい考えてしまいます(図1)。仕事においても家庭においてもです。芳川教授は非常に海外のボスに似た雰囲気をお持ちで、それもあってついご厚意に甘えて色々とご相談に乗っていただいてしまいますが、それでも留学先での素晴らしいボスとの出会いは何事にも得難い経験になると思います。

1. Hosono Y, Niknafs YS, Prensner JR, Iyer MK, Dhanasekaran SM, Mehra R, Pitchiaya S, Tien J, Escara-Wilke J, Poliakov A, Chu SC, Saleh S, Sankar K, Su F, Guo S, Qiao Y, Freier SM, Bui HH, Cao X, Malik R, Johnson TM, Beer DG, Feng FY, Zhou W, Chinnaiyan AM. Oncogenic Role of THOR, a Conserved Cancer/Testis Long Noncoding RNA. Cell. 2017 Dec 14;171(7):1559-1572.

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図1:留学先のArul Chinnaiyan Lab (上段左から4人目がボスのArul Chinnaiyanです)