肝細胞がんに対する治療にはさまざまな方法があります。当科では肝切除を始めラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法などを個々の状態に合わせて選択または組み合わせた治療を行っています。
これら肝細胞がんに対するさまざまな治療法のうち、肝切除はがんに対する最も効果的な方法である反面、合併症の危険性も多く含んでいます。肝臓の再生能は豊富とされていますが、生命維持になくてはならない臓器であり、大量に切除した場合には肝不全となり生命に危険が及びます。大量に切除しない場合でも、元々肝機能が障害されていた場合には肝不全となることがあります。がんをとり残さないために大きくとればそれだけ肝不全の危険性が高くなるというわけです。
そのため、がんを確実に切除し、かつ肝機能を温存した切除が要求されます。当科では、術前に最新のマルチスライスCTによる肝細胞がん進展度診断および血管解剖診断を行い、さらに術中造影超音波検査を用いて、最も適切と考えられる肝切除を行っています。
肝切除シミュレーションソフトを使い、肝臓の血管解剖に則った領域を色分けしています。左の図で、濃い緑色が血管を表しています。このように、幹となる1つの血管が栄養を供給している部分ごとに色分けしていくと、茶色・水色・黄緑色のようになります。その他の部分を塗りつぶして肝臓全体を表すと、右の図のようになります。このうち癌を含む領域を選択して、切除します。
術中造影超音波検査の様子
以上のように、当科では詳細な画像診断、特に術中にも詳細な画像診断を加えることにより、がんをとり残さずかつ肝機能を温存した解剖学的な肝切除(系統的肝切除)を行い、手術後をより良くお過ごしいただけるよう、努力を続けております。