子供
「おとうさんの入ったあとのトイレって臭い―」

子供
「それにトイレが長い―」
「そう言うなよ、トイレはお父さんにとって憩いの部屋なんだから」
子供
「だからって、あたしのマンガ持って入るのやめてよー。」
「すまん、すまん」
解 説
 トイレでの排泄
私たちが住んでいる社会では、うんこやおしっこは、トイレでするものである。
人間の排泄物には、その他にも汗、涙、鼻水、ふけ、目くそ鼻くその類があるが、これは基本的にどこでしようとあまり問題にならない(ことが多い)。
この、二大排泄物である「うんこ」と「おしっこ」の役割と排泄の仕組みについて考えよう。
 おしっこ(尿)の生成と排泄 
人の体内の環境は、一定に保たれるようにできている(恒常性)。人が生きていくためには、身体の中の水分や塩分、糖分などが一定に保たれ、更に人体にとって毒性のある物質が体外に排出される必要がある。これらの調整をする大きな役割が尿の生成である。
尿は、腎臓で作られる。腎臓に流れ込んだ血液がろ過・再吸収されて、使われなかった余分な塩類やビタミン、そして身体にとって有害なアンモニアを含む「尿素」をこれも身体にとって不要となった水分とともに体外に排出する。
健康な大人が1日に排出する尿は1.2〜1.5リットルである。つまり、それだけの水分を身体の外に出す必要がある。
ちなみに、鳥にとっての「尿」は鳥の糞の白い部分にあたる。鳥は、有害物質であるアンモニアを「尿酸」の形で排出する。 「尿素」よりもずっと濃いため、水分をそれほど必要としない。鳥で人のような「尿漏れ」というのは、あまり考えにくいですよね。 もう一つ付け加えるなら、魚は、有害物質アンモニアをほとんどそのまま水分にとかして出してしまうことができる。 すんでいるのは水の中。だから、やっぱりじゃんじゃんおしっこをだしても尿漏れとはいいませんね。
腎臓では、体内の水分や塩分を調節するため、暑い時期に汗などで水分が奪われれば尿に含まれる水分は減る(尿量が減る)し、寒い時期は汗をかかないので尿量が多くなる。
腎臓で作られた尿は、すこしずつ膀胱にたまる。膀胱には、一日分の尿を全て(大きなペットボトル一本分)ためることはできないから、人間は日に何度か排尿をしなくてはいけない。膀胱は尿をためる袋の役割を持っており、大人では300〜400ccの尿をがんばればためる事ができる。
膀胱に尿がたまり始めても、最初のうちは特に「おしっこがたまった」という感じは自覚しない。人によって違いはあるが100ccくらいたまり始めると少したまったかな、という感じがし始め、200〜300くらいになると、そろそろたまってきたな、と感じる。タイミングを見計らって、トイレに行くのは、大脳が判断する。
トイレでおしっこをしてもいい状況になると(ちゃんとトイレにまたがって、パンツもおろしていざ、という時になってから)大脳の命令を受けて、脊髄の神経を指令が通って膀胱に伝わる。膀胱はそこでおしっこを出そうとぎゅっと縮まり、同時にそれまで一生懸命尿が出るのをこらえていた尿道が開く。そこで、めでたく排尿がされる。
これだけの身体の仕組みがどこか一つでも働かなくなると、「排尿障害」という困った状況になる。
 うんこ(便)の生成と排泄 
うんこ(便)も身体にとって不要になったものをたくさん含んで、身体の外に排出される。
便は、口から食べたり飲んだりしたものが身体に吸収された後の残りかすや、水分、塩類、腸から剥がれ落ちた細胞や腸の中の細菌や色素などを含んでいる。
口から入って、胃でこなされた食物は、小腸で栄養分などを吸収されていくが、この段階では液状である。それが大腸を通る間に水分を搾り取られて、ある程度の硬さのある便になる。
大腸の炎症などで水分が充分に絞られないと、「下痢」になり、大腸での通過があまりに遅くて、水分が取られすぎると、硬すぎる便「硬便」となって「便秘」の原因になる。
大腸を通った便が最終的に直腸にたまると、これが大脳に知らされる。排便したい、という感じ(便意)が出ても、通常は肛門周囲の肛門括約筋をしめる訓練を、人間が成長するにつれて行っているので、排出に適した場(トイレ)までは便をこらえる事ができる。
便をしてもよい場所で態勢を整えたら、腸の蠕動が大きくなり、直腸の内圧があがり、ここで始めて肛門を緩めると排便がおこる。 この時に、腹筋で便をおし出す動作をして、完全に便を出す手助けをする。
 健康と排泄 
人も含めた動物が生きるためには、エネルギー源である水や食物を補給しなくてはいけない。これらをすべて使ってしまえたらいいところであるが、いらない部分は身体の外に出さなくてはいけない。また、動物の体内活動の際にできた不要な物質は老廃物としてこれも体外に出さなくてはいけない。このための身体の機能が「排泄」である。
代表的な排泄物である「尿」や、「便」は人の身体が健康に働いて生産されるものであり、これらが問題なく作られるには、健康が保たれていなくてはいけない(例:腎不全の患者さんでは尿が上手く作られないので、人工腎臓を使わなくてはいけない)。また、生産された「排泄物」を出す機能も健康に働いていないと上手く出すことができない(例:便秘、排尿困難、尿失禁、便失禁など)
更に、人間は、社会生活をしているので、どこでも排泄をしていいわけではない。一定のルールに従って排泄を行わないと、時には社会生活がうまく送れないことになる(例:機能性尿失禁など)。
<結論>
トイレで普通に排泄をするということは、実はとてもすごいことなんだ
「どうだ、出すべきものをちゃんと出さないと身体に悪いんだ。じっくりトイレにいるときは、せかすもんじゃないぞ」
祖父
「昔は早メシ早グソ武士のならい、と言ったもんだぞ」
「ちょっとちがうんじゃない?」
子供
「それにな、すぐ臭いとか汚いとか言うが、出たばっかりのオシッコはばい菌もいないし、身体の中でも一番きれいな排泄物なんだ」
子供
「うっそー」
「臭いのは大きい方でしょ」
子供
「そうだけど、うんこだってね、健康のバロメータなんだし、美味しく頂いた食べ物を私たちが使わせていただいた残りなんだから、感謝して見送ってあげなくちゃ」
子供
「うんこさん、ばいばーい」
「それになあ、匂いを感じるということは普段はうちのトイレはきちんとそうじがしてあって、きれいだよ、という証拠なんだぞ。もし、いつも臭いとしたら、だれかの体の調子が悪いってことにもなるんだからね」
子供
「ふーん」
子供
「でもあたしのマンガ持って入らないでよー!!」