泌尿器科の病気について
過活動膀胱

過活動膀胱とは

過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)は、症状によって定義される疾患です。すなわち、尿意切迫感が必須症状で、通常は頻尿(何回もトイレに行く)や夜間頻尿(就寝後何回もトイレに起きる)を伴っており、場合によっては切迫性尿失禁(急に強い尿意が起こってトイレまで間に合わずに尿がもれる:尿失禁の項参照)を伴う疾患です。つまり、尿意切迫感があれば、過活動膀胱が疑われます。

過活動膀胱の頻度

日本では排尿障害に対する疫学調査が行われており、過活動膀胱は40歳以上の男女の14.1%、すなわち約1,040万人の方が過活動膀胱に罹患していることが示されています。また、その約半数が尿失禁(切迫性尿失禁)を伴うことも示されています。

原因

過活動膀胱の病因は様々です。脳血管障害、パーキンソン病、多系統萎縮症、認知症などの脳や、脊髄損傷、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脊髄腫瘍、頸椎症、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症などの脊髄の神経疾患が過活動膀胱の原因となります。しかし、神経疾患がなくても、前立腺肥大症に合併することもあり、加齢による膀胱機能の変化も原因となり、さらに明らかな原因疾患のない(特発性)の場合もあります。

検査・診断

過活動膀胱は症状に基づく病気ですので、自覚症状の評価が最も重要です。尿意切迫感の症状があれば過活動膀胱と診断されますが、頻尿や切迫性尿失禁を伴っていればより確実です。

近年、過活動膀胱で病院を受診される方が増えています。専門医は、過活動膀胱の診断や重症度を評価するために下記の質問票「過活動膀胱症状質問票」を用いますが、この質問票は患者さん自身が記入するものですので、自己診断にも使うことができます。

質問3の点数が2点以上で、全質問の総合点数が3点以上であれば過活動膀胱と診断されます。また総合点数が5点以下であれば軽症、6〜11点であれば中等症、12点以上であれば重症と、重症度判定に用いる場合もあります。記入例では、質問3が4点、総合点が1+2+4+1=8点となり、過活動膀胱で中等症と判定できます。

尿検査や超音波検査などの検査によって、膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍などの膀胱の特殊な病気の存在が除外されれば、過活動膀胱と診断して治療を始めます。

過活動膀胱症状質問票 (OABSS)

質問 症状 頻度 点数
1 朝起きた時から夜寝る時までに、何回くらい尿をしましたか? 7回以下 0
8~14回 1
15回以上 2
2 夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか? 0回 0
1回 1
2回 2
3回以上 3
3 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか? なし 0
週に1回より少ない 1
週に1回以上 2
1日1回くらい 3
1日2~4回 4
1日5回以上 5
4 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか? なし 0
週に1回より少ない 1
週に1回以上 2
1日1回くらい 3
1日2~4回 4
1日5回以上 5

OABSS

質問 症状 頻度 点数
1 朝起きた時から夜寝る時までに、何回くらい尿をしましたか? 7回以下 0
8~14回 1
15回以上 2
2 夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか? 0回 0
1回 1
2回 2
3回以上 3
3 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか? なし 0
週に1回より少ない 1
週に1回以上 2
1日1回くらい 3
1日2~4回 4
1日5回以上 5
4 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか? なし 0
週に1回より少ない 1
週に1回以上 2
1日1回くらい 3
1日2~4回 4
1日5回以上 5

記入例