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新着情報

2020.08. 6

名大呼外便りNo.3:現在~近未来の外科治療に真に役立つ研究へ-中村彰太

最近、ようやく雑誌掲載にこぎ着けた2論文を紹介させていただきます。

  1. 胸壁浸潤肺癌例に対するナビゲーション手術の臨床展開に成功

- 術前導入療法前の腫瘍存在部位と理想的な切除ラインを見ながら手術できる! -

J Thorac Dis 2020;12(3):672-679. doi: 10.21037/jtd.2019.12.108

術前のCT画像データから、実際の胸腔鏡を操作して腔内を観察しているかのような仮想胸腔鏡画像を得る方法を開発しました。このシステムでは鉗子の先端部も仮想画像上に示すことができ、導入療法後に手術を予定した胸壁浸潤肺癌例に臨床応用できています。導入療法前の腫瘍の正確な範囲と理想的な切除ラインを仮想胸腔鏡画像に示すことができ、術中には胸腔鏡の動きに連動して実際の胸腔鏡画像と同時的かつ並列してこれら仮想画像の表示が可能となり、これを用いて十分な切除マージンの確保が可能となりました。本ナビゲーションシステムの施行例を論文サイトから視聴できますのでよろしければご覧ください(http://jtd.amegroups.com/article/view/36567/html)。

 本研究は名大・情報学部・森健策教授の教室と共同で行ったもので、現在では下記に紹介するマイクロCT研究も含め多くの研究でコラボレーションしています。本研究はそのさきがけ的なもので、科研費補助金(若手B)により助成を受けたものです。

2.マイクロCTを用いた肺癌の組織学的診断:Lepidic growth patternsの診断に成功

Nagoya J. Med. Sci. 82. 25-31, 2020 doi:10.18999/nagjms.82.1.25

試料の内部をμmオーダーで非破壊的に観察できるマイクロCT装置が開発され、顕微鏡的な断面画像や三次元画像を得ることが可能となってきました。切除肺をマイクロCTで撮像し、得られた画像で組織学的標本と同程度の所見が得られれば、病理組織診断の代用とできるかもしれません。また、そのようなQualityで生体の一部が撮像可能となれば、肺癌治療前に行われてきた気管支鏡下生検や開胸肺生検といった侵襲的な検査の省略も夢ではない、と考えて我々は肺癌切除標本をマイクロCTで撮像し組織学的診断を得られるよう挑戦してきました。マイクロCTにより得られた肺癌を含む組織の画像では、HRCT画像上GGO病変として認められた部分を肺胞壁の厚い部分として捉えることができ、肺胞壁の厚い部分が病理学的に正確にlepidic growth patternを反映していることも示すことができました。生体での撮像は未だ不可能なマイクロCTですが、従来のHRCT画像は病理組織像とどう対応して何をみているのかを明らかにする橋渡しの役目があり、この研究を発展されるために複数の医局員でこの課題に挑戦し続けています。(科研費補助金助成課題、新学術領域「多元計算解剖学」公募班)

手術ナビゲーション分野のトップランナーである当科芳川教授の指導のもと、多くの医局員がこのイノベーション分野にとり組み始めており、私が取り組んできた研究もさらに開発形態を上げて次のステップへと進んでおります。現在~近未来の外科治療に真に役立つ研究に情熱を注げる若い呼吸器外科医を募集しています!