ママのおはなし(1) お母さんは締めるわよ!財布のひもと骨盤底
母   「締めて―、締めて―、締めて―、チャチャチャ♪」
子供 「(???)」
母   「ゆるめて、ゆるめて、ゆるめて、チャチャチャ♪」
祖母 「あんた、なにやっとんの?何が、チャチャチャなの?」
母   「あーら、おかあさん、主婦は締りのいいのが
     しんじょうでしょー」
祖母 「ま、ほりゃ、ほーだけども。で、何を締めりゃーすの?
     だんなさんの首かい?」
母   「やーだ、物騒な事言わんといて。ま、そりゃ小遣い出す
     財布のひもはしめなかんわね、まず。
     で、今締めとったのは『骨盤底』いうところの筋肉よ。」
祖母 「『骨盤底』?なんなの?そりゃ?」




 解 説 . 
人が人が立って生活をおくるようになり、骨盤という大きな桶のような骨で内臓を受け止めるようになりました。ところが、桶といっても、 その底は頑丈な板ではなくて、弾力のある筋肉で作られています。これが「骨盤底」という部分で、ここを構成する筋肉を「骨盤底筋(群)」と呼びます
男性と女性では、どこが違うでしょうか?

女性の骨盤底筋を下から(足の間から)見てみます。
→穴が3箇所あいています。
(1) 尿道(尿を出すための通り道)
(2) 膣(出産の時には赤ちゃんの頭がどかんと
   通ります。
   月経の時には経血が降りてきます。)
(3) 肛門(便を出すための通り道)

特に女性では、この柔らかい筋肉に三箇所も穴があいているうえに、出産をすれば、そこを大きな頭が時間をかけてゆっくり進んできますから、かなりの筋肉ダメージを受けます。
健康な女性でも尿失禁の頻度が高いのは、この「骨盤底」が傷んでくることがひとつの原因と考えられます。

また、長い間「骨盤底筋群」でおなかの中のたくさんの内臓や、重い脂肪を支えます。だんだん重みに耐えられなくなって、ここの筋肉がたるんでくると、膀胱と尿道がぐらぐらするようになり、尿失禁の原因になることがあります。
骨盤底を足の下から見た図



「たるみ」は「しわ、しみ、しらが」の様に年のせいだから仕方ないとあきらめるなかれ!!

「骨盤底筋群」は横紋筋といって、腕や足の筋肉のように、鍛えれば強くなる事のできる性質の筋肉です。 筋肉トレーニングをすれば強くなり、たるみの状態から、しっかりとした「支え」の状態になります。 ? お母さんが「締めて―、締めて―」といっていたのは、この「骨盤底筋」を締める運動をしていたというわけ。
「どうやってしめたらいいんでしょうか?

(1) この筋肉は、尿道、膣、肛門の周りを取り囲んでいます。そこで、「締める動作」は「おならを我慢する」「硬い便を切るような動作」「おしっこが漏れそうなときに手を使わずに尿道の奥で我慢する」というような動作を思い出してやって見ます。

(2) おなかをわざとひっこめたり、ふくらめたり、というのは間違った運動です。また、太ももを一生懸命閉じても効果はありません。

(3) 「おしりをぎゅ―っと締める」「尿道の奥でおしっこをぐーっと我慢する」という動作ができているか確かめるためには、一番いいのはお風呂などで、膣にきれいに洗った指を入れて指の周りが締まるかを感じるのが一番効果的です。それはちょっと….という人は、おしりのまわりを触るだけでもいいです。おしりがきゅっとつぼんだりゆるんだりが自由にできたら合格です。

(4) ぎゅっと締めたら、そのまま3拍、力をゆるめないで数えてみてください。3つ数えたら緩めます。緩めてまた3つ数えます。また締めます。3拍締めて3拍ゆるめて、これを繰り返します。3拍は、楽勝!!という方は、5拍数えてみてください。ちょっとたいへんですよ。緩めるのも5拍です。これを繰り返すことができるようになったら、段々数を増やします。10拍までいったら上出来です。でも、それ以上に増やさないでくださいね。筋肉が疲れすぎるのはよろしくありません。

(5) この「骨盤底筋群」をぎゅ―っと締める運動を「骨盤底筋体操」といいます。れっきとした、尿失禁の運動療法なんですよ。

(6) 「骨盤底筋体操」をするのは、どんな姿勢でも別にかまいません。寝たまま、座って、立ったままなど。ただし、あまり無理な姿勢や、足腰が痛くなるような姿勢はさけてください。

(7) 目安としては、一度に5分くらい続けては休み、また5分くらい、と細切れにやることから始めてください。一日に合計で20分もできたら、まずは充分です。これでもきちんとやれば、早い人なら1ヶ月で効果が出てきます。うんとがんばる人は、半年やって、ちょっと大目の尿失禁がほとんどなくなる場合もあります。

(8) ただし、運動というのは苦手な人はどうしてもいるものです。もし、どうしても上手にできないみたい、という人は、一度専門家の指導を受けてください。専門に教えてくれるのは、病院の泌尿器科や婦人科です(病院により、指導の内容には差があります。できたら、個別に内診をしながら教えてくれるところが望ましいと考えてください)。

祖母  「年寄りでもやれるんかい?」
母   「おかあさんくらい元気なら大丈夫、大丈夫!
      いつになっても締まりのいいのは主婦の基本ですっ。」
父   「(半ば呆れ顔)….」
母   「あら、お父さん、男の人もひとごとじゃありませんからね。
     うちじゃ、おならくらい構わないけど外に出るときは、
     おしりをきゅっと締めて、気合を入れて出かけてねー。」
父   「おいおい、小遣いまで締め上げないでくれよなー。 」