腹圧性尿失禁

症状

腹圧性尿失禁では、咳・くしゃみをしたり、重いものを持ち上げたり、走ったりした時など、腹圧がかかった時に尿がもれる。女性に多く、男性ではまれである。

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁を合併する場合を、混合型尿失禁といい、両者の症状を示す。
 切迫性尿失禁については、
切迫性尿失禁の項(B)参照

原因

女性では、膀胱や子宮を支える骨盤底筋群のゆるみによる膀胱の下垂や、括約筋不全による膀胱頸部や尿道の弛緩により尿道抵抗が低下して、腹圧が加わった時に膀胱内の圧が上昇して、膀胱収縮を伴わずに尿がもれる。膀胱下垂による腹圧性尿失禁はいわば、「ぐらぐら尿失禁」、括約筋不全による腹圧性尿失禁は「ゆるゆる尿失禁」といえる。

男性では前立腺癌に対する前立腺全摘除術、前立腺や尿道に対する経尿道的手術により医原性に外尿道括約筋が障害されて起こることがある。

正常

ぐらぐら尿失禁:膀胱下垂

ゆるゆる尿失禁

腹圧により膀胱内圧の上昇が起こると、腹圧は同様に尿道にも伝わり尿道の圧も同時に上昇するため尿失禁は起きない

膀胱が下がると腹圧の上昇が尿道に伝わらなくなり、腹圧時に膀胱内圧が尿道内圧を超えるため、尿がもれる

尿道括約筋がゆるんで、
軽度の腹圧で尿がもれる

 

対策

治療法には理学療法、薬物治療、外科的治療があり、多くは治療可能であるが、ADL(日常生活動作)の低下の顕著な例、特に寝たきりの場合や、痴呆が高度な場合は積極的な治療が行われることはまれである。しかし、普通の日常生活が可能で、尿失禁治療に対する意欲や理解力があり、1週間に数回以上の尿失禁がある場合は安易におむつに頼らず、積極的な治療を試みるべきである。