今まで多数のご質問を頂いた中から
よくある質問をピックアップいたしました。

 
「排尿日誌」は、どんなことに注意して記入するのですか?
 
排尿日誌」では、排尿時刻と排尿量を記録し、さらに尿失禁の有無、失禁の状況、失禁量などを記録することで、1回排尿量、1日尿量(昼間尿量、夜間尿量)、排尿回数、失禁回数などの実際の状況が把握できます。(詳細はこちらでご覧下さい。)
排尿の記録は可能であれば3日間程度行うことが理想です。難しい時は1日でも良いです。 
排尿量は目盛り付の計量紙コップ(自分で作っても良いですね)、あるいは採尿器により行い、尿失禁量は濡れたオムツの重さから乾いたオムツの重さを差し引いて計算しますが、そればむずかしい時はおおまかに少量、中等量、多量など、あるいは下着が湿る程度、下着が濡れる程度、着衣まで濡れる程度、布団まで濡れる程度などの表現でも構いません。 
日誌をつけることにより、対処法、治療法などに有用な情報が得られます。従って、病院にて受診される際は、「排尿日誌」を持参すると良いでしょう。
 
膀胱の老化ってなに?
 
人の身体は、加齢によって変化しますがもちろん膀胱機能にも変化が起ります。
一般的には膀胱が過敏になり、蓄尿時(膀胱に尿が溜まっていく時)に膀胱が勝手に収縮してしまいます。すると急に尿がしたくなりトイレまで我慢できず漏らしてしまうという現象がおこります。逆に、膀胱の収縮力が弱まって、尿が出にくくなることがあります。
 
子宮癌で手術をしました。その後、尿漏れで困っています。
 
子宮や直腸などの手術後であると「溢流性尿失禁」が考えられます。手術により膀胱へつながる神経が障害されることがあります。
この場合、膀胱が上手に収縮できず膀胱内に多量の尿が残ってしまい、膀胱から尿が溢れてしまうのです。
このような状態を放置すると、他の機能障害が起こる可能性がありますので必ず専門医にかかることが必要です。
 
トイレでの排尿に時間がかかります。下腹部を押すなどしてみましたが、尿量が少なく、残尿が多いです。お医者様から導尿(カテーテルで尿をとる)を試すように言われましたが、必要でしょうか?
 
尿閉(まったく尿が出ない)になった場合には、一時的に尿道カテーテルを留置する必要があります。しかし、例えば男性の場合、前立腺肥大症のように、もとに何らかの病気があり尿が出ないのであれば、まず、それらの治療を検討するべきだと思います。
尿が出ない方への原則的な管理方法は、留置カテーテルよりも、「清潔間歇導尿」を行うことが望ましいです。1日に数回(必要時)、カテーテルを膀胱内に挿入し、溜まった尿を排出し、排尿出後はカテーテルを抜くという方法です。こちらのほうが、感染の起こる危険性は圧倒的に低く、自分で排尿ができるようになるケースもあります。
 
清潔間歇導尿について知りたいのですが…。
 
清潔間歇導尿は、さまざまな理由で膀胱内の尿がうまく排出できない時に、必要に応じ、尿カテーテルを膀胱内に挿入し、溜まった尿を排出する処置です。
留置カテーテルと違って排尿出後はカテーテルを抜きます。従って、留置カテーテル法に比べ、感染性が低く、簡便性があり、ご自身でも、ご家族の方でも在宅で行うことが可能です。保険上認められており、導尿に必要なカテーテルや消毒などの薬剤も病院で処方されます。
具体的な導尿の手順は、医師や看護師などからの指導が受けられます。
 
前立腺の摘出手術後、尿失禁となり困っています。
 
前立腺摘出後の尿失禁には、主に2つの原因が考えられます。ひとつは手術による尿道括約筋の障害、もうひとつは膀胱機能の問題です。 尿道括約筋は一部、前立腺の尖端をとりまいているため、前立腺全摘出においては、程度の差はありますが多少は障害を受けます。
しかし、大多数の場合、尿失禁は起らないか、あるいは手術後短期間で改善します。ただし、前立腺の大きさ、尿道への浸潤度によっては、尿道括約筋の障害される割合は大きくなり、手術後尿失禁が残る場合があります。 
もうひとつの要因である膀胱機能については、手術後に膀胱の広がりが悪くなることがあり、膀胱に尿が溜まると膀胱内圧が上昇するために尿が漏れやすくなる場合があります。通常この現象は一時的なもので時間とともに改善します。また、あまり困るようであれば診療医と相談したり、排尿障害の専門医への受診をおすすめします。
 
骨盤底筋体操を行っても、尿漏れが改善されません…。
 
尿失禁といっても原因はさまざまで適切に対処するためには、まず尿失禁のタイプを確認することが重要です。 
一般的には「腹圧性尿失禁」に対して、骨盤底筋体操が有効であるとされていますが、効果の現れ方には個人差があります。続けて行うことで、早い方では1ヶ月目から効果が出てきます。しかし、そこで止めずにずっと習慣として続けることが大事です。
2〜3ヶ月続けても効果の現れない方は、間違ったやり方をしているか、体操より他の治療法が適当な可能性があります。このような時は、一度泌尿器科を受診してみて下さい。
 
痴呆でほとんど尿失禁をしている方でも、時々「トイレに行きましょう。おしっこ出ますか?」と、トイレ誘導をすると排尿できます。こういう方は尿意があると言えるでしょうか。
 
尿意というのは空腹感のように、わずかであっても感じることがあるでしょうし、何かで誘発されて「その気になる」ということも十分にあると思います。
トイレにお連れし、介助をすれば「尿意をもよおして、尿器に向かった時に膀胱・尿道が自律神経の働きで排尿を始めることができる」という場合、その点では膀胱に尿が溜まっているという知覚はある、つまり、「尿意がある」ということになると思います。
しかし、自分から排尿がしたいなどの意思表示をする、という意味では「尿意はない」ということになります。その他、言葉では尿意があると表示できなくても、膀胱付近をいじりだしたり、ソワソワしたりと、尿がある程度溜まってきた時に特有のサインを出す方がいます。この場合、「尿意はある」と考えて良いのではないでしょうか。
 
子供が夜尿症(平均1週間に2〜3回)があります。小学校高学年なのでこのまま様子を見て良いのか心配です。
 
もし、夜尿症の他に、昼間にも尿漏れがあるのでしたら、先天的な異常の有無も含めて、一度、泌尿器科を受診されるほうが良いと思います。昼間の尿漏れがない場合の夜尿症については、通常は成長と共に自然に消失します。しかしながら、最近では成人の夜尿症の報告もあり、一概に言えないのが難しいところです。
原因としては@「膀胱の尿を溜める力が弱い」、A「夜間に特に尿の作られる量が増えてしまう」、B「睡眠パターンの問題」などが考えられます。@であるのかAであるのか、いずれにしても、まずは「排尿日誌」を記録して下さい。これは、生活指導にも役立ちます。Bについては、大人の身体では尿が溜まった時と睡眠のリズム(浅い眠りと深い眠り)のタイミングが調整されるのに対し、子供の睡眠パターンではタイミングよく、浅い眠りと尿量が一致しないことがあると言われています。
以上いずれにしても、腎臓、膀胱、あるいは膀胱の機能を調整している神経などに問題がないのであれば気長に待つようにします。しかし、薬が使えるようであれば、使いながら、大人の体になるのを待ってもよいかと思います。
 
深酒の翌日は、5分おき位の頻度でトイレに行きたくなり、残尿感が消えません。
 
飲酒に関連した症状の発現で考えられるのが、いわゆる「慢性前立腺炎」といわれる症状(近年では、「慢性骨盤底疼痛症候群」とも呼びます)にあたるかと思います。これは、原因ははっきりしていませんが、前立腺に慢性的な炎症があり、症状としては、残尿感、頻尿、腰痛、会陰部痛、恥骨部痛などを生じます。また、勃起障害なども出現することがあります。
治療としては、感染の起因菌が、特殊な菌でなければ、一般的な抗生物質を何日か使用たり、前立腺疾患の治療薬などの使用をしたりします。慢性前立腺炎は、特に放置して悪い病気ではありませんが、気になると非常に厄介な症状ではあると思いますので受診、治療をお勧めします。