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高齢者における排尿障害の頻度は高く、特に尿失禁については、60歳以上で約600万人の罹患者がいると推計されています。特に高齢者では、その病因として、神経疾患、下部尿路閉塞、尿路感染、加齢による膀胱機能変化など種々のものがあり、また多病因が重複することも少なくありません。最近の排尿障害に対する診断・治療法の進歩や啓蒙により、排尿障害以外はおおよそ健康な方については、本人が希望すれば専門的な検査や治療をうける機会を得ることは容易であり、また良好な治療効果が得られます。他方、種々の病気や、痴呆、ADLの低下などにより一般病院、老人病院、老人ホームに入院・入所していたり、家庭にあって在宅医療・看護を受けている高齢者は多数みえますが、こういった方では、十分な評価を受けないまま、尿失禁や排尿困難に対して安易なおむつ使用や尿道カテーテル留置が行われている状況が少なくありません。平成11年度に愛知県で行った排尿障害実態調査では、おむつなどについては老人施設入所者の51%、訪問看護を受ける在宅者の56%に使用されていますが、専門医による聴き取り調査ではその中30%程度はおむつはずしが可能であろうと推測されています。さらに、おむつ使用の多くは施設入所前、すなわちその多くは一般病院で行われ、病院入院患者の約32%でおむつが使用されていること、また施設入所後のおむつはずしの試みが必ずしも広く行われていないことが示されています。尿道留置カテーテルは老人施設での頻度は1.2%、訪問看護を受ける在宅高齢者では9.7%、一般病院では入院患者の17%と高率です。 |