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膵臓がんの治療について

治療方針

どのような治療を行うかは、がんの進行度だけでなく、患者さんの全身状態も考慮して決定されます。がんが膵臓あるいはその周辺に限局している場合は、まず手術が選択されます。がんの範囲は限局していても、周囲の主要血管などへ浸潤しているために切除ができない場合は、放射線療法や全身化学療法などが行われます。

これらに消化管や胆管のバイパス手術を組み合わせることもあります。また、がんが遠隔転移している場合には全身化学療法を行います。いずれの場合も、全身状態があまりよくないため、がんに対する治療の負担が大きすぎると考えられる場合には、痛みなどの症状のコントロールに重点をおいた「緩和医療」が選択されることがあります。

標準的な治療法以外に、新しい治療の試験(臨床試験)が行われている場合には、これらの「臨床試験」を受けるという選択肢もあります。「臨床試験」は施設によって定められた方法で行われますので、その説明を受けた上で参加するかどうかを決定することになります。

現在、膵臓がんの治療方針は、日本膵臓学会による「膵がん取扱い規約(第6版)」と「膵がん診療ガイドライン(2009年版)」により決定することが一般的です。

外科治療

現在、根治が望める唯一の治療法は「手術」です。したがって切除が可能であれば、まず「手術」をお勧しますが、膵臓の解剖は複雑であり、切除は容易なものではありません。

特に膵頭部にがんが存在する場合には「膵頭十二指腸切除術」という大きな切除だけでなく、胆汁の流れる道、膵液の流れる道、食べたものが通る道を作り直す「再建」を行う必要があります。最低でも6~8時間かかる大手術です。したがって、がんの進行度以外に全身状態がこのような大きな手術に耐えられるかどうかを評価する必要があります。

また膵体部や膵尾部にがんが存在する場合には「膵体尾部切除術」、悪性度の高くないがんに対しては「機能温存手術」などを行う場合があります。

膵頭十二指腸切除術後で平均4~5週間の入院が必要で、輸血の頻度は少なくなってきています。また、膵体尾部切除術においては、順調な経過であれば術後2~3週間で退院可能です。

放射線治療

放射線にはがん細胞を死滅させる効果があり、膵がんに対してもよく行われています。この放射線治療により、腹痛や腰背部痛がある場合には痛みを和らげる効果も期待できます。

われわれの施設では、手術室に「モベトロン」と呼ばれる放射線を照射できる装置をおいています。腫瘍を摘出した後に、この「モベトロン」を使用して術中照射を行います。また、腫瘍が切除できなかった場合にも行っています。

化学療法

膵臓がんは抗がん剤が効きにくいがんの一つであり、抗がん剤(化学療法)でがんを完全に治すことは困難です。化学療法の目的は、がんによる症状を和らげ、延命が目的であると考えられています。

以前は良い抗がん剤がありませんでしたが、現在では症状を和らげる効果や延命効果が認められた抗がん剤があります。それは、「ゲムシタビン(商品名ジェムザール)」という抗がん剤で、世界中で広く使われています。日本においても保険診療でこの抗がん剤を使うことが可能です。「ゲムシタビン」の登場により膵臓がんに対する化学療法の成績は改善しましたが、治療成績をさらに向上させるために、現在新しい治療の開発が世界中で行われています。日本では2006年8月に新たに「S-1(商品名ティーエスワン)」という飲み薬の抗がん剤が保険適応となり、現在期待されている薬剤の一つです。

これらの薬剤は、外来通院で治療を受け、外来通院のない日には通常の生活を送ることができます。ただし、同じ治療でも人によって副作用の出方は異なるので、副作用の程度や患者さんの全身状態に応じて治療をお休みしたり、薬の量を減らしたり、場合によっては中止したりすることがあります。

膵臓がん

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