どのような治療を行うかは、がんの進行度だけでなく、患者さんの全身状態も考慮して決定されますが、胆道がんの場合、手術療法のみが根治的治療として確立しています。がんが胆道あるいはその周辺に限局している場合は、まず手術が選択されます。がんの範囲は限局していても、周囲の主要血管などへ浸潤しているために切除ができない場合は、放射線療法や全身化学療法などが行われます。
これらに消化管や胆管のバイパス手術を組み合わせることもあります。また、がんが遠隔転移している場合には全身化学療法を行います。いずれの場合も、全身状態があまりよくないため、がんに対する治療の負担が大きすぎると考えられる場合には、痛みなどの症状のコントロールに重点をおいた「緩和医療」が選択されることがあります。
現在、胆道がんの治療方針は、日本胆道外科研究会による「胆道がん取扱い規約(第6版)」と「胆道がん診療ガイドライン(第2版)」により決定することが一般的です。
現在、根治が望める唯一の治療法は「手術」です。したがって切除が可能であれば、まず「手術」をお勧めしますが、胆道周囲の解剖は複雑であり、切除は容易なものではありません。
遠位胆管にがんが存在する場合には「膵頭十二指腸切除術」、肝門部領域胆管にがんが存在する場合には「肝切除術+肝外胆管切除術」、がんがこの範囲を超えて大きく広がっている場合には「肝膵十二指腸切除術」という大きな手術が必要になります。
これらの手術では、さらに胆汁の流れる道、膵液の流れる道、食べたものが通る道を作り直す「再建」を行う必要があります。最低でもそれぞれ、6-8時間、10-12時間、12時間前後かかる大手術です。したがって、がんの進行度以外に全身状態がこのような大きな手術に耐えられるかどうかを評価する必要があります。
胆嚢がんは多彩な広がり方を示す事が多いので、その状況に応じた術式が必要になります。早期のものでは「胆嚢摘出術」、「胆嚢摘出術+肝部分切除術」などが行われますし、進行したものでは「拡大右肝切除術+肝外胆管切除術」や「肝右三区域切除術」という大きな手術が行われます。10時間以上かかることが多いです。
下部胆管がんと同様、「膵頭十二指腸切除術」が行われます。
腫瘍が他臓器や、門脈や動脈などの血管に及ぶ場合、上記の手術に加えてそれらの合併切除を併せて行う事があります。
放射線にはがん細胞を死滅させる効果がありますが、放射線療法で胆道領域のがんを完全に治す事は困難です。手術が不可能な胆管がんに対してのみ、一定の効果があると報告されています。
胆道がんは抗がん剤が効きにくいがんの一つであり、抗がん剤(化学療法)でがんを完全に治すことは困難です。
化学療法の目的は、がんによる症状を和らげることにあると考えられています。
切除不能胆道癌に対する化学療法としてゲムシタビン(商品名ジェムザール)+シスプラチン療法が行われます。また、日本では、「ゲムシタビン(商品名ジェムザール)」と「S-1(商品名ティーエスワン)」という抗がん剤が保険適応となっています。今後のさらなる研究開発が期待されています。