慢性活動性EBウイルス感染症とは?

 慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active EB virus infection; CAEBV)は、EBウイルスに感染したTリンパ球、NK細胞が増殖し、臓器に浸潤して多彩な症状を示す難治性疾患です。

 発熱やリンパ節腫脹、肝脾腫、肝機能異常など伝染性単核症様の症状が遷延したり、繰り返し起こったりします。

概要 

 遷延あるいは再発する伝染性単核症様症状を示し、末梢血および病変組織に高レベルのEpstein-Barr virus (EBV) が検出される疾患である。EBV感染T細胞あるいはNK細胞がクローナリティを持って増殖、臓器に浸潤し、多彩な症状を呈する。

疫学

 報告は約25人/年、推定100人/年発症。

原因

 EBVは我が国では成人の90%以上が感染している普遍的なウイルスである。初感染では、軽微な上気道感染のことが多いが、一部で伝染性単核症と呼ばれる良性熱性疾患を来す。ごく稀に、通常B細胞を標的とするEBVが、T細胞あるいはNK細胞に潜伏感染し、感染細胞が増殖し活性化した結果、臓器に浸潤・高サイトカイン血症に伴う全身の炎症を生じ、慢性活動性EBウイルス感染症を発症すると考えられている。普遍的なEBVが、なぜ一部の個体でT細胞・NK細胞に感染するのか、またこれらの細胞がなぜ宿主免疫から回避するのか、未解明である。既知の先天性・後天性免疫不全症候群が否定された場合に、本疾患と診断される。本症は、日本、韓国、中国北部などの東アジアの小児・若年成人を中心に発症するが、疾患概念が認知されるに従い成人例の報告も増えている。これらの地域的局在から、遺伝的背景の存在が疑われているが、明確な知見には乏しい。EBV感染TおよびNK細胞を体内から排除できないことから、何らかの免疫不全を持つと推測されている。以上のごとく、本疾患は、単なる感染症ではなく、免疫学的異常を背景とした、リンパ増殖性疾患と位置付けられている。

症状

 EBVの感染したTもしくはNK細胞の臓器浸潤と活性化による高サイトカイン血症による症状をきたす。発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫、発疹、貧血、血小板減少、下痢、下血、ぶどう膜炎、冠動脈瘤。

合併症

 多臓器不全、脾機能亢進症、血球貪食症候群、悪性リンパ腫、白血病、DIC、消化管潰瘍/穿孔、間質性肺炎、心筋炎、種痘様水疱症、蚊刺過敏症。

診断

  診断基準はこちら。

治療法

 エトポシド、サイクロスポリンA、デキサメサゾンを用いた免疫化学療法は一定の効果があるが、感染腫瘍細胞の減少と炎症症状の軽快、すなわち寛解に至らしめるのは難しい。現在のところは造血幹細胞移植が唯一寛解の可能性がある治療法である。近年、骨髄非破壊的前処置を用いた移植により、良好な成績が得られつつある。急速に進行するものから長年変化のないものまで様々で、一部には自然寛解も見られる。概して予後は不良で、臓器合併症・急性転化(血球貪食症候群・悪性リンパ腫・白血病)により死に至ることが多い。

研究班

 「慢性活動性EBウイルス感染症と類縁疾患の疾患レジストリとバイオバンクの構築」

 研究代表者: 名古屋大学 木村 宏


種痘様水疱症とは?

 EBウイルスに感染したT細胞が増殖し、日光暴露部に浸潤します。水疱性丘疹を生じ、瘢痕・治癒をくり返します。

概要 

 Epstein-Barr virus (EBV) に感染したT細胞が増殖し、日光暴露部に浸潤する。水疱性丘疹を生じ、瘢痕・治癒をくり返す。

疫学

 不明、推定10-20人/年。

原因

 通常、B細胞を標的とするEBVが、T細胞(??タイプの報告が多い)に感染し増殖することが病因となると考えられるが、これらの細胞への感染機構は不明である。本症は我が国をはじめとする東アジアや、中央アメリカ・南アメリカ・メキシコに住むアメリカ原住民の小児・若年成人に多発することから、何らかの遺伝的背景の存在が考えられている。

症状

 日光暴露により、頬、鼻、耳介、下口唇、手背に種痘に類似した水疱性丘疹が生じ、瘢痕・治癒をくり返す。時に全身症状(発熱、リンパ節腫脹)を伴う。慢性活動性EBV感染症の部分症状として現れることもある。

合併症

 蚊刺過敏症、悪性リンパ腫。

治療法

 長期予後について不明な点が多く、標準的治療法は確立していない。重症例または悪性リンパ腫に進展したものは、化学療法・造血幹細胞移植が行われる。長期予後については不明な点が多い。自然寛解する症例も少なからずある一方、全身症状を呈し、慢性活動性EBV感染症に進展するものもある。

研究班

 「慢性活動性EBウイルス感染症と類縁疾患の疾患レジストリとバイオバンクの構築」

 研究代表者: 名古屋大学 木村 宏


蚊刺過敏症とは?

 EBウイルスに感染したNK細胞が、蚊刺刺激により皮膚に浸潤し、水疱形成、潰瘍、瘢痕化がみられます。発熱・リンパ節腫脹などの全身症状も伴います。

概要

 クローナリティを持って増殖しているEpstein-Barr virus (EBV) 感染NK細胞が、蚊刺刺激により皮膚に浸潤、水疱形成、潰瘍、瘢痕化がみられる。発熱・リンパ節腫脹などの全身症状も伴う。

疫学

 不明、推定10-20人/年。

原因

 通常、B細胞を標的とするEBVが、NK細胞に感染し増殖することが病因となると考えられるが、これらの細胞への感染機構は不明である。本症は、日本、韓国、中国北部などの東アジアの小児・若年成人に発症する。これらの局在から、何らかの遺伝的背景の存在が疑われているが、明確な知見には乏しい。

症状

 蚊刺部に水疱を伴う強い発赤腫脹を生じ、壊死・潰瘍・瘢痕化という経過をたどる。全身、リンパ節腫脹などの全身症状も伴う。慢性活動性EBV感染症の部分症状として現れることもある。

合併症

 種痘様水疱症、血球貪食症候群、節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型、アグレッシブNK細胞性白血病。

治療法

 長期予後は総じて不良であり、急性転化したものは治療抵抗性である。早期の造血幹細胞移植を勧める専門家もいるが、コンセンサスは得られていない。

研究班

 「慢性活動性EBウイルス感染症と類縁疾患の疾患レジストリとバイオバンクの構築」

 研究代表者: 名古屋大学 木村 宏


EBV関連血球貪食リンパ組織球症とは?

 EBV 感染を契機として、高サイトカイン血症が生じ、マクロファージの異常な活性化から血球貪食による汎血球減少や多臓器不全に至ります。通常はEBV初感染に引き続いて起こります。

概要

 Epstein-Barr virus (EBV) 感染を契機として、高サイトカイン血症が生じ、マクロファージの異常な活性化から血球貪食による汎血球減少や多臓器不全に至る。通常は EBV 初感染に引き続いて起こるが、既感染成人に発症することもある。

疫学

 約25人/年。

原因

 B細胞を標的とする EBV が、CD8 陽性 T 細胞もしくは NK 細胞に感染し増殖することに端を発し、高サイトカイン血症の結果、マクロファージを初めとするリンパ網内系の異常活性化、様々な臓器障害を来す。東アジアからの報告が多いため、何らかの遺伝的背景が推測されるものの、明確な知見には乏しい。

症状

 発熱、脾腫、貧血、血小板減少、白血球減少、汎血球減少。

合併症

 多臓器不全、DIC。

診断

  診断基準はこちら。

治療法

 軽症例はステロイドやサイクロスポリンAなどの免疫抑制療法が用いられる。重症例にはエトポシド、サイクロスポリンA,デキサメサゾンの3剤を用いた国際治療研究(HLH2004)が行われ、一定の効果を得ている。しかし、重症度の評価や再燃の予測が困難なため治療に難渋している。急速に進行し、いかなる治療にも不応性のこともあるが、免疫抑制療法もしくは上記の化学療法に反応するものは、完全寛解に至る。一部は再発・難治で、完全寛解のために造血幹細胞移植を要する。

研究班

 「慢性活動性EBウイルス感染症と類縁疾患の疾患レジストリとバイオバンクの構築」

 研究代表者: 名古屋大学 木村 宏


研究者名簿