小児科後期研修終了後のサブスペシャリティ技能習得について
小児科後期研修終了後には、小児科の中の各専門分野サブスペシャリティの技能習得も可能です。サブスペシャリティの技能を習得する方法には大きく分けて、一般大学院コース、社会人大学院コース、専門医取得を目標とした研修コースがあります。分野によって異なりますが、大学院コースでもその間に専門の臨床経験を積むことで各分野の専門医を取得することが可能です。さらに国内、国外への留学も可能です。身につけた専門技能は、関連病院の専門診療や大学の教官として生かされていきます。
<最近の留学先の例>
国内: 国立成育医療センター、埼玉県立小児医療センター、長野県立こども病院、愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、自然科学研究機構生理学研究所(岡崎)、岐阜薬科大学、福岡大学
国外: National Institutes of Health (NIH), USA.
Montreal Neurological Institute (MNI), Canada.
Freiburg University, Germany.
1) 一般大学院コース
従来の大学院に入学するコースです。大学院に在籍して研究を行います。基礎研究室における研究や国内留学をして研究を行うことも指導教官との相談で可能な場合があります。
2) 社会人大学院コース
今までの論文博士に代わるコースです。関連病院勤務や大学非常勤医員として働きながら大学院に入学します。1年以内とはなりますが研究に専念する期間も指導教官との相談で考慮されます。
3) 専門医取得を目標とした大学院以外の研修コース
関連病院に勤務しながら専門医および専門技能取得を目指すコースです。関連病院にも専門診療を必要とする患者さんは多く、各分野の専門医も多くいます。
各コースでサブスペシャリティ技能を習得するには、それぞれを専門とする指導医師との相談が必要です。各専門グループのモデルコースなどについて以下に示します。
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大学院コース |
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研修医 |
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社会人大学院コース |
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研修医 |
小児科 |
大学 病院 |
初期 赴任 |
社会人大学院 |
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大学院以外のコース |
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研修医 |
小児科 |
大学 病院 |
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専門医研修 |
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血液腫瘍性疾患の治療施設は、全国的にも大学附属病院や小児病院などの専門施設に限定されており、名古屋大学小児科の関連においても、名大病院、名古屋第1赤十字病院、名古屋医療センターがそれにあたります。血液腫瘍学の特徴として、分子生物学や免疫学などの基礎医学の理解が、臨床に直結することから、一般、社会人コースを問わず、大学院に進学するのが望ましいと考えます。
1) 一般大学院コース
フレッシュ研修を終了後、上記の2施設あるいは,他の関連病院において0.5〜1年間の研修を終了後、大学院に入学します。名大の関連病院外で研修し、大学院入学を希望する場合の入学時期は、本人の希望に沿います。大学院入学後は、それまでの血液腫瘍性疾患の診療経験に応じて、0.5〜1年間、造血幹細胞移植の診療経験を含め、専門分野の診療に従事します。後半の3年間は、病棟、外来業務は免除で研究に専念します。大学病院に在籍中の臨床経験で、診療実績を満たすことは十分可能であることから、学位と専門医を同時に取得することをめざします。大学院卒業後は、専門施設での診療に従事するほか、海外留学、専門施設での経験をへて、教官や研究職への道が開かれます。
2) 社会人大学院コース
社会人大学院の入学時期は、−般大学院入学コースと同様です。名大病院においては、医員のポストを得ることができます。名古屋第1赤十字病院、名古屋医療センターでポストがあれば、籍をおいたまま、大学院に入学することも可能です。また、条件が許せば、3施設をローテートすることもありえます。名大病院では、−般大学院コースと同様に種々のセミナーをはじめ、教育的機会が与えられます。また原則として、病棟の診療に従事しますが、4年間のうち、−定の期間は研究に専念することも考慮します。大学院在籍中の診療経験をもとに学位論文を作成するとともに、十分な診療実績が得られることから、専門医の取得も可能です。大学院修了後は、専門施設での診療に従事するほか、専門性をもった小児科医として地域医療に従事する道が開かれています。また、本人の希望によっては一般大学院コースと同様に、海外留学や、教官への道も開かれています。
小児アレルギー専門医になるためには、アレルギー学に対する強い関心と専門的知識を持ち、アレルギー臨床の経験と実績があり、高い水準でアレルギー疾患の診療を行う能力を身につけなければなりません。表現を変えるとすると、アレルギー外来はほとんどの病院や小児科診療所に開設されていますが、こうした最前線からの手に負えない症例の相談に応じる能力が求められます。また、この分野では経験主義的で非科学的な診断や治療の押し付けが横行しており(アトピービジネスの活況を見よ)、専門医は情報を広く収集するだけでなく、重厚な免疫学・アレルギー学的素養で「ガセネタ」を排除する力量が日々試されます。これは本人自身の問題であると同時に、周辺にこうした医療的貧困がはびこらないよう、教育者としての役割も求められます。
そこで、小児アレルギー専門コースでは、数多くとも関連病院でアレルギー疾患の治療にあたることを専門コースに加えることをせず、できれば1年間、小児アレルギー専門施設で集中して臨床研修を行うことを推奨します。その上で、免疫学・アレルギー学の専門的知識をつけるために大学院などで2年間、アレルギー研究に参加することができればベストです。専門コースは多様であっていいのですが、とりあえず、3コースを提示します。
1) 一般大学院コース
4年間のうちの1年間を小児アレルギー専門臨床研修にあてることが望ましいと考えます。研修が可能な施設は、関連病院内ではあいち小児保健医療総合センターのみであり、場合によっては他県への国内研修が必要な場合があります(大学は教官1名分の診療規模であり、研修条件が揃っていない)。残る3年間のうち2年間はアレルギー研究に参加します。研究能力の飛躍、新分野の開拓のためには国内外への留学が求められます。
2) 社会人大学院コース
大学にはアレルギー診療のための医員のポストがなく、大学で臨床研修をしながら研究にも参加するという学内コースは設定できません。あいち小児保健医療総合センターに身分(レジデント)を置き、大いに努力し、空いた時間を大学に研究に通い続けるコースは可能かもしれません。また、博士号取得だけを目的とすれば、一般関連病院から定期的に大学に研究に通うことも可能で、大学内のスタッフによる研究上のサポートは行います。
3) 大学院以外のコース
一般小児科研修を終了した後、すみやかに2年間の小児アレルギー専門臨床研修に入ります。この場合、診療規模や身分保障などを考慮すると、これにふさわしい研修施設は関連病院内にはなく、成育医療センターや国立病院機構福岡病院などへの国内研修が必要となります。ただし、アレルギー学の基礎的な専門知識の修得に不備があり、その克服のため個人的な努力が求められます。最大の困難は医局の人的資源の不足であり、実現に向けて粘り強く交渉する必要があります。
専門医制度について:ウイルス感染免疫と深くかかわりのある小児感染症学会には独自の専門医制度はありません。感染症学会が認定する専門医制度はあるが、主として内科感染症医対象としており、取得している小児科医は少ないです。一方、Infection Control Doctor(ICD)は専門医ではないが、病院内の感染対策業務を行ういわゆるInfection Control Team (ICT)として活動するのに求められる資格であり、取得が勧められます。ICDには小児感染症分野において、ウイルス感染症のみならず、細菌感染症も含めた幅広い知識が要求されます。
モデルコースについて:ウイルス感染症は、非常に幅の広い疾患であるため、他の疾患の専門グループや他科との連携が欠かせない分野です。よって、専門的な治療手技は持たないかもしれませんが、活躍の場は広くあります。ウイルス疾患が如何に生じるのか、なぜその診断法を用いるのか、どうしてこの治療を適用するのか、などの臨床的疑問に対応するためには、感染免疫の基礎的理解が非常に重要と考えます。将来、感染免疫研究に専念したいという者はもちろんのこと、優秀な臨床医を目指す者にこそ、分子生物学や細胞生物学・免疫学などの基礎的研究は有用です。よって、大学院に進学し一定期間基礎的研究すること薦めています。一般大学院・社会人大学院、いずれのコースも可能です。
1) 一般大学院コース
フレッシュ研修を終了後であればいつでもよいです。ウイルス大学病院で名古屋大学医学部小児科のみならず、関連研究施設である愛知県がんセンター腫瘍免疫部、名古屋大学大学院微生物免疫学講座にての研究も可能です。大学院卒業後は、積極的に海外留学を奨励しています。ちなみにウイルスGではこの16年間で14名の大学院生が修了しましたがうち8名が海外留学しています。8名中5名が研究機関・施設で教官もしくは部長として働き、2名は現在留学中です。また、専門的知識・経験を生かして感染症臨床に従事するあるいは臨床研究を行うなどグループOBは幅広い活動をしています。
2) 社会人大学院コース
入学時期は一般大学院コースと同様です。ウイルスG関連臨床施設(あいち小児保健医療総合センター感染免疫科など)で臨床に従事しながら、臨床ウイルス学研究を行います。2)で述べたような理由で、一定期間(少なくとも一年)はいずれかの研究施設で基礎的研究を行うことが望ましいと考えます。
小児神経疾患はあらゆる病院の入院患者さんや外来において経験しますが、詳しく小児神経学を学ぶためには名古屋大学病院や基幹施設である名古屋第一赤十字病院、安城更生病院、岡崎市民病院、愛知小児保健医療総合センターなど、さらには障害児を専門に診療する愛知県コロニー、青い鳥医療センターにおいて、指導者のもとで経験を積むことが望ましいと考えます。フレッシュ研修終了後は大きく分けて以下の3つのモデルコースが考えられます。
1) 一般大学院コース
大学院生として名古屋大学で専門研修、研究を開始する場合、最初の1年間は大学の神経外来および入院患者の診療に従事することで、小児神経学の臨床経験を積み研究の準備も行います。同時期に脳波判読などの専門技能習得も行います。その後は臨床業務を免除され研究に専念することができますが、臨床研究に関連する外来や病棟業務を継続することを希望する場合は継続も可能です。また学外の研究施設で研究を行うことも可能です。現在、岡崎の生理学研究所における神経生理学的研究、愛知県コロニー発達障害研究所や福岡大学で小児神経疾患の遺伝子研究を行っている者がいます。小児神経学会専門医取得のための臨床経験は大学院中にも積むことが可能です。卒業後は基幹病院や専門施設での診療、国外留学も可能です。
2) 社会人大学院コース
社会人大学院に入学した場合、大学の医員として、または関連病院に勤務し小児神経の臨床研修を行いながら大学院生として臨床研究も行います。前半を関連病院、後半を大学で医員として勤務することも可能です。関連病院に勤務する場合、小児神経の指導者のいる基幹病院で臨床研究を行うことを考慮します。研究をまとめるため1年以下の研究に専念する期間も考慮されます。1)のコースと同様に専門医取得のための臨床経験を積むことが可能です。卒後は1)と同様に基幹病院や専門施設での診療、国外留学などが可能です。
3) 大学院以外のコース
学位よりも専門医の取得に主眼を置いたコースです。大学の医員として、または関連病院に勤務し小児神経の臨床研修を行いながら日本小児神経学会専門医取得を目指します。同専門医取得には連続して5年以上の会員歴、症例要約、学会出席や発表、論文執筆、小児科学会など基本領域の学会の専門医などが必要ですが、これらは大学病院や基幹病院での診療、研修で取得可能です。いずれのコースも、てんかんの診療、研究を行い日本てんかん学会の認定医(臨床専門医)を取得することも有用です。
周産期専門医(新生児)は小児科専門医取得後に研修を開始することができるため、大学病院研修終了後に速やかに小児科専門医を取得することが望ましいと考えます。周産期専門医(新生児)の研修期間は3年であり、そのうち6ヶ月は基幹施設での研修が義務づけられています。名古屋大学小児科関連施設では、名古屋第一赤十字病院、大垣市民病院、安城更生病院が周産期専門医(新生児)の研修における基幹施設です。残りは基幹施設または指定施設で研修を行います。名古屋大学小児科関連施設の研修指定施設は、名古屋大学医学部附属病院、公立陶生病院、トヨタ記念病院、岡崎市民病院、愛知県コロニー中央病院です。
1) 一般大学院コース
基本的に病棟業務は行わずに、研究に専念しますが、専門医研修を開始する意味で、大学院4年間の中で最後の0.5〜1.0年間は、時間内の病棟勤務を行うこととします。大学院修後は関連の研修施設へ異動をして、研修を継続します。大学院修了後に、国内外の研究施設での研究を希望する場合は、留学を優先として、留学後に研修の再開を考慮します。
2) 社会人大学院コース
学会の指定する研修施設に籍を置きながら、名古屋大学新生児研究ネットワーク(NU-NRN)のシステムに基づき、臨床研究を開始します。基本的に大学院4年生で、大学に籍を移して、研究のまとめを行うこととなります。
3) 大学院以外のコース
大学病院研修終了後または初期赴任後(小児科専門医取得後)に学会の指定する研修基幹施設、研修指定施設へ異動をし、研修を開始します。
1) 大学院入学コース
原発性免疫不全症候群の理解のためには基礎免疫学の知識が必須です。また疾患の診断、病態解明を行なうためには細胞生物学的、分子生物学的研究技術の修得が必要です。稀な疾患であり、ほとんどの症例が大学に集積していることなどから大学院入学により知識、技能を習得することを強くお勧めします。大学院卒業後は希望により海外留学も可能です。
2) 社会人大学院コース
上記理由により大学院以外のコースは基本的には勧められません
3) 大学院以外のコース(医員、関連病院における研修、関連病院以外の国内研修など)
上記理由により大学院以外のコースは基本的には勧められません。
1) 一般大学院コース
臨床上の視点も重要であり大学院4年間のうち6ヶ月から1年間時間内の病棟業務は行うものとします。関連外施設での研究を希望する場合その目的などと照らし合わせて許可を得られることを条件とします。大学院修了後は関連の専門施設へ異動して研修を継続します。大学院修了後の国内外での研究の希望がある場合も相談に応じます。
2) 社会人大学院コース
関連の専門施設において研修を行いながら臨床研究を開始します。中途で約2年大学院に籍を移して研究のまとめを行います。
3) 大学院以外のコース
大学病院研修終了後または初期赴任後に関連の専門施設での研修を行います。
<腎臓専門医(小児科)取得のための到達目標>
単に小児の腎・尿路疾患のみでなく、広く腎・尿路の生理・病態に関する知識が必要となります。体液(水電解質)、高血圧(血圧調節)、慢性腎不全(保存期を含む)、急性腎不全、透析療法、腎移植なども重要です。更には、成人の腎疾患(糖尿痛腎症や膜性腎症など)に対する一般的な知識も必要ですが、学会や研究会への参加などによって習得可能と思われます。並行して(ほぼ同時期に)日本透析医学会専門医を取得するための研修も、在籍する研修施設によっては可能です。
1) 一般大学院コース
在学中は研究に専念し、その後、日本腎臓学会の指定する研修施設(別掲)で3年間の研修を開始することになります。
2) 社会人大学院コース
日本腎臓学会の指定する研修施設(別掲)に在籍しながら研究を行うことになります。
3) 大学院以外のコース
小児科専門医を取得した後に、日本腎臓学会の指定する研修施設(別掲)で3年間の研修を行います。なお、日本腎臓学会の会員歴が5年以上必要であるため、腎臓を専攻すると決めたら小児科の後期研修を行っているうちに日本腎臓学会へ入会しておくことが望ましい。
大学に教官のいない現状では研修は非常に困難です。
先天代謝異常症に興味をもたれた時には、分子遺伝学的研究の可能な国内他施設で研修を行うことになります。
研修開始届けを提出後、一定数の遺伝診療の経験を積むことが必須です。モデルコースとしては症例数の多い病院(主に愛知県心身障害者コロニー中央病院)で診療の実績を積む臨床中心のコースと、大学院で分子遺伝学的研究に従事しながら非常勤で臨床経験を積む方法に大別されます。
1) 愛知県心身障害者コロニーに勤務して臨床遺伝診療に従事する。
2) 愛知県心身障害者コロニーで研修届けを提出後、遺伝医学セミナーに参加してポイントをためながら症例数の多い病院で勤務する。
3) 遺伝性疾患を対象とする他のグループの研究に従事しながら、平行してコロニーで研修届けを提出し、遺伝医学セミナーに毎年参加してポイントを増やしつつ、症例数の多い病院で非常勤で勤務する。遺伝性疾患を対象とする他グループで研究を行いながら臨床遺伝専門医を取得することは十分可能です。