泌尿器科の病気について
間質性膀胱炎

間質性膀胱炎とは

間質性膀胱炎とは、「膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する疾患」(間質性膀胱炎診療ガイドラインによる)とされています。中高齢の女性に多いものの、男性や小児にもみられることもあります。原因は不明で、膀胱粘膜の機能障害や免疫学的機序が想定されています。頻尿や膀胱の痛みによる苦痛から生活の質は大きく損なわれますが、確立した治療法はなく、対症的な治療に留まっているのが現状です。下記に述べるハンナ型間質性膀胱炎は平成27年難病に指定されています。

原因

原因は不明ですが、膀胱粘膜の機能障害、免疫学的な異常反応、尿中の毒性物質、疼痛に対する過敏性などが想定されています。

症状

症状は、頻尿・夜間頻尿、尿意亢進、残尿感、膀胱不快感、膀胱痛などが主体で、膀胱の不快感や痛みは膀胱に尿がたまった時や冷えた時のほか、刺激物の摂取や精神的なストレスでも悪化します。痛みの部位は膀胱・尿道が多いものの、膣・外陰部・腰部などにも波及することもあります。

診断・重症度基準

診断基準として国際的に認知されたものはありませんが、わが国および東アジアの診療ガイドラインでは、症状、膀胱鏡所見、他の類似疾患の否定の3要件を診断基準としています。診断要件の膀胱鏡所見とは、ハンナ病変(正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜)または膀胱水圧拡張後の点状出血です。膀胱水圧拡張とは、下半身あるいは全身麻酔下に、膀胱鏡で膀胱内を観察しながら、一定の圧で膀胱内に生理食塩水を注水して膀胱を拡張する検査・治療で、診断のみならず治療効果もあります。

治療法

対症療法としては、生活指導が重要です。精神ストレスの緩和、食事指導(酸性飲料・コーヒー・香辛料・アルコール・柑橘類などの摂取を避ける)、定時排尿(膀胱が充満する前に時間を決めて排尿する)、膀胱訓練(膀胱に尿をためる訓練)などが症状緩和に有効です。水分摂取については、水分抑制により尿が濃縮されると、症状が悪化することがあるので、むしろ適切な水分量の摂取により一定の尿量を確保することが重要です。内服治療薬としては、鎮痛薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、免疫抑制剤などが用いられます。内視鏡的な治療としては、膀胱水圧拡張術(前述)が広く用いられ、膀胱の拡張により症状が軽減することがあります。またハンナ病変を認める場合には、経尿道的内視鏡下に病変部を電気焼灼します。膀胱内への薬物注入治療として、ヘパリン、DMSO(ジメチルスルホシド)、ステロイドなどが用いられます。いずれの治療にも抵抗性で症状が強い症例に対しては、膀胱全摘術と尿路変更術が行なわれることがまれにあります。

予後

膀胱水圧拡張術またはハンナ病変の焼灼術により、約半数の症例で症状の寛解をみます。しかし、長期的に寛解するのは一部の症例に限られ、多くの症例では、再治療や追加治療が必要となり、これらの治療にも拘らず耐えがたい症状が持続する症例は膀胱全摘術が適応となります。他方、症状が消失して、数年以上の長期緩解が得られる患者さんもまれにみえます。