教授 池田 匡志

ごあいさつ

名古屋大学精神科のホームページをご覧いただきありがとうございます。名古屋大学・精神医学講座 教授の池田匡志(いけだまさし)と申します。名古屋大学医学部附属病院、ならびに名古屋大学・大学院医学系研究科を代表してご挨拶申し上げます。
1908年に開講された当医局は、過去に7代の教授と医局員が築き上げた長い歴史と経験を有し、研究成果を世界に発信してきました。また、臨床家として日本の、あるいは地域の精神医療に貢献してきた実績があります。

私自身は精神疾患の病態解明を目指した研究、特にゲノム解析を専門とした研究を実践し、また精神疾患に苦しむ患者さんの力になれるような精神科医になりたいと思いながら精神科臨床を行って参りました。さらに、研究、臨床を通じて若い医師や学生に、スティグマの解消を啓発する教育を目標としております。今後においても、研究、臨床、教育すべての側面で、真摯に患者さんに向き合いながら、実際の臨床に役立つような成果を還元するべく、医局員と共有しながら切磋琢磨していきたいと思います。

当科の特徴

名古屋大学大学院医学系研究科精神医学を主体する我々の医局は、診療部門が「精神科」と「親と子どもの心療科(児童精神科)」、大学院研究部門が「精神医学」、「精神生物学」、「発達・老年精神学」、「親と子どもの心療学」の各部門に分かれており幅広い役割を担っております。

当科の目標は、「let’s create better evidence and provide the best practices for patients(患者さんのためにより良いエビデンスを構築し、そして最良の治療を提供しよう)」です。端的な言葉ではありませんが、臨床も研究も、そして教育も最善を尽くしていきたいと思います。

研究においては、精神疾患の病態メカニズムを探求する研究(ゲノム研究や神経科学研究)や、臨床に即した研究(薬物による自動車運転の影響)を実践しています。こうした研究は、すぐに新たな薬物開発などにつながることは困難でありますが、今後のよりよい治療法開発、あるいは薬物の副作用による社会生活の送りにくさを解消するために必須であり、「より良いエビデンス」を構築することを推進してきたいと思います。
診療に際しては、生物学的、心理学的、社会的立場、さらには身体的側面にも着目した重層的な観点を持ちながら、患者さんやご家族に最適な治療を提案し、共同して選択する姿勢、そして結果として最善の結果になることを心がけています。こうした側面の基盤としては、真摯に患者さんと向き合う姿勢を重要視しています。また、研究、特に臨床研究にも繋がりますが、最新のエビデンス(研究結果や知見)を常にアップデートすることを心がけ、その時点で最良の選択肢を提案できるようにしております。
また、幅広い年齢層をカバーしていることも当科の特徴です。特に、児童精神科に関しては長い伝統があり、多くの児童期から苦しむ患者さんの生活をサポートするべく、専門の児童精神科医が活躍しております。さらに、老年期の認知症に関しても、研究、臨床の両側面でも実績があります。それに加え、精神療法など心理的なアプローチ、あるいは睡眠障害などを専門とする医師も在籍し、多様なニーズに応えられる体制を構築しています。

このように、児童期から老年期まで多くの疾患に対するエキスパートが在籍し、その点を活かしながら研究、臨床、教育を実践しています。
この利点は、新たな精神科医を育てるための研修プログラムの充実にも繋がり、系統的なレクチャーや、指導医の指導のもとで、豊富な外来・入院症例を経験することに繋がります。より良い精神科医を育てることは、今後の名古屋市、愛知県、日本において非常に重要なことであり、特に力を入れています(詳細は研修プログラムのページを御覧ください)。