泌尿器科の病気について
腎臓がん

腎細胞がんとは

腎臓がんは腎臓の実質より発生する腫瘍で、尿をつくる尿細管細胞より発生するがんです。がんが大きくなると血尿や痛みを伴うこともありますが、一般的にがんが小さいうちには症状がありません。最近では、健康診断の普及により超音波検査などで発見される小径腎臓がんも増加しています。腎臓がんの発生頻度は成人のがんの2~3%とされ、男性の方が腎臓がんになりやすいといわれています。

検査・診断

腎臓がんの診断は、超音波検査、CT、MRIなどの画像検査を組み合わせて行います。腎臓がんと鑑別する必要性がある良性腫瘍(オンコサイトーマ、腎血管筋脂肪腫など)もあります。造影剤を使用したCT、MRIを行うことで、大部分の腎臓がんの診断は可能です(中には診断が難しい腎臓がんもあります)。腎臓がんは、腫瘍の直径が4cm以下のものがStage 1a、直径が4~7cmのものはStage 1b、7-10cmものをStage 2a、10cm以上のものをStage 2bと分類します。Stage3は腎のまわりへがんの浸潤の強いものとされ、Stage 4はがんが他の臓器に転移、浸潤しているものを言います。腎臓がんでは腫瘍の大きさによりがんの悪性度が悪くなる傾向があり、7cmを超えたものでは手術後に転移が出現する可能性が高くなります。

腎癌の進展度分類
泌尿器Care & Cure Uro-Lo(メディカ出版) 2016、21(6)、p13(泉秀明、腎がんってどんな疾患)より転載

治療

腎臓がんには放射線療法や抗癌剤の治療は有効ではありません。転移を認めない腎臓がんであれば、手術治療が必要になります。小径腎臓がん(7cm以下)であれば、腎機能温存手術(腎部分切除、凍結療法)が選択されます。2016年より、ダビンチを使用したロボット支援腎部分切除が保険適応となり、当科でも積極的にロボット手術による腎部分切除を行っています。

ロボット手術による腎部分切除術(上記の内視鏡手術をロボット:ダヴィンチシステムで行う)
泌尿器Care & Cure Uro-Lo(メディカ出版)、21(6)、p51、2016(祢津晋久、腎がんの手術について患者さんに説明しよう)より転載

がんが大きく、根治的腎摘除術(がんのある腎臓を周囲の脂肪組織を含めてすべて摘出する)が必要な場合は、以前は腹部を大きく開くか、側方の肋骨を切除してから行われる開腹手術が一般的でした。しかし、1992年以降は腹腔鏡下腎摘除術を行うことがほとんどで、当科でも年間60例程度の腹腔鏡下腎摘除術を行っています。しかし、腹腔鏡手術では危険性が高いと判断された場合は、開腹手術で行う場合もあります。

腹腔鏡下根治的腎摘除術
泌尿器Cure & Care Uro-Lo(メディカ出版)、21(6)、p38、p50、2016(神山佳展、腎がんの手術について患者さんに説明しよう)より転載

転移性、進行性腎臓がんの治療には、現在では分子標的薬を使用します。腫瘍が増殖する分子(血管新生因子、腫瘍増殖因子)を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮します。2008年以降、現在6剤の薬剤が使用可能です。非常に高価な薬剤ではありますが、それまでの治療では、長期生存が望めない患者さんに大きな希望を与える薬剤の登場でした。起こりえる薬剤の副作用も、いままでの抗がん剤とは全く異なりますが、上手に使用することで、腎臓がんとの長期共存が可能となりました。

2016年8月より、免疫治療としてニボルマブ(オプジーボ®)の使用が、保険診療内で可能となりました。進行性腎臓がんの2次治療として、従来の分子標的剤(エベロリムス®)と比較して、生存期間の延長が示されたことによります。新しい治療により、さらなる進行性腎臓がんに対する治療選択が増えました。一方、免疫を強くする薬剤としての副作用(間質性肺炎、劇症型糖尿病、重度な下痢)に気をつけなければなりません。

当科では、上述のような腎臓がんの悪性度、進展度などを詳細に検討し、腎部分切除術、根治的腎摘除術などの手術治療(開創手術、腹腔鏡手術、あるいはロボット支援手術)、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物治療、あるいはそれらの併用治療について、患者さん毎に最も適切な治療方針を考慮し、患者さんご自身と十分に相談して治療を行っています。