先進医療への取組
尿路再建

尿路再建とは

尿路再建という用語は少しわかりにくいですが、障害を受けた尿の通り道を手術によって作りなおすという意味となります。日常診療で時々遭遇する病気は、尿道損傷、尿管損傷、膀胱膣瘻(ぼうこうちつろう)などです。

尿道損傷

事故による骨盤骨折、会陰部への外傷などにより尿道が損傷し、時には尿道が完全に断裂してしまうことがあります。このような場合には、手術による尿道再建を行う必要があります。尿道の損傷が軽度な場合には、受傷直後に尿道再建を行うこともありますが、高度な尿道損傷の場合には、いったん経皮膀胱瘻(下腹部から膀胱に直接カテーテルを留置して、尿を体外の袋にためる)を行い、3か月以降に尿道再建を行います。軽度な尿道狭窄(狭い部がある)の場合には、尿道から内視鏡を挿入して、狭い部分を切開することもありますが、多くは手術により尿道の狭い部分を切除して、尿道をつなぎなおします(尿道形成)。尿道の長さが短くなってつなぐのが困難な時は、別の部位の皮膚や口腔(口の中)粘膜を代用して尿道を形成します。

尿管損傷

多くは、手術(婦人科手術、外科手術)の合併症として発生し、尿管狭窄・閉塞(尿管が狭くなるあるいは閉塞して、水腎症となる)や尿管膣瘻(尿管が膣と交通して、尿が膣からもれる)などが起こります。

一時的には尿管にステントというカテーテルを留置して経過をみることがありますが、泌尿器科専門医は、様々な方法で尿路再建を行うことができますので、長期間カテーテルを留置するのは避けたいものです。

尿管損傷の部位や長さにより、様々な手術により再建をします。尿管の障害部が膀胱に近ければ膀胱と尿管をつなぎなおしたり(膀胱尿管新吻合術)、尿管の障害部が短ければ障害部を切除して尿管と尿管をつなぎなおす(尿管尿管吻合術)などの手術を行います。尿管の損傷部が非常に長い場合でも、腸管(小腸)を尿管の代用として用いたり、様々な手術方法により対処することが可能です。

膀胱膣瘻(ぼうこうちつろう)

多くの場合には、婦人科手術(卵巣、子宮など)の合併症により、膀胱と膣が交通するものです。軽度なものであれば、尿道から膀胱にカテーテルを一定期間留置することにより治ることもありますが、大多数は自然に治ることは少なく、膣からの尿もれが続き、再建手術が必要となります。

一般的に膀胱膣瘻の閉鎖手術は難度が高く、経験のある泌尿器科専門医が行うことが推奨されます。小さい瘻孔であれば、経腟的手術(開腹ではなく膣からの手術)で再建できることもありますが、大きな瘻孔や膀胱の奥にある瘻孔では、開腹手術により再建を行います。一般に、再発率の高い手術ではありますが、瘻孔閉鎖術については名大泌尿器科の経験では95%以上の成績が得られています。