北欧の介護事情について
子供 「先生こんにちは〜!いますか〜?」
御手洗先生 「お、久しぶりだな、今日はどうした?」
祖父 「おー、先生、やっとかめに開店でないか。
どこへ行っとらした?」
御手洗先生 「あ、丸田さんのじいちゃん、ご無礼してて
すいません。最近、変わりないですか?」
祖父 「あんたがおらなんだで、わしがご近所の
じさまだのばさまだのの、あっちがいかん、
こっちがいかんいう話をずーっと聞かされて、
まあ、往生こいたわ
子供 「あたしのクラスの子も、先生いなくて、学校医
さんがおじいちゃんみたいな先生になったから
ぶーぶー言ってるよ。」
御手洗先生 「おいおい、そんなこと言っちゃいけないよ。いや、
長い事留守にしてすみません。ちょっと北欧の
地域医療の視察に行ってたもんですから」
祖父 「北欧っていや、あんた、サンタクロースの出る
ところかい」
子供 「おじいちゃん、サンタさんは幽霊じゃないよ。
先生、トナカイさんのそりで往診してきたの?」
御手洗先生 「ちょっとちがうんだけどなー。」

























施設のホール内で
クリスマスの飾りつけ。
どうもこんにちは、御手洗です。おてあらいではなく、みたらいです。そこのところよろしくお願いします。
ずっと休診で申し訳ありませんでした。何をしてたかというと、おてあらいに行ってました。というのは冗談で、実は北欧に研修に行ってました。 北欧は良かったな・・・。帰ってくるのが名残惜しかったけど、帰ってきました。
北欧は高齢者が本当に幸せそうでしたね。
それでは少し私が見てきた北欧における地域の医療や排泄ケアについて報告しましょう。
☆北欧の福祉の理念

色々見て、思ったことは、北欧の福祉の根本には 「人を人として大切に扱うこと」 という思想が徹底しているな、ということで、 高齢者の尊厳は当然のことながら、介護者の尊厳にも充分配慮していることは大いに参考になりました。 とはいえ、北欧も昔からずっと福祉が充実していたわけではなく、以前は日本と同じ問題を抱えていたそうです。
しかし国民と医療者の努力により、今の制度が作り上げられてきたことは、日本の僕たちにとっても関心のあるところです。
もちろんすべてが素晴らしいわけではなく、色々欠点もあるかとは思いますが、 その中で特に今後の日本の介護、福祉、医療のためになると私が思ったことをお話しします。

フットケアサービス
足の手入れをする事は
「歩く」行為には重要です。

北欧の高齢者介護の三原則は次の三つが基本です。
(1) 生活の継続性の尊重 (2)自己決定の尊重 (3) 自己資源の活用

簡単に言うと、それまでの生活、環境を大切にし、老いても自分の生き方を自分で決め、周囲もそれを尊重し、自分でできることはたとえ時間がかかっても自分でするということです。
ホームヘルプサービスでも、身体機能がかなり低下した人に対しても、自力でできることは時間がかかっても本人に任せて、傍らでヘルパーがじっと見守っています。また高齢者が自分の能力を最大限利用できるように補助器具が様々に工夫され住宅改造もあちこち行われています。

☆介護者と要介護者の良い関係

北欧の介護の仕方を見ていて良いと思った所は、やはり職員が自らの仕事に誇りと自信をもって仕事をしている所でしょうか。
それは本人の仕事に対するモチベーションもさることながら、介護者を守る制度もあるからなのです。

例えば、豊富な介護機器があったり、介護方法や介護機器の研究で、高齢者介護ではよく課題となる腰痛問題はほとんどありません。
もし職員に腰痛があれば管理者の責任問題になります
また清潔な環境で仕事することも重要と考えられているので、 介護に対する3K(きつい、汚い、危険)のイメージはもう流行らないでしょう。
らくちん、きれい、安全。これが次世代のキーワードです。
介護者が持てる時間的、精神的なゆとりは結果として、要介護者一人一人に対し、余裕を持って人間的に接することを可能にしていくのです。

☆理想の排泄環境

北欧の排泄の現場では まず大原則として排泄は自分がコントロールします。
排泄したい時に介助に来てもら い、たとえおむつ交換であってもトイレで行います。
また、おむつのつけっぱなし廃止はもちろん、驚くべきことにスウェーデンでは尿道留置カテーテルが15年前から廃止されています。
排泄の自立という意識のない人に対して排泄行為を再獲得していくことより、最初から自立を失わせないという姿勢を痛感しました。しかし、これらも介護やコミュニティケアが充実してきたからこそ可能になったことで、要介護者の問題のみならず周囲の環境の大事さを痛感しました。

日本も北欧のいいところを取り入れて、いい社会を作っていけるといいですね。
また、他の国に視察にいった際は報告させていただきますのでそれまでお楽しみに。





















プレイルームで
おしゃべりしながら
趣味の時間

子供 「すっごーい。老人ホームっていってもこの人たち なんかお洒落なおばあちゃんたちだよねえ」
祖父 「年寄りだいっても、何でも人にやってもらおう 思っとったらいかんなあ」
御手洗先生 「外国が全部良くて真似しましょうというのじゃ ないんだけど、体が弱くなってもちゃんと人生の 先輩として、尊敬しながら、介護できるといいよね」
祖父 「そういや、先生、あんた長い事、のれんしまっとらせたで一度帰国報告会でもしよまい。みんなに 帰ってきたで、って知らせなかんがね。診察再開 するでって言ったら、みんな相談してもらいたい事、 よーけあるに。」
子供 「賛成―!先生、お土産のお菓子とか 食べたいー!」
御手洗先生 「オッケー。じゃ、今度の日曜日にでも報告会 しましょうか 」
祖父 「よし。じゃ、うちのばあさんにも言ってちゃっと みんなに声かけとくわ。なんぞ、食べるもんでも 持ち寄らせるで。」
子供 「わーい、わーい、楽しみ―。友達も連れてきて いい?」
御手洗先生 「いいよ。じゃ、丸田さん、すみませんけどよろしくお願いします。」
祖父 「わかった。ほんじゃ、今日はこれでご無礼するわ。さ、帰るぞ。」
子供 「はーい。じゃあ、ばいばい、お手洗い先生」
御手洗先生 「み・た・ら・いだっつうの!」



























このページは、名古屋大学医学部在宅管理医療部の
「北欧での在宅医療・在宅ケア」の取材に基づき構成しました。