名古屋大学大学院 医学系研究科 機能構築医学専攻 機能組織学

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教室紹介

教室代表からの挨拶

木山博資
教授 木山博資 (Hiroshi Kiyama)
挨拶

2011年に木山が着任してから10年が経過しようとしています。2020 年は春先から新型コロナウイルスの感染拡大により、研究、教育、学会活動などすべてのものに自粛が要請され、社会が一旦止まってしまったかのようになりました。一方で、ICTを活用した遠隔会議や授業システムが急速に普及し、新しい時代の到来を肌で感じつつあります。私もここ数ヶ月NUCT, Teams, Zoom, WebExなど次々と新しいツールを使わねばならなくなり、結果としてICTリテラシーが随分向上したと実感しております。当研究室での研究活動についても、大学の行動指針に従い、実験動物飼育の規模縮小など困難な状況にも直面しました。また、学部学生の登校が禁止されているため、教育の資料(コンテンツ)を遠隔用に再構築する仕事が増えたことなどに結構時間が割かれています。早くこのCovid-19禍が終息に向かうことを祈っております。
 ここ数年の研究室の状況ですが、西尾康二助教が退任され、小西博之が助教から講師に昇任、玉田宏美、永田健一 の両氏を新たに助教として迎えることができました。
 桐生寿美子准教授を中心に神経再生の分子メカニズムの解明のテーマで多くの研究を展開してまいりましたが、引き続きDINEをはじめとした神経再生関連分子の機能解析を、損傷神経細胞特異的に発現のOn/Offを調整できるATF3-Creドライバーマウスなど新たなツールを用いての解析が進んでいます。
 また、小西講師のグループは脳内のミクログリアから脳常在性のマクロファージの機能へと研究が進展しております。
 また、玉田助教は消化管のICC細胞研究から、消化管神経系の再生、さらに腸間膜のマクロファージへと研究が広がっています。
 今年4月に加わった永田助教は以前からDINEの研究を桐生とやっておりましたが、新たに、データ サイエンスのアプローチを神経再生の分野に持ち込んだ新しい研究の方向を模索しております。
 先日名大医学部の150周年行事に関連して医学部の学友時報に第二解剖の150年を振り返った原稿を書かせていただきました。名大解剖教室の源流である奈良坂源一郎先生   (教室の前の廊下に胸像が置いてあります)からはじまり、名古屋帝国大学になってから
第二解剖として戸苅近太郎 初代教授(1933-1960)、原 淳 二代教授(1960-1971)、
空席(1971-1981)、星野 洸 三代教授(1981-1996)、杉浦 康夫 四代教授(1996-2010)、と引き継がれてきた歴史に再び接する機会がございました。先達が作り上げて来られた第二解剖の重厚な歴史に接し、身の引き締まる思いがいたします。なかでも、約40年にわたって続いている「解剖トレーニングセミナー」は医系教員の解剖のトレーニングの場として、昨年までに延1000名にいたる全国の解剖系教員が参加し、日本の解剖学教育に大きな貢献をしていることは本教室の誇りでございます。これも医学系研究科や不老会の会員のみなさま、さらに日本解剖学会のご理解の賜物であると心より感謝しております。

さて、来年2021年の3月28日から3日間名古屋国際会議場で、第126回日本解剖学会総会・全国学術集会を名古屋大学が主催することになり、その大会頭を木山が仰せつかっております。本大会は、7年ぶりに日本生理学会大会との合同大会となり、通常より大きな大会となります。昭和42 年に山田和麻呂教授(名大第三解剖)が会頭として主催された第72 回日本解剖学会以来の54 年ぶりの名大主催となります。本年春からのCovid-19禍は未だ収束しておらず、本大会がどうなるかは予断を許さないところもございますが、教室員一同開催に向けて努力する所存です。

                                         令和2年6月 木山博資



機能組織学/第二解剖学教室の沿革

解剖学教室の沿革をたどれば、明治4年の名古屋落仮医学校設立まで遡る
大正6年浅井猛郎教授の就任によって第一講座が開設
大正8年佐藤尾一教授が第二講座開設
昭和6年、国立名古屋医科大学となる
昭和7年戸苅近太郎教授が就任

戸苅教授の研究は、卵巣、黄体の組織発生や甲状 腺、上皮小体、副腎、胸腺など諸内分泌腺の組織発生および生後発育にわたる広範なものであり、杉山鉦一(元第一講座教授)、原淳(元第二講座教授)、伊藤 隆(北海道大学名誉教授)、山田和順(名古屋市立大学名誉教授)、永津郁子(前藤田保健衛生大学教授)、星野洗(元第二講座教授)ら多くの人材を育て た。昭和28年に上梓された戸苅近太郎著・組織学(南山堂)は本学での講義実習から生れた教科書である。その後改定が重ねられ、伊藤隆(北海道大学名誉教授)に引き継がれている。

昭和35年、原淳教授が着任し、上皮小体の機能的構造の研究を進めた
昭和46年、原教授定年退官後10年の間教授空席
昭和56年から平成8年まで星野洸教授が担当
平成8年、杉浦康夫教授が着任し、疼痛メカニズム解明の研究を進めた
平成12年に大学院重点化に伴って講座名が改称され、機能組織学となる
平成22年、杉浦康夫教授定年退任
平成23年、木山博資教授が着任
2020年 1月    

名古屋大学医学部学友会時報
     

研究内容

(1)神経再生メカニズムの解析

(i)神経再生関連遺伝子探索

神経再生のメカニズムを解明し、損傷神経の再生や神経変性疾患の進行抑制への応用を目指しています。末梢神経は再生しますが、中枢神経は再生しにくいとされています。そこで、再生可能な末梢神経の損傷モデル動物を用いて、その再生現象の全貌の解明を目指します。各種のゲノミクスやプロテオミクスのスクリーニングの手法を用い、今までに既知・未知の数多くの分子が神経損傷後に発現し、様々な機能を発揮していることを明らかにしました。これらのスクリーニングで得られたパーツ(分子)を組み合わせてゆくことで、神経再生の様子が徐々に浮かび上がってきつつあります。

(ii)遺伝子発現の統御機構

実際に損傷を受けた神経細胞が再生する過程では、実に多くの分子が複雑な相互作用をして再生へ向かいます。損傷刺激に応答して多くの遺伝子が同期して発現を開始します。したがって、このような複数の神経再生関連遺伝子の発現をまとめて制御しているメカニズムが生体にあるに違いありません。いわば、神経再生の最初のスイッチを入れる遺伝子です。また、これとは別に神経再生に必要な複数の発現を通常OFFにしている逆のスイッチ(mi-RNAなど)の存在も分ってきています。このような神経再生に関わる起動スイッチやOFFスイッチ分子の発現を制御できれば、効率よく神経を再生へ向かわせることができます。現在までに、いくつかの神経損傷特異的な転写因子(スイッチ)や、それらのスイッチをOFFにしているmi-RNAを同定しており、この辺りのメカニズムを応用し治療へとつなげて行きたいと考えています。また、それらスイッチ遺伝子の発現特性を活かし、神経細胞が損傷を受けた時にのみ神経細胞が蛍光標識されるマウスや損傷神経細胞特異的にCreリコンビナーゼが発現するマウスを作成しています。これらのマウスは、個体レベルでの再生研究に非常に有効なツールになると期待しています。

(iii)神経−グリア相互作用

最近、神経細胞に異常がなくともその周辺のグリア細胞に異常が生じることにより神経細胞が変性に至ることが知られ、神経細胞非自律的な、周辺の環境に依存する神経細胞死が起こることが明らかになりました。神経損傷後の修復過程においてもミクログリアやシュワン細胞など多くのグリアとのインタラクションがダイナミックに展開されます。特にミクログリアは形態変化をしながら脳内を移動し、多くの免疫系のメディエータ分子を発現していることから、その機能の解明が急がれます。このようにグリア−神経の相互作用を分子レベルで理解することをめざしています。これらは、損傷神経の修復のみならず、孤発性の神経変性疾患の原因解明や治療法につながる研究であると位置づけています。

(2)異常疼痛発症メカニズムの解析

神経障害性疼痛モデルマウスと後述の慢性ストレスモデルラットを用い、異常疼痛発生のメカニズムを研究しています。これらのモデル動物では、感覚伝導路である脊髄後角でミクログリアやアストロサイトが活性化することが分かっており、前述の神経-グリア間の相互作用が、この場合でも重要であると考えられます。それらのグリア細胞が活性化するメカニズムと活性化したグリア細胞が疼痛を引き起こすメカニズムについて分子レベルで解析しています。

(3)慢性ストレスや疲労を科学する

機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome)には慢性疲労症候群や線維筋痛症など多くの症候群が含まれますが、それらの原因はまだ分っていません。しかし、過度の疲労やストレスがこれらの疾患となんらかの関連が有ると考えられています。特に睡眠障害、過度の疲労感、疼痛が共通した症状として現れます。このような症状は生体内のいかなる変化により起こっているかを研究しています。ラットの慢性ストレスモデルを用い、神経系(脳と脊髄)、内分泌系(下垂体や副腎など)、免疫系(胸腺や脾臓など)、循環器系(心臓など)の臓器において、慢性ストレス時にどのような遺伝子の発現が変化しているかを解析しています。また、その変化により何が生体で起っているのかを研究しています。最近、下垂体の一部で細胞が崩壊していることをはじめ免疫系や内分泌系の器質的変化が生じていることを発見し、これらが脳を起点として生じていることが見えてきました。すなわち慢性的なストレスは、脳に影響を及ぼしそれにより神経・免疫・内分泌系の変調が生じているのではないかと考えています。これらの原因から症状に至る過程を分子の言葉で説明できるように研究を進めています。

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