膵臓がんとは、膵液を十二指腸に流す「膵管」から発生する「上皮性悪性腫瘍」のことを言いますが、病理組織学的にはさらに細かく分類されています。しかし、一般的に膵臓がんと言えば、「浸潤性膵管がん」のことを意味しています。
統計学的には、我が国では年間2万人以上の方が膵臓がんにより死亡され、その数は年々増加していると報告されています。また、男性にやや多く、がんの発生部位別の死亡者数から見ると、男性が第5位、女性が第6位となっています。
今日までに、遺伝子研究をはじめとしたさまざまな分子生物学的研究がなされてきましたが、膵臓がんの発生原因についてはいまだ十分に解明されていないのが現状です。唯一確立されている原因としては、「喫煙」だけと言えます。
飲酒やコーヒーとの関連は否定的と考えられ、高脂肪食や肉が発生リスクを増加させ、野菜や果物がリスクを低下させる可能性があることは、他のがんでも共通しているかもしれません。
また、「糖尿病」や「飲酒による慢性膵炎」が膵臓がんのリスクを高める可能性があることも指摘されてはいますが、いまだ明確な結論が出ているわけではありません。したがって、有用な予防法が確立されているわけではなく、今後の膵臓がんをめぐる基礎的研究の成果が待たれるところです。
膵臓は胃の裏、つまり背中側にあり、また多くの臓器に囲まれているために、もしがんが発生しても早期の段階で見つけるのが非常に難しい病気です。そのため、健康診断や人間ドックなどにより膵臓がんを早期発見することは極めてまれと言えます。
また、膵臓がんは早期の段階では特徴的な症状が乏しく、黄疸や痛みなどの症状が出現し、その検査により診断された時点ではすでに外科的に切除が難しいほど進行している患者さんの割合が高率です。
したがって、膵臓がんの治療成績向上のためには、早期膵臓がんを発見するための診断法の確立が重要であり、現在、国内及び海外において積極的に行われています。